31 / 66
ブランド。
しおりを挟む
売りに出ていた2ブランドは一度別の知り合いのグラブル商会という所にお願いして購入してもらった。ブラウド様の弟子? に当たる平民の商人さんで、子供の頃のわたくしの先生をしてくれた方。いろいろお世話になったおじ様だ。
「アリーシア嬢ちゃんの頼みじゃ断れないな。がはは」っておっしゃってくれた。
そんなわりと豪快な方。
ここのところの業績の悪化もあって、割と安めに買い叩いてくれたらしい。
「俺のところでは持て余すからな。っていうか嬢ちゃんが離縁されたって聞いたときゃぁ俺の所に来てくれればなぁと思ったものだったが。まあでもお貴族様のお嬢様では無理だなって諦めてたんだ。また商売をする気になってくれたことはそれだけでも嬉しいよ」
買い叩いたなら自分で経営するっていう手もあっただろうに、快くわたくしたちに譲ってくれたグラブルさん。
ラインハルト様はそういったことには興味がないだろうからそこに支配人としてセバスが就いてても、ただ内情を知るものとして、経験者として雇用されたのだろうくらいにしか思わないかもだ。
ただ、わたくしにしてもセバスに経営手腕があるとは思っていない。
ブラウド様がお亡くなりになった後も、この一年の間でも、彼に経営手腕があるのならそこまで経営が悪化する事もなかっただろう。
少なくともちゃんとした経営判断ができて任されるだけの器があれば、トランジッタ侯爵様だったらセバスにすべてを丸投げしていただろうから。
お義父さまは、そういった商売にまったく関心がない方だった。
なんなら、商会を全部売り払ってもいい、それくらいに邪魔に思っているようだったもの。
たぶんうちのお祖父様からの申し出がなかったら、わたくしをブラウド商会の責任者にもしなかっただろう。
結婚式で初めておはなしした時も、「せっかく嫁いで来てくれた君に商売だなんて、本当は携わらせたくないのだけれどね」って、暗にお祖父様を非難するような物言いで。
ああ、この方は貴族が商売をすることすら嫌ってらっしゃるのだ。と、そんな感じも受けたものだった。
ブラウド様のことをお義父様がどうお考えだったのかはわからない。
ただ、商会に対して愛着もなければ、その商会の収入でトランジッタ家が生活しているって意識もないみたい。
まあ、普通の貴族は領地の経営領地の収入が全てだし、投資ならともかく自前で商会を経営していらっしゃるって話はあまり聞かない。
お義父さまも最近はずっと領地に行ったままだった。
あれはブラウド商会の収入ではなく領地経営(結局は現地の執事に実務はすべて任せているにしても)で生きるのが貴族だっていうプライドの現れだったのかもしれないな。って、そうも思えた。
住まいを整えながら早速すべての帳票に目を通す。
やっぱり……。
仕入れと売値のバランスがめちゃくちゃだ。
損益分岐点も完全に下回っている。
一番いけないのは不良在庫が増えすぎなところ。
バイヤー側はわたくしが探してきた仕入れラインを維持しようと無理をしてでも購入を続け、現場の商店側は利益を出そうと市場価格よりも高い値付けを維持し続けていた。
そのせいで本当だったらもっと十分人気になっただろうデザインや需要が見込めるはずだった商品までもが販売不振を続けて、結果的に買い取り先のデザイナーにも迷惑をかけてしまっている。
これじゃぁダメだ。
ちょっと手段を考えないと。
「アリーシア嬢ちゃんの頼みじゃ断れないな。がはは」っておっしゃってくれた。
そんなわりと豪快な方。
ここのところの業績の悪化もあって、割と安めに買い叩いてくれたらしい。
「俺のところでは持て余すからな。っていうか嬢ちゃんが離縁されたって聞いたときゃぁ俺の所に来てくれればなぁと思ったものだったが。まあでもお貴族様のお嬢様では無理だなって諦めてたんだ。また商売をする気になってくれたことはそれだけでも嬉しいよ」
買い叩いたなら自分で経営するっていう手もあっただろうに、快くわたくしたちに譲ってくれたグラブルさん。
ラインハルト様はそういったことには興味がないだろうからそこに支配人としてセバスが就いてても、ただ内情を知るものとして、経験者として雇用されたのだろうくらいにしか思わないかもだ。
ただ、わたくしにしてもセバスに経営手腕があるとは思っていない。
ブラウド様がお亡くなりになった後も、この一年の間でも、彼に経営手腕があるのならそこまで経営が悪化する事もなかっただろう。
少なくともちゃんとした経営判断ができて任されるだけの器があれば、トランジッタ侯爵様だったらセバスにすべてを丸投げしていただろうから。
お義父さまは、そういった商売にまったく関心がない方だった。
なんなら、商会を全部売り払ってもいい、それくらいに邪魔に思っているようだったもの。
たぶんうちのお祖父様からの申し出がなかったら、わたくしをブラウド商会の責任者にもしなかっただろう。
結婚式で初めておはなしした時も、「せっかく嫁いで来てくれた君に商売だなんて、本当は携わらせたくないのだけれどね」って、暗にお祖父様を非難するような物言いで。
ああ、この方は貴族が商売をすることすら嫌ってらっしゃるのだ。と、そんな感じも受けたものだった。
ブラウド様のことをお義父様がどうお考えだったのかはわからない。
ただ、商会に対して愛着もなければ、その商会の収入でトランジッタ家が生活しているって意識もないみたい。
まあ、普通の貴族は領地の経営領地の収入が全てだし、投資ならともかく自前で商会を経営していらっしゃるって話はあまり聞かない。
お義父さまも最近はずっと領地に行ったままだった。
あれはブラウド商会の収入ではなく領地経営(結局は現地の執事に実務はすべて任せているにしても)で生きるのが貴族だっていうプライドの現れだったのかもしれないな。って、そうも思えた。
住まいを整えながら早速すべての帳票に目を通す。
やっぱり……。
仕入れと売値のバランスがめちゃくちゃだ。
損益分岐点も完全に下回っている。
一番いけないのは不良在庫が増えすぎなところ。
バイヤー側はわたくしが探してきた仕入れラインを維持しようと無理をしてでも購入を続け、現場の商店側は利益を出そうと市場価格よりも高い値付けを維持し続けていた。
そのせいで本当だったらもっと十分人気になっただろうデザインや需要が見込めるはずだった商品までもが販売不振を続けて、結果的に買い取り先のデザイナーにも迷惑をかけてしまっている。
これじゃぁダメだ。
ちょっと手段を考えないと。
21
お気に入りに追加
1,584
あなたにおすすめの小説
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜
しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。
高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。
しかし父は知らないのだ。
ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。
そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。
それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。
けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。
その相手はなんと辺境伯様で——。
なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。
彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。
それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。
天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。
壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
悪役令息、拾いました~捨てられた公爵令嬢の薬屋経営~
山夜みい
恋愛
「僕が病気で苦しんでいる時に君は呑気に魔法薬の研究か。良いご身分だな、ラピス。ここに居るシルルは僕のために毎日聖水を浴びて神に祈りを捧げてくれたというのに、君にはがっかりだ。もう別れよう」
婚約者のために薬を作っていたラピスはようやく完治した婚約者に毒を盛っていた濡れ衣を着せられ、婚約破棄を告げられる。公爵家の力でどうにか断罪を回避したラピスは男に愛想を尽かし、家を出ることにした。
「もううんざり! 私、自由にさせてもらうわ」
ラピスはかねてからの夢だった薬屋を開くが、毒を盛った噂が広まったラピスの薬など誰も買おうとしない。
そんな時、彼女は店の前で倒れていた男を拾う。
それは『毒花の君』と呼ばれる、凶暴で女好きと噂のジャック・バランだった。
バラン家はラピスの生家であるツァーリ家とは犬猿の仲。
治療だけして出て行ってもらおうと思っていたのだが、ジャックはなぜか店の前に居着いてしまって……。
「お前、私の犬になりなさいよ」
「誰がなるかボケェ……おい、風呂入ったのか。服を脱ぎ散らかすな馬鹿!」
「お腹空いた。ご飯作って」
これは、私生活ダメダメだけど気が強い公爵令嬢と、
凶暴で不良の世話焼きなヤンデレ令息が二人で幸せになる話。
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語
ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ……
リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。
⭐︎2023.4.24完結⭐︎
※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。
→2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる