18 / 46
【遊戯】
しおりを挟む
「ふむ。アリシアの妹とな」
「はい。妹のマリサでございます。おみしりおきくださいませ」
「マリサです。よろしくおねがいします」
薔薇園にはアリシアを待ち構えるようにルイスがいた。
今日、ここに来ることは前もってレティシア様には伝えてあったけれど、それを聞いたのだろうか。そう不思議に思いつつもアリシアは、これ幸いにとマリサをルイスに紹介する。
なんにしても、今の二人がストーリー通り真実の愛とやらで愛し合ってくれればいい。
そう考えて。
それに、この二人が仲良くなってくれれば、必要以上に自分が関わらなくても済む。そんな思惑もあった。
いくら演技だとしても、いくら今の姿が前回のあの時の彼らと結び付かなかったとしても、それでもあの時の彼らを許したわけでは無かったから。
アリシアはそんな自分の中にある感情に押しつぶされてしまいそうで、怖かった。
だから、必要以上には関わりたくない、そんな気持ちでいたのにも関わらず、マリサは慕ってくるしルイスだって何を考えているのかはわからないけれど自分がここにくる時にはほぼほぼ先回りして待っていたりする。
(かといって、引きこもってしまったら前回と同じ、難しいわ)
「わたくしは、アリシア・ブランドーですのよ」
と、そう叫びたくなるのを抑え小声で呟く。
「あなたがストレスを溜めちゃうのはあまり良いことじゃないわね。うーん。ちょっと目を瞑ってみて」
わたくしの心の叫びを感じ取ったのか、ミーナが耳元でそう囁いた。
言われる通りに目を瞑るアリシア。
(ミーナだけだから。わたくしが心を許せるのは……)
「それもどうかと思うんだけどね」
心を読んだかのように、ミーナが囁く。
「さあ。目を開けていいわ」
ミーナのその声に、ゆっくりと瞼を開く。
そこには。
子供同士で遊戯にいそしむルイス、マリサ、そしてアリシア自身の背中が見える。
「え? どういうこと!?」
アリシアの意識は、子供らを俯瞰で眺められる場所にあった。
隣にはミーナ。しかし二人とも、実体ではない。
うっすらと向こうが透けて見える。それも、アリシアの身長はミーナと同じくらいになっていた。
「ちょっとあたしの魔法であなたの意識を分離させたのよ。あそこにいるあなたは今のあなたとしての記憶のない、純粋なアリシア」
「そんな、どうして」
「きっとね、あの子達と子供同士の遊びなんて今のアリシアにはストレスにしかならないと思って。ちょっとだけ助けてあげる」
そう言って笑みをこぼすミーナ。
「もう少しだけ、あなたの体があなたの意識に合うまでの間、こうして時々助けてあげるわ。だから、あなたはそんなに悩まないで良いのよ。あの子たちと一緒にいることが今のあなたにはストレスだろうから、逃げたくなったらあたしがこうして逃してあげるから」
「はい。妹のマリサでございます。おみしりおきくださいませ」
「マリサです。よろしくおねがいします」
薔薇園にはアリシアを待ち構えるようにルイスがいた。
今日、ここに来ることは前もってレティシア様には伝えてあったけれど、それを聞いたのだろうか。そう不思議に思いつつもアリシアは、これ幸いにとマリサをルイスに紹介する。
なんにしても、今の二人がストーリー通り真実の愛とやらで愛し合ってくれればいい。
そう考えて。
それに、この二人が仲良くなってくれれば、必要以上に自分が関わらなくても済む。そんな思惑もあった。
いくら演技だとしても、いくら今の姿が前回のあの時の彼らと結び付かなかったとしても、それでもあの時の彼らを許したわけでは無かったから。
アリシアはそんな自分の中にある感情に押しつぶされてしまいそうで、怖かった。
だから、必要以上には関わりたくない、そんな気持ちでいたのにも関わらず、マリサは慕ってくるしルイスだって何を考えているのかはわからないけれど自分がここにくる時にはほぼほぼ先回りして待っていたりする。
(かといって、引きこもってしまったら前回と同じ、難しいわ)
「わたくしは、アリシア・ブランドーですのよ」
と、そう叫びたくなるのを抑え小声で呟く。
「あなたがストレスを溜めちゃうのはあまり良いことじゃないわね。うーん。ちょっと目を瞑ってみて」
わたくしの心の叫びを感じ取ったのか、ミーナが耳元でそう囁いた。
言われる通りに目を瞑るアリシア。
(ミーナだけだから。わたくしが心を許せるのは……)
「それもどうかと思うんだけどね」
心を読んだかのように、ミーナが囁く。
「さあ。目を開けていいわ」
ミーナのその声に、ゆっくりと瞼を開く。
そこには。
子供同士で遊戯にいそしむルイス、マリサ、そしてアリシア自身の背中が見える。
「え? どういうこと!?」
アリシアの意識は、子供らを俯瞰で眺められる場所にあった。
隣にはミーナ。しかし二人とも、実体ではない。
うっすらと向こうが透けて見える。それも、アリシアの身長はミーナと同じくらいになっていた。
「ちょっとあたしの魔法であなたの意識を分離させたのよ。あそこにいるあなたは今のあなたとしての記憶のない、純粋なアリシア」
「そんな、どうして」
「きっとね、あの子達と子供同士の遊びなんて今のアリシアにはストレスにしかならないと思って。ちょっとだけ助けてあげる」
そう言って笑みをこぼすミーナ。
「もう少しだけ、あなたの体があなたの意識に合うまでの間、こうして時々助けてあげるわ。だから、あなたはそんなに悩まないで良いのよ。あの子たちと一緒にいることが今のあなたにはストレスだろうから、逃げたくなったらあたしがこうして逃してあげるから」
92
あなたにおすすめの小説
【完結】黒の花嫁/白の花嫁
あまぞらりゅう
恋愛
秋葉は「千年に一人」の霊力を持つ少女で、幼い頃に龍神――白龍の花嫁として選ばれていた。
だが、双子の妹の春菜の命を救うために、その霊力を代償として失ってしまう。
しかも、秋葉の力は全て春菜へと移り、花嫁の座まで奪われてしまった。
それ以来、家族から「無能」と蔑まれながらも、秋葉は失われた力を取り戻すために静かに鍛錬を続けていた。
そして五年後、白龍と春菜の婚礼の日。
秋葉はついに霊力が戻らず、一縷の望みも消えてしまった。
絶望の淵に立つ彼女の前に、ひとりの青年が現れる。
「余りもの同士、仲良くやろうや」
彼もまた、龍神――黒龍だった。
★ザマァは軽めです!
★後半にバトル描写が若干あります!
★他サイト様にも投稿しています!
家族から邪魔者扱いされた私が契約婚した宰相閣下、実は完璧すぎるスパダリでした。仕事も家事も甘やかしも全部こなしてきます
さら
恋愛
家族から「邪魔者」扱いされ、行き場を失った伯爵令嬢レイナ。
望まぬ結婚から逃げ出したはずの彼女が出会ったのは――冷徹無比と恐れられる宰相閣下アルベルト。
「契約でいい。君を妻として迎える」
そう告げられ始まった仮初めの結婚生活。
けれど、彼は噂とはまるで違っていた。
政務を完璧にこなし、家事も器用に手伝い、そして――妻をとことん甘やかす完璧なスパダリだったのだ。
「君はもう“邪魔者”ではない。私の誇りだ」
契約から始まった関係は、やがて真実の絆へ。
陰謀や噂に立ち向かいながら、互いを支え合う二人は、次第に心から惹かれ合っていく。
これは、冷徹宰相×追放令嬢の“契約婚”からはじまる、甘々すぎる愛の物語。
指輪に誓う未来は――永遠の「夫婦」。
【完結】小公爵様の裏の顔をわたしだけが知っている
おのまとぺ
恋愛
公爵令息ルシアン・ド・ラ・パウルはいつだって王国の令嬢たちの噂の的。見目麗しさもさることながら、その立ち居振る舞いの上品さ、物腰の穏やかさに女たちは熱い眼差しを向ける。
しかし、彼の裏の顔を知る者は居ない。
男爵家の次女マリベルを除いて。
◇素直になれない男女のすったもんだ
◇腐った令嬢が登場したりします
◇50話完結予定
2025.2.14
タイトルを変更しました。(完結済みなのにすみません、ずっとモヤモヤしていたので……!)
【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない
ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。
公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。
旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。
そんな私は旦那様に感謝しています。
無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。
そんな二人の日常を書いてみました。
お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m
無事完結しました!
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
追放聖女35歳、拾われ王妃になりました
真曽木トウル
恋愛
王女ルイーズは、両親と王太子だった兄を亡くした20歳から15年間、祖国を“聖女”として統治した。
自分は結婚も即位もすることなく、愛する兄の娘が女王として即位するまで国を守るために……。
ところが兄の娘メアリーと宰相たちの裏切りに遭い、自分が追放されることになってしまう。
とりあえず亡き母の母国に身を寄せようと考えたルイーズだったが、なぜか大学の学友だった他国の王ウィルフレッドが「うちに来い」と迎えに来る。
彼はルイーズが15年前に求婚を断った相手。
聖職者が必要なのかと思いきや、なぜかもう一回求婚されて??
大人なようで素直じゃない2人の両片想い婚。
●他作品とは特に世界観のつながりはありません。
●『小説家になろう』に先行して掲載しております。
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる