31 / 32
パラレル世界。
しおりを挟む
この世界はたぶんとりかえばやの世界だっていうのは間違いないと思う。
それでも随分とおはなしの中身とは変わっている。
わたしが内侍になるのは物語の強制力なのかもしれないけど、本当だったらここでわたしとにいさまは入れ替わり、ちゃんととりかえは完了するはずだったのに。
まさか男の体のわたしが帝の后になるだなんて、なれるだなんて、そんな幸せなことが起こるだなんて思ってもみなかった。
帝は自分の名前を「令」だと名乗った。
本来の平安の歴史だと、この次代の帝は後冷泉帝だ、もちろんそんな諡が今呼ばれているわけじゃないことはわかってるし、後冷泉帝であればわたしとは従兄弟になるはず。藤原道長、お祖父様の孫だから。実在の歴史では頼通の娘寛子を皇后としたはず。そしてついぞ寛子との間には皇子に恵まれなかったとあった。
そういう意味では、帝とわたし寿子が結ばれ子に恵まれなくても歴史通りと言えなくもない。
とりかえばやの世界とは違ってるけれどね。
そういえば。
わたしに寿子という女性名をつけたのはおたあさまだ。
仏のお告げで女子として育てられたわたし。命がつなげるのならそれでもいいと、おもうさまも納得してくれたらしいけれど、そのおかげでわたしはわたしとしてちゃんと入内できると考えたら、わたしに寿子という名を授けてくれたことには本当に感謝しかない。
この世界はとりかえばやの世界と実在の歴史をミックスしたパラレル世界になっていってるのかな。
そういえばもう一つ。
わたしが内侍として出仕するにあたり、先帝のお子で東宮のお世話や話し相手というお役目もあるらしい。ただし、その東宮は姫ではない。
とりかえばやでの女一宮ではなくて、ちゃんとした男宮、名を悠宮といった。
まだ元服前の宮は東宮として立てられたもののまだ幼く、帝に皇子ができさえすればとりかえられてもおかしくない、そんなお立場だ。
多感なそんな時期に、そういう不安定な立場でいらっしゃるのはお可哀想。そう同情もしてしまうし、またわたしが出仕するのだから間違いが起きることもない、と、安心もする。
とりかえばやの女一宮と弟姫のことについては、あの物語では完全に悲劇だし。
ああいう出来事が起こりようがないことに感謝した。
それでも随分とおはなしの中身とは変わっている。
わたしが内侍になるのは物語の強制力なのかもしれないけど、本当だったらここでわたしとにいさまは入れ替わり、ちゃんととりかえは完了するはずだったのに。
まさか男の体のわたしが帝の后になるだなんて、なれるだなんて、そんな幸せなことが起こるだなんて思ってもみなかった。
帝は自分の名前を「令」だと名乗った。
本来の平安の歴史だと、この次代の帝は後冷泉帝だ、もちろんそんな諡が今呼ばれているわけじゃないことはわかってるし、後冷泉帝であればわたしとは従兄弟になるはず。藤原道長、お祖父様の孫だから。実在の歴史では頼通の娘寛子を皇后としたはず。そしてついぞ寛子との間には皇子に恵まれなかったとあった。
そういう意味では、帝とわたし寿子が結ばれ子に恵まれなくても歴史通りと言えなくもない。
とりかえばやの世界とは違ってるけれどね。
そういえば。
わたしに寿子という女性名をつけたのはおたあさまだ。
仏のお告げで女子として育てられたわたし。命がつなげるのならそれでもいいと、おもうさまも納得してくれたらしいけれど、そのおかげでわたしはわたしとしてちゃんと入内できると考えたら、わたしに寿子という名を授けてくれたことには本当に感謝しかない。
この世界はとりかえばやの世界と実在の歴史をミックスしたパラレル世界になっていってるのかな。
そういえばもう一つ。
わたしが内侍として出仕するにあたり、先帝のお子で東宮のお世話や話し相手というお役目もあるらしい。ただし、その東宮は姫ではない。
とりかえばやでの女一宮ではなくて、ちゃんとした男宮、名を悠宮といった。
まだ元服前の宮は東宮として立てられたもののまだ幼く、帝に皇子ができさえすればとりかえられてもおかしくない、そんなお立場だ。
多感なそんな時期に、そういう不安定な立場でいらっしゃるのはお可哀想。そう同情もしてしまうし、またわたしが出仕するのだから間違いが起きることもない、と、安心もする。
とりかえばやの女一宮と弟姫のことについては、あの物語では完全に悲劇だし。
ああいう出来事が起こりようがないことに感謝した。
1
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?
ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。
幸せな帝国生活 ~「失敗作」と呼ばれていた王女、人質として差し出された帝国で「最重要人物」に指定される~
絢乃
恋愛
魔力が低いと蔑まれ「失敗作」扱いだった王女ソフィアは、人質として宗主国の帝国に送られる。
しかし、実は彼女の持つ魔力には魔物を追い払う特殊な属性が備わっていた。
そのことに気づいた帝国の皇太子アルトは、ソフィアに力を貸してほしいと頼む。
ソフィアは承諾し、二人は帝国の各地を回る旅に出る――。
もう失敗作とは言わせない!
落ちこぼれ扱いされていた王女の幸せな帝国生活が幕を開ける。
お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
愛しき冷血宰相へ別れの挨拶を
川上桃園
恋愛
「どうかもう私のことはお忘れください。閣下の幸せを、遠くから見守っております」
とある国で、宰相閣下が結婚するという新聞記事が出た。
これを見た地方官吏のコーデリアは突如、王都へ旅立った。亡き兄の友人であり、年上の想い人でもある「彼」に別れを告げるために。
だが目当ての宰相邸では使用人に追い返されて途方に暮れる。そこに出くわしたのは、彼と結婚するという噂の美しき令嬢の姿だった――。
これは、冷血宰相と呼ばれた彼の結婚を巡る、恋のから騒ぎ。最後はハッピーエンドで終わるめでたしめでたしのお話です。
第22回書き出し祭り参加作品
2025.1.26 女性向けホトラン1位ありがとうございます
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
結婚式をボイコットした王女
椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。
しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。
※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※
1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。
1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる