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荒れ果てた町。
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フィリアと一緒に馬車に乗って下町を目指す。
下町が治安が悪いと言ってもそんなに頻繁に事件がおきているわけでもない。ここ最近は知らないけど、以前はそんなに危険を感じたことは無かった。
それでも、やっぱりお金持ちそうろうの女二人だと襲われる危険もあるなぁと、今日はたっぷりお守りを持ってきている。
ラウダ工房には朝一番で手紙を出してある。今日の昼からお伺いしますって。
返事をもらう前に出てきちゃったけど、しょうがない。
工房にはちゃんと人がいるだろうし、お仕事の邪魔をしちゃったら悪いけど今日を逃したらもう簡単に抜け出せないかもしれないし。
「この辺り、でしたよね」
馬車の外を見ながらフィリアが自信なさげにそう言った。
うん。多分この辺り、だけど。
周囲の景色が随分と変わってしまっている。
なんだか、荒れ果てているようにも見える。
何かあったんだろうか。壊れたおうち、それも最近壊れたのだろうおうちがそのまま放置されていたりして、ちょっと怖い。
それでも。
大橋の袂にあったラウダ工房の看板を見つけてホッとする。
辻馬車の御者さんにあそこにつけてとお願いして、工房の入り口前に馬車を停めて降りた。
活気、は無かった。
以前はもっと……。
「すみません、アリリウス商会の者です。どなたかおみえになりませんか?」
扉は簡単に開いた。フィリアが前に出て、中にそう声をかけてくれた、けど、反応がない。
「お留守、だったのでしょうか?」
「そうね。困ったわね」
中はさっきまで人がいたんじゃないかっていう感じの気配。
お昼に食べようとしていたらしいお弁当や、飲み物なんかもそのままテーブルにのっている。
何か異様な事が起こっている?
それが不気味で。
「さっきまで人がいらした気配はあります。どうしましょう」
待ちますか?
そう聞くフィリア。
でも。
「なんだか嫌な予感がするわ。今日はもう帰りましょう」
そう、馬車に戻ろうとした時だった。
「お嬢ちゃんたちどうしたんだ? 何か用事だったか? ここにはさっき避難勧告が出たんだ、危険だから離れた方がいい」
え?
若い男の人、工房の職人さんの誰か? 用事で戻ってきたのかそんな男性が入口にいた。
帰ろうとしたわたくしたちにそう声をかけてくれた、のだったけど。
「何かあったのですか? わたくしたちはアリリウス商会の者です。今日お訪ねする旨のお手紙も出してありましたけれど」
「ああ。お嬢ちゃんたちが? 俺はラウダの息子、ラウールだ。親父が死んで後を継いだ。だが……。そうかお前さんたちがアリリウス商会の……」
「ああ、ラウダさまはお亡くなりになって……そうなのですね……」
「大慌てで避難先に行っても食い物もねえ。まだいいかと思って弁当を取りにきたんだ。とりあえず話は避難先で聞く。お前さんたちもついて来てくれ」
いろいろと状況も聞きたかった。
肝心のお仕事のお話もしたい。
わたくしたちはそのままラウールさんの後をついて行くことにした。
馬車にも一緒についてきてくれるようお願いしたけど、それは断られた。
御者さん、避難勧告が出ているような場所に長居はできないと、そのまま逃げ出して行ってしまった。
下町が治安が悪いと言ってもそんなに頻繁に事件がおきているわけでもない。ここ最近は知らないけど、以前はそんなに危険を感じたことは無かった。
それでも、やっぱりお金持ちそうろうの女二人だと襲われる危険もあるなぁと、今日はたっぷりお守りを持ってきている。
ラウダ工房には朝一番で手紙を出してある。今日の昼からお伺いしますって。
返事をもらう前に出てきちゃったけど、しょうがない。
工房にはちゃんと人がいるだろうし、お仕事の邪魔をしちゃったら悪いけど今日を逃したらもう簡単に抜け出せないかもしれないし。
「この辺り、でしたよね」
馬車の外を見ながらフィリアが自信なさげにそう言った。
うん。多分この辺り、だけど。
周囲の景色が随分と変わってしまっている。
なんだか、荒れ果てているようにも見える。
何かあったんだろうか。壊れたおうち、それも最近壊れたのだろうおうちがそのまま放置されていたりして、ちょっと怖い。
それでも。
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辻馬車の御者さんにあそこにつけてとお願いして、工房の入り口前に馬車を停めて降りた。
活気、は無かった。
以前はもっと……。
「すみません、アリリウス商会の者です。どなたかおみえになりませんか?」
扉は簡単に開いた。フィリアが前に出て、中にそう声をかけてくれた、けど、反応がない。
「お留守、だったのでしょうか?」
「そうね。困ったわね」
中はさっきまで人がいたんじゃないかっていう感じの気配。
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何か異様な事が起こっている?
それが不気味で。
「さっきまで人がいらした気配はあります。どうしましょう」
待ちますか?
そう聞くフィリア。
でも。
「なんだか嫌な予感がするわ。今日はもう帰りましょう」
そう、馬車に戻ろうとした時だった。
「お嬢ちゃんたちどうしたんだ? 何か用事だったか? ここにはさっき避難勧告が出たんだ、危険だから離れた方がいい」
え?
若い男の人、工房の職人さんの誰か? 用事で戻ってきたのかそんな男性が入口にいた。
帰ろうとしたわたくしたちにそう声をかけてくれた、のだったけど。
「何かあったのですか? わたくしたちはアリリウス商会の者です。今日お訪ねする旨のお手紙も出してありましたけれど」
「ああ。お嬢ちゃんたちが? 俺はラウダの息子、ラウールだ。親父が死んで後を継いだ。だが……。そうかお前さんたちがアリリウス商会の……」
「ああ、ラウダさまはお亡くなりになって……そうなのですね……」
「大慌てで避難先に行っても食い物もねえ。まだいいかと思って弁当を取りにきたんだ。とりあえず話は避難先で聞く。お前さんたちもついて来てくれ」
いろいろと状況も聞きたかった。
肝心のお仕事のお話もしたい。
わたくしたちはそのままラウールさんの後をついて行くことにした。
馬車にも一緒についてきてくれるようお願いしたけど、それは断られた。
御者さん、避難勧告が出ているような場所に長居はできないと、そのまま逃げ出して行ってしまった。
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