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領地で。

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 領地に到着した俺は早速家臣の何人かを別途呼び出し話を聞いたが、特に何も変な所は出てこなかった。あくまでみなそれぞれせいいっぱい、去年と同じように働いていたというばかり。

「ですから。たしかに報告書をまとめましたのはわたくしですが、それもただただ集まってきた数字をまとめただけのもの。そこには一切の改竄はございませんが」

「では、何故今年の収支はマイナスなのだ? みな真面目に去年通りに働いたのだろう?」

「ですから、何度も言いますように私は上がってきた数字をまとめただけにございます。その結果収支がマイナスであったというだけの事かと」

「うーむ。らちがあかん。では何故去年と違い今年の収支は赤字なのだ!?」

「ですから。それを私に聞かれてもお答えできかねます。そもそも報告は毎月まとめてしております。先代の頃はその都度予算の修正や業務の指示があったものですが」

「なに? 俺の所為だと言いたいのか?」

「恐れ多いことを。そうは申しませんが、私どもは指示なく業務内容を変更するわけにもいきませんし……」

 筆頭家令のジェファーソンすらこのあんばいで、もう俺にはどうして良いかわからなくなっていた。

「ねえ。こんなふうに一人一人聞いているからよけいにわからないのかもよ? 関係者全員集めて彼らに意見を出させてみたら?」

「ベローニカ。しかし……」

 悪意があるものが隠れているかもしれないと疑い、まず一人一人から事情を聞く事にしたわけだったけれど……。確かにこのままではらちがあかない。

「わたくしにはあなたが何を悩んでいるのかわからないけど、そもそもそんなに気にしなきゃいけない事なの?」

「当たり前です! 収支が赤字であるというのはこの侯爵家の存続に関わる一大事ではないですか!!」

「そうなのねー。まあ、良いわ。明日にでも全員集めて会議をしましょう。それで良いわねジェファーソン?」

「ええ、奥様。若旦那さまにも我々の現状を全て知って頂いた方がよろしいかと思いますし」

「まあ、そうだな。俺が知らない事がないように、しなくては」

「じゃぁ、そうねえ。明日は昼食会も兼ねての会合にしましょう。おなかが空いてはいけませんし、美味しいものでもみんなで食べればきっといいアイデアも浮かびますわ」

「ベローニカ!? 遊びじゃないんですよ?」

「まあいいじゃない。きっとね、あなたはカリカリしすぎで物事が見えていないのよ。少し頭を冷やした方がいいわ」

「っく。まあ、いいです。では食事を先に摂ってから本題に入る事にしましょうか」

「ふふ。じゃぁきまりね。ジェファーソン、準備と告知、よろしくね」

「了解いたしました奥様。それでは私はこれで」

 ジェファーソンは軽く礼をして部屋を出ていった。

 悔しかった。
 なさけなくて腹が立って。
 自分に。
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