しんとりかえばや。

友坂 悠

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【瑠璃の君】あたしの人生も。

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 五十鈴川の清流の流れを眺めながら目の前に並ぶ料理を頂く。野菜や魚が小さく彩り良く調理され並ぶ其れ。醤でゆったりと味付けされたそれらにここ伊勢の伝統を感じて。

 濁り梅酒を一口飲み、そして鮎の切り身を摘む。

 瑠璃姫はなんだかスッキリとした表情になっている。
 しかしまさか、姫と帝が知り合っていたとは。
 おまけに姫の秘密を帝がご存じだったとは。

 ああ、だから。
 ある時から帝があたしを見るご様子が変わったような気がしていたのは、こういうことだったのだ。
 姫の秘密を知ったということは、あたしが女子であることも、帝にはバレていたということだ。

 純粋にあたしを瑠璃の中将としてかっていてくれたわけではなくて、姫の代わりとしてみていただけなんだ。そう思うとやるせない。

 それでも。

 帝にも、あんな秘密があっただなんて。
 さぞお辛い人生を送っていらしたんだろうな。そう思うと、自分のことのように身に沁みる。

 っていうか、女御の方達は誰もお気づきにならなかったのだろうか?
 それとも、帝は誰にも打ち明けることなく、寂しい思いをされていたのだろうか?
 そう考えれば、姫と帝が結ばれ幸せになってくれるなら、あたしは本望だ。

 それに。

「帰ってこないか? 中将。君がいないと宮中が味気ないよ。それに、右大臣家の四の君なら宰相の中将の元に走ったよ。そのせいで君が失踪した原因が四の君と宰相の中将による不義によるものと。愛する妻と親友の二人に裏切られた中将が、失意の元に失踪したのだと、今、都ではそういう噂が飛び交っている。もう右大臣もカンカンでね。悪いことをしたと泣いて君の捜索を願い出る始末でね。まあ、そんな噂には少し居心地が悪いかもしれないけれど、君の心配事もある程度解決したんじゃないかな?」

 そう、目の前で仰る帝の笑顔を見るにつけ。

 そう、だね。
 あたしにはまだこの瑠璃姫を守ってやらなきゃいけない仕事がある。それに。

 あたしの人生だって、ちゃんと始めなきゃ。いけないよね?
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