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婚約破棄、ですか!?
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「この私、レムレス・ド・アルメルセデスの名において、アナスターシア・スタンフォード侯爵令嬢との間に結ばれた婚約を破棄することをここに宣言する!」
その声は、よりにもよってこの年に一度の神事、国家の祭祀のうちでもこの国で最も重要とされる聖緑祭の会場で、諸外国からの特使、大勢の来賓客が見守る中、長官不在の聖女宮を預かるレムレス・ド・アルメルセデス王太子によって発せられた。
ここ、アルメルセデスは神に護られた剣と魔法の国。
その聖都アルメリアの中央に位置する聖女宮広場には、荘厳な祭壇と神楽舞台が設置され。
その祭壇の目の前に立つ王太子に向かって、わたくしは真意を正すように詰め寄った。
「どういうことですか! 殿下!」
いきなりのそんな茶番。はいそうですかと納得するわけにもいかなくて。
「言葉の通りだよアナスターシア。私は君との婚約を破棄、解消することに決めたのだ」
「いえ、でも、わたくしたちの婚約は極めて政治的なものであったはずです。殿下やわたくしの個人的な意見で解消できるものでは無かったはずでは?」
そもそも国王陛下がお許しにならないはず。だって……。
「だからこそだよ。こうして各国からの来賓まで集まっているこの場で宣言してしまえば、さすがの父上も認めざるを得ないだろう?」
うそ! そんな、なんて事を……。
言葉を失ったわたくしはしばらくその場で立ち尽くして。
そんな、だって。
そもそもこの婚約はレムレス様のためにと国王陛下のたっての頼みでおうけしたもの。
彼のことを寵愛するマルガレッタ様のたっての希望だとも伺っておりましたのに。
確かに、愛だの恋だのそんなものは全く無い婚約でした。
わたくしにだって幼い恋の一つくらいはあったけれど、それでも貴族の令嬢に恋愛結婚なんて望むべくもないってことが理解できるくらいの分別はあったから。
自分の恋愛感情は押し殺した上で、今まで良い婚約者であろうと努力をしてきたつもりでしたのに。
「理由を。せめて理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
わなわなと震えながら、なんとかそれだけを口に出し。
「君には、心当たりがない、とでも言いたいのか?」
はい?
「ふん! この私が知らないとでも思っているようだが、君が今まで行ってきた悪行は全て露見しているのだ!」
え?
「それは一体、どういった事でしょうか……?」
「君が自身が高位貴族であることを鼻にかけ、下級貴族の令嬢に対していじめ、嫌がらせを行っていたことだ!」
「何かのお間違いでは? わたくしには全く身に覚えがございませんが……」
いったい全体どういうことでしょう?
殿下の仰っていることが、わたくしにはまったく理解ができなくて。
もし、殿下がわたくしのことが気に入らないだとかそういった理由でこんなことを仰っているのであれば、まだ納得ができました。
だって、この三年の間でさえ、殿下にエスコートはおろか贈り物一つ頂いたこともありませんでしたし、お手紙にしても出すのはわたくしだけでお返事を頂いたこともなかったのですから。
このままではおいおい婚約解消のお話が出てきてもしょうがない。そう思ってもいたのです。
それを陛下や王妃殿下がお認めになるかは別として。
「証拠があるのだ! 証言もある! 君がカナリヤ・ロッテンマイヤー男爵令嬢に行っていた、いじめ、嫌がらせの数々の。そうだ、階段から突き落とそうとしたこともあるとのことだった。未遂に終わったようだが一つ間違えば彼女は大怪我を負う所だったのだぞ」
「そんな、それはいったいどちらで行われたお話ですか? そもそもわたくし、そのカナリヤ様という方を存じておりませんが……」
「シラを切るつもりか!? カナリヤは去年貴族院に転入して来たではないか!?」
「いえ、それでしたら尚更わたくしとは接点がございませんよ? ここ数年はわたくし聖女宮でのお勤めが忙しく、貴族院は休学しておりますし」
まさか、一緒に学院に通っていないことすら認識されていなかったのですか?
三年前聖女に選ばれてからこちら、ほぼほぼこの聖女宮で過ごしてきたわたくし。
お仕事が忙しく、貴族院に通う暇はもちろん、実家の領地アルルカンドに帰省することもままならず。
幸い聖女庁の長官を務めるアウレリア様が良くしてくださり、お母様も度々顔をみせて下さったおかげでそこまで寂しい思いをせずに済んでおりましたけれど。
まあ今はアウレリア様もご懐妊なさって職務をお休みしておりますし、お母様も領地に戻っておりますから少し心もとなく感じていた矢先でしたけれどそれでも。
聖女庁の長官代理をレムレス殿下が引き受けて下さったと聞いた時には、少しは嬉しかったのですよ……。
これで少しは距離を縮めることができるかもしれないと、期待をしたのですけれど……。
「社交の場があるであろう? 令嬢同士、接点がないなどとはあり得ない。先日の王宮でのパーティーでも大勢の令嬢が集まっていたではないか!」
「先日の王宮でのパーティ? ああ、ロムス様のお誕生日の」
「そうだ、兄上の誕生パーティーだ。あの時はこの国の適齢期の令嬢はほぼ全て出席していたと聞いたぞ!」
「レムレス様も参加なさった、ので?」
「ああ、当然だ!」
では……。
当然わかっていると思っていましたけれど……。
あのパーティはロムス様のお相手を探すためのもの。
仮にもレムレス殿下の婚約者であるわたくしが一人で参加などできるわけがないのに。
普段そんな社交にもほとんど参加したことのなかったわたくしですが、あれだけの大きな催しですもの、殿下のお誘いでもあれば参加してもと思っておりましたけれど。
結局そんなお誘いは一切ありませんでしたから、一人寂しくこの聖女宮でお祈りに精を出しておりましたとも。
ええ、それでもしょうがないと、そう思っておりました。
「わたくしは、その会には参加しておりませんでした……」
「なんと!? なぜだ!? どうしてそうももっともらしく嘘をつくのだ!」
「嘘では、ありません……」
流石に悲しくなったわたくしの頬を、涙が一雫流れていきました。
ああ、殿下のお顔も、動揺しているのか先ほどまでの憎しみが混じったような表情から、以前のようなホワンとしたお顔に戻ったような。
恋だの愛だの、そう言ったものは全くなかったお付き合いでしたけど、そうした無垢なお顔をされる殿下には好意を持っていましたのに。
「レムレス様ぁ」
シャらりシャらりとたくさんの宝石を身に纏った女性が、いつの間にか殿下のおそばにきて、その腕にしなだれかかる。
途端に殿下のお顔が緩むのがわかりました。
「あたくし寂しかったですわ。一人にするなんてひどいですぅ」
甘えた声で上目遣いで殿下を覗き見るその少女。
「ああ、カナリヤ。すまなかったね」
ああ。この少女が話題のカナリヤ様?
やっぱり初めてみるお顔です。
「初めまして? ですわよね? カナリヤ様?」
「ひどいですぅアナスターシア様ったらまた意地悪ですかぁ? あたくしのこと知らないふりをなさるのね」
「え? そんな」
「やはりお前は性悪な女だったのだな! 一瞬絆されかけたがもう騙されないぞ。ええい、やはりお前のような女には聖女の職を任せておくこともできぬ! 聖女庁長官代理の権限でもって、今すぐアナスターシア、お前の聖女の任を解く。さっさと荷物をまとめて帰るといい!」
そんな! 殿下!
「お待ちくださいレムレス殿下! 今は聖緑祭の最中、明日は神楽舞台での神事、聖剣の舞の本番です! わたくしがいなければ……」
「ふん! お前のようなお飾り聖女の代わりなどいくらでもいるわ! そうだ、ここにいるカナリヤを聖女に任命し、明日の神楽を任せるとしよう」
「そんな……」
「うるさい! もう決まったことだ! お前は解任だ! 今日この時からここでは部外者となる! さっさと立ち去れ!」
殿下の周囲に黒いもやが立ち昇っているような気がして。
その瘴気ににあてられるように気分が悪くなってしまったわたくし。
悲しくて、情けなくて。
その場ではもう何も考えられなくなってしまって。
それ以上反論をすることもできずにとぼとぼと聖女宮の自室に戻りました。
♢ ♢ ♢
その声は、よりにもよってこの年に一度の神事、国家の祭祀のうちでもこの国で最も重要とされる聖緑祭の会場で、諸外国からの特使、大勢の来賓客が見守る中、長官不在の聖女宮を預かるレムレス・ド・アルメルセデス王太子によって発せられた。
ここ、アルメルセデスは神に護られた剣と魔法の国。
その聖都アルメリアの中央に位置する聖女宮広場には、荘厳な祭壇と神楽舞台が設置され。
その祭壇の目の前に立つ王太子に向かって、わたくしは真意を正すように詰め寄った。
「どういうことですか! 殿下!」
いきなりのそんな茶番。はいそうですかと納得するわけにもいかなくて。
「言葉の通りだよアナスターシア。私は君との婚約を破棄、解消することに決めたのだ」
「いえ、でも、わたくしたちの婚約は極めて政治的なものであったはずです。殿下やわたくしの個人的な意見で解消できるものでは無かったはずでは?」
そもそも国王陛下がお許しにならないはず。だって……。
「だからこそだよ。こうして各国からの来賓まで集まっているこの場で宣言してしまえば、さすがの父上も認めざるを得ないだろう?」
うそ! そんな、なんて事を……。
言葉を失ったわたくしはしばらくその場で立ち尽くして。
そんな、だって。
そもそもこの婚約はレムレス様のためにと国王陛下のたっての頼みでおうけしたもの。
彼のことを寵愛するマルガレッタ様のたっての希望だとも伺っておりましたのに。
確かに、愛だの恋だのそんなものは全く無い婚約でした。
わたくしにだって幼い恋の一つくらいはあったけれど、それでも貴族の令嬢に恋愛結婚なんて望むべくもないってことが理解できるくらいの分別はあったから。
自分の恋愛感情は押し殺した上で、今まで良い婚約者であろうと努力をしてきたつもりでしたのに。
「理由を。せめて理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
わなわなと震えながら、なんとかそれだけを口に出し。
「君には、心当たりがない、とでも言いたいのか?」
はい?
「ふん! この私が知らないとでも思っているようだが、君が今まで行ってきた悪行は全て露見しているのだ!」
え?
「それは一体、どういった事でしょうか……?」
「君が自身が高位貴族であることを鼻にかけ、下級貴族の令嬢に対していじめ、嫌がらせを行っていたことだ!」
「何かのお間違いでは? わたくしには全く身に覚えがございませんが……」
いったい全体どういうことでしょう?
殿下の仰っていることが、わたくしにはまったく理解ができなくて。
もし、殿下がわたくしのことが気に入らないだとかそういった理由でこんなことを仰っているのであれば、まだ納得ができました。
だって、この三年の間でさえ、殿下にエスコートはおろか贈り物一つ頂いたこともありませんでしたし、お手紙にしても出すのはわたくしだけでお返事を頂いたこともなかったのですから。
このままではおいおい婚約解消のお話が出てきてもしょうがない。そう思ってもいたのです。
それを陛下や王妃殿下がお認めになるかは別として。
「証拠があるのだ! 証言もある! 君がカナリヤ・ロッテンマイヤー男爵令嬢に行っていた、いじめ、嫌がらせの数々の。そうだ、階段から突き落とそうとしたこともあるとのことだった。未遂に終わったようだが一つ間違えば彼女は大怪我を負う所だったのだぞ」
「そんな、それはいったいどちらで行われたお話ですか? そもそもわたくし、そのカナリヤ様という方を存じておりませんが……」
「シラを切るつもりか!? カナリヤは去年貴族院に転入して来たではないか!?」
「いえ、それでしたら尚更わたくしとは接点がございませんよ? ここ数年はわたくし聖女宮でのお勤めが忙しく、貴族院は休学しておりますし」
まさか、一緒に学院に通っていないことすら認識されていなかったのですか?
三年前聖女に選ばれてからこちら、ほぼほぼこの聖女宮で過ごしてきたわたくし。
お仕事が忙しく、貴族院に通う暇はもちろん、実家の領地アルルカンドに帰省することもままならず。
幸い聖女庁の長官を務めるアウレリア様が良くしてくださり、お母様も度々顔をみせて下さったおかげでそこまで寂しい思いをせずに済んでおりましたけれど。
まあ今はアウレリア様もご懐妊なさって職務をお休みしておりますし、お母様も領地に戻っておりますから少し心もとなく感じていた矢先でしたけれどそれでも。
聖女庁の長官代理をレムレス殿下が引き受けて下さったと聞いた時には、少しは嬉しかったのですよ……。
これで少しは距離を縮めることができるかもしれないと、期待をしたのですけれど……。
「社交の場があるであろう? 令嬢同士、接点がないなどとはあり得ない。先日の王宮でのパーティーでも大勢の令嬢が集まっていたではないか!」
「先日の王宮でのパーティ? ああ、ロムス様のお誕生日の」
「そうだ、兄上の誕生パーティーだ。あの時はこの国の適齢期の令嬢はほぼ全て出席していたと聞いたぞ!」
「レムレス様も参加なさった、ので?」
「ああ、当然だ!」
では……。
当然わかっていると思っていましたけれど……。
あのパーティはロムス様のお相手を探すためのもの。
仮にもレムレス殿下の婚約者であるわたくしが一人で参加などできるわけがないのに。
普段そんな社交にもほとんど参加したことのなかったわたくしですが、あれだけの大きな催しですもの、殿下のお誘いでもあれば参加してもと思っておりましたけれど。
結局そんなお誘いは一切ありませんでしたから、一人寂しくこの聖女宮でお祈りに精を出しておりましたとも。
ええ、それでもしょうがないと、そう思っておりました。
「わたくしは、その会には参加しておりませんでした……」
「なんと!? なぜだ!? どうしてそうももっともらしく嘘をつくのだ!」
「嘘では、ありません……」
流石に悲しくなったわたくしの頬を、涙が一雫流れていきました。
ああ、殿下のお顔も、動揺しているのか先ほどまでの憎しみが混じったような表情から、以前のようなホワンとしたお顔に戻ったような。
恋だの愛だの、そう言ったものは全くなかったお付き合いでしたけど、そうした無垢なお顔をされる殿下には好意を持っていましたのに。
「レムレス様ぁ」
シャらりシャらりとたくさんの宝石を身に纏った女性が、いつの間にか殿下のおそばにきて、その腕にしなだれかかる。
途端に殿下のお顔が緩むのがわかりました。
「あたくし寂しかったですわ。一人にするなんてひどいですぅ」
甘えた声で上目遣いで殿下を覗き見るその少女。
「ああ、カナリヤ。すまなかったね」
ああ。この少女が話題のカナリヤ様?
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「初めまして? ですわよね? カナリヤ様?」
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「え? そんな」
「やはりお前は性悪な女だったのだな! 一瞬絆されかけたがもう騙されないぞ。ええい、やはりお前のような女には聖女の職を任せておくこともできぬ! 聖女庁長官代理の権限でもって、今すぐアナスターシア、お前の聖女の任を解く。さっさと荷物をまとめて帰るといい!」
そんな! 殿下!
「お待ちくださいレムレス殿下! 今は聖緑祭の最中、明日は神楽舞台での神事、聖剣の舞の本番です! わたくしがいなければ……」
「ふん! お前のようなお飾り聖女の代わりなどいくらでもいるわ! そうだ、ここにいるカナリヤを聖女に任命し、明日の神楽を任せるとしよう」
「そんな……」
「うるさい! もう決まったことだ! お前は解任だ! 今日この時からここでは部外者となる! さっさと立ち去れ!」
殿下の周囲に黒いもやが立ち昇っているような気がして。
その瘴気ににあてられるように気分が悪くなってしまったわたくし。
悲しくて、情けなくて。
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