わたくし、お飾り聖女じゃありません!

友坂 悠

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伝説。

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 ギア・アウラの権能。
 空間を司る彼女の力が発動し、わたくし達の周囲、ナリス様の前までを次元の壁が覆いました。

「な、まさか!」
「貴女、なかなかやるわね!」

 びっくりした顔をしているレムレス様とカナリヤ。

「わたくし、お飾り聖女なんかじゃありませんから! これくらいちゃんとできますのよ!」

 そう啖呵を切って。

「ふふ。でもその程度ではまだまだよ。えい!」

 カナリヤの手から噴き出す漆黒の炎。
 あれじゃぁ部屋ごと燃えちゃう!
 ううん、あの熱量だと王宮ごと灰になっちゃう!

 どうしよう、そう逡巡した時だった。

 ——にゃぁ。禁忌の魔法陣ってそう言ったよね?

 ファフナ?

 ——ならあたしが手を貸してあげる。

 そう言ってわたくしの心のゲートから、ヒョンと飛び出してきたファフナ。
 その真っ白でもふもふな体毛が白銀に輝き、周囲に冷気を撒き散らす。
 まるで雪の妖精のように光り輝くファフナの姿が、次第に人間の少女のように変わっていった。

 白銀に輝く髪に真っ白なキトンを羽織り、その背には白鳥の翼のような羽が四枚、ふわりと宙に漂うようにはばたいて。

「なんと! これは天使か?」
 ナリス様も驚いてそう声をあげた。

「彼女はずっと、わたくし達の一族のレイスの中にいらっしゃった、真の聖女その人ですわ」

 わたくしはそうナリス様に答えて。

「ああ、そうか。なるほど。ではあの伝説は真実だったと、そういうわけか」

 はう。伝説? もしかしてそれって。

「ああ。コレット家のご先祖様の伝説だよ」

 ああ。そうかもしれません。
 わたくしも彼女から全て聞いたわけではないですけれど、こうしてファフナがずっとわたくしと共にあったのも。
 わたくしの前にはお母様の中に居たんだろうという事も。

 禁忌の魔法陣を封じるのが目的だったと聞いていましたもの。


 ♢
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