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清浄な光。

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「お嬢様!」

「フィリア。これをあなたにあげる。たっぷりとマナを込めてあるからもうしばらくは大丈夫だから」

「え? お嬢様はどうされるのですか!?」

「ごめんねフィリア。わたくしはあのトマスさんを止めてくる。だからフィリアはこれを持って、ここにいる皆さんを守ってあげて」

「そんな! 危険です!!」 

「たぶんね、わたくしにならできるはずだから。できることはやらないと。トマスさんを鎮めて浄化してあげなきゃ。そうじゃなかったら彼も騎士団に討伐されちゃうわ」

 フィリアの手をぎゅっと握って、その手のひらにさっきまで持っていた風のアウラのお守りを託す。


 危険ですと言いながら泣きだしてしまったフィリアに、ごめんねと囁いて。
 そのまま背を向けて魔人トマスに向き直った。

 彼とわたくしたちの間には風の結界があって、こちらに近づけないでいる分怒り狂ったように周囲の物にあたりちらかしている魔人。
 このままじゃお店がボロボロになっちゃう。
 彼もそんなことは望んでいなかったろうに。

 彼の、ブラウド商会に対する想いがよけいに逆に働いて、今の魔人化が起こったのだとすれば、それは悲しいことだから。
 なんとかしてあげたい。
 そんな気持ちを抑えることができなかった。

 怖いとか、自分には無理だとか、そんなこと、もう考えている余裕はわたくしにはなかった。

 右手に浄化のお守り。左手に防御のお守りを握りしめる。

 防御のお守りは以前のラインハルト様の時のような自動発動の物ではないけど、それでも受けた攻撃に対して同等の威力をお返しできる、そんな盾を空中に顕現させるもの。マギア・アウラクリムゾンという名の魔法具。
 攻撃に対して盾で防がなきゃいけない分、ちょっと大変だ。
 浄化のお守りは、マギア・キュアピュリフィケーション。もともとは魔に染まった空間を浄化するお守り。
 でも。そこに込められている魔法自体はその昔魔獣をも浄化したという伝説のコード。魔法陣だから。

 その二つのお守りにも思いっきりマナを込める。
 人より多い魔力。
 人より高い魔法の適性。
 魔法の訓練とかはしたことがないけれど、わたくしのこの白銀の髪色は大昔のご先祖様、聖女と呼ばれた方から受け継いだものだから。

 彼に、トマスに少しでもまだ人としての心のかけらが残っていたら、これでなんとかなるはず。
 完全に魔と化していたら、全て浄化されてしまうかも、だけれど。

 左腕の周囲に紅く瞬く盾が浮かび上がる。
 空中に浮くそれを頼りに風の結界から一歩外に踏み出した。

 こちらに気がつき飛びかかるトマス。
 それを盾で受けると同時に浄化の力を解放した。白銀の清浄な光が周囲一面に輝いた。
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