あなたの恋、応援します!! 〜気がついたら悪役令嬢だったので、破滅回避のために全力で王太子の真実の恋を応援することにしました!!【嘘】

友坂 悠

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【嫉妬】

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 事前に聞かされた父親の再婚相手の名前は、マリアンヌといった。
 市井の出で家名はないため、一時的にロンウォール侯爵家の養女となってから婚姻の手続きをするということだった。
 その手続きのため、アリシアへの顔見せは明日の晩餐でと決まっていたけれど、実際の婚姻までは一ヶ月以上を要するという。

「明日はマリサも連れてくるのかしら?」

 アリシアは、前回のこのあたりの経緯がどうだったのか、よく覚えていなかった。
 泣いて引きこもってるうちにいつのまにか義母と妹が屋敷に居たという印象しかない。

「マリサはあなたの一つ年下なのよね? だったらまだ四つの子供ね」

「ええ。まだ子供」

「どうするの? もしきたらちゃんと受け入れてあげる予定なの?」

「ええ、どうするのが正解なのか、まだ迷ってるのよ」

「そうね。毅然とした態度でいる必要はあるけれど、虐めるのは今のアリシアには似合わないものね」

「似合わない、ですよね。悪役令嬢だったアリシアはどうしてあんなに妹に冷たかったのかしら」

「まず、自分の血筋に矜持がある分、半分とはいえ血のつながった妹とはいえ、彼女と自分は違うのだってプライドがあったのは間違いないわね」

「そうね。それはわかるのよ。でもミーナ、それだけであそこまで虐める気持ちになるのかしら」

「それはもちろん、嫉妬でしょう。両親に、それも父親に愛されている妹に対しての嫉妬。人間っておかしなものね。自分より立場が下だと思っている存在が自分より幸せなのが許せない、とか、そういう人間、多いもの」

「嫉妬、していたの?」

「そうよね。お話の中ではアリシアの胸中は語られなかったのよね? だから想像でしかないけれど、逆に、そんな嫉妬の感情が自分の中にあることが許せなかったのもあるんじゃないかしら? アリサは自分より立場が下のはずなのに。だけれどアリサの方が周囲から愛され幸せに見える。それに嫉妬してしまう自分と、逆にそんな嫉妬心があるということ自体がプライドを傷付け、そのことを直視できずに許せない」

 ミーナはアリシアの前で両手を頭の横にひろげて、オーバーに頭を振ってみせる。

「バカよね、ほんと馬鹿ね、悪役令嬢アリシアって」

 吐き捨てるようにそういうミーナに、アリシアの胸はズクンと痛む。

(嫉妬、かあ。嫉妬ならたぶんわたくしもしていたわね……)
 愛されない自分とくらべ、愛情を一身にあつめ成長していく妹を見るのは辛かった。
 そんな気持ちを持つ自分も嫌いだったから、よけいに自分にプライドを持てず、心を押し殺す方向に向かってしまった。
 そんな過去の自分は、やっぱりあんまり好きじゃなかった。
 だから……。

「そうね。今度の人生はそんな嫉妬は辞めたいわ」

「そうよね。今のアリシアには、そんな嫉妬は似合わないわね」

 こちらをみつめるミーナの笑みが、嬉しかった。
 そばに居てくれてよかった。そう思うとアリシアの顔にも笑みが溢れる。

「ありがとう、ミーナ」

「あ、そうだわアリシア、あなた、ルイスとマリサがストーリー通り恋愛して欲しいって言ってたわよね」

「ええ。あとあとを考えてもその方が良いと思うもの」

「なら、演技でも良いから、思いっきり二人の恋を応援するのはどうかしら? 当面の目標をそこに置くの」
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