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伊勢へ・・・
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雪が降りだす時期になってからでは遅いので、と。
わたしは身の回りのものをまとめ、ここを出ることにした。
今回ばっかりは少納言も虎徹も頼ることは出来ない。生き倒れる事だってあり得るのだから。
そういえば。
もう随分曖昧になってきたわたしの前世の知識の中で、中世に転生して現代の知識で無双するっぽいお話とかがあった気がするけど、あれって現実にはけっこう厳しいんじゃないだろうか。
お料理くらいだったら工夫できなくもないけどな、とかも思うけど、一から材料を作る知識は流石に無い。
現代でもちゃんと知識や手に職を持った人が中世に渡れば、それは確かに活躍ができるかもしれないけど、だけどそれはそれだ。
わたしみたいになんの能力も無かったアラサー事務員が生まれ変わったところで出来ることは知れてる。
ただ、
ここから伊勢に行くくらいのことは、たぶん出来る。
お伊勢さんは何度も行った覚えがあるし、この時代でもちゃんとあるはず。
なんなら門前でおうどんでも作って振舞ってそれで暮らしていくかな。
それもいいな。
黙ってこっそり出かけてしまおう、そう思ったのだけど。
「水臭いな。姫が行くならあたしも一緒に行くよ。もともとあたしは姫が喜ぶかと思ってここに来たんだ。それにどうせあたしには姫生活なんてできっこ無いしね。それなら町娘の方がましさ」
ああ、にいさま……。
「そうですよ水臭い。あたしだって姫様の行くところなら何処だってお伴しますよ。お伊勢ですか? いいですよねー。一度行ってみたかったんです」
ああ、少納言も……。
月明かりの下。
わたしたち三人は、旅装束に着替えて吉野を出たのだった。
で、どのルートで行くか。
紀伊半島を山の中横断すれば距離は近いけどたぶん無理。
とてもじゃ無いけど山が越えられず遭難しそう。
琵琶湖のほとりを通り関ヶ原を抜け大垣桑名津のルート。
これが現実的なんだけど、冬の関ヶ原はきつい。
こちらも今から抜けるのは結構辛い、かな。
じゃぁ。
堺に出て泉佐野、和歌山廻って熊野から入るルート。
この時期ならこちらか。
沿岸部をゆっくり行くルートだから最悪食料はなんとかなりそう。
途中絹と交換で食べ物手に入れたり泊まるとこ借りたりもし易いかな。
牛車を使うにもある程度はちゃんとした道があるこちらのルートがいいか。
人数多くなったからやっぱり徒歩だけでは厳しい。
とにかく行けるところまでは牛車も使おう。
で。
あんまり大勢でがたがた用意してたら当然屋敷の人に見つかるわけで。
お祖母様には、
「にいさまが見つかるよう願掛けにお伊勢まで行ってきます」
と、書き置きして出て行った。
当然虎徹も一緒だ。
ごめんね。虎徹。
でも。
これが現実的な方法なのだろう。
わたしひとりじゃ、無事たどり着けるか怪しかったし。
「ねえ、姫。泉の君のことは良かったの?」
出発してすぐ、にいさまがそう言ってきた。
「え? どうして……」
「ああ、ごめん。少納言に聞いた。っていうかあんまり姫が泣くからさ、どうしたわけか聞いたのよ。そしたら姫には好きな人が居るって言うじゃない。ほんとうごめん。入れ替わりたく無かったよね。好きな人が居るのに男に戻れだなんて、あたしそんなつもりじゃなくってさ……」
うん……。根は良い人なんだよね。にいさま。だからみんな慕ってる。わたしも嫌いにはなれなかったし。
「ごめんなさい……」
「ああ、泣かないで。ほんと困らせたいわけじゃ無かったんだってば。ねえ。ほんと……」
わたしは牛車に揺られながら、ぼろぼろ泣いた。
ほんとごめんなさい。わたしがわがまま言わなければにいさまもねえさまに戻れたのに……。ほんと、ごめんなさい……。
☆☆☆
ちょっと予定と違ったけれど、わたしたちは無事に伊勢に到着していた。
うーん。結局これは家の権力のおかげ? なのか。
佐野までは確かに牛車に揺られてきたのだ。そこで実家の荘園の館に泊まり、そこの家令が船を手配してくれて。
紀伊半島の沿岸を船に揺られそのまま鳥羽を廻り伊勢に入ったのだった。
うーん。
ちょっとこの時代を甘くみてた。
結局権力ってこういう便利さも産んでるのね。
伊勢でも外宮のほど近くにちゃんと館があり、わたしたちは其処に落ち着いた。
まあお祖母様ににいさま探しの祈願だって書き置きしたわけだし、おもうさまにもそう連絡が行ったのだろう。
話は全部少納言に任せたけど、どこに行ってもちゃんと関白左大臣の姫として丁重に扱われた。
まあいざとなったらここで失踪してもいいんだし、ここまでくればそう簡単に連れ戻されないだろうってそういう風に甘く考えてたけど、ちょっと心配になってきた。
流石に全国にこういうネットワークがちゃんとあるんだなぁ、と、改めて摂関家の権力ってすごいなって感心して。
にいさまはわたしのお付きの下働きって設定で連れ歩いてる。
まあこの格好で三位の中将だと疑う人もいないかな。
「で、今日はどうする?」
「下宮も内宮ももう三回も参りましたし、今日は門前町を観て廻りませんか?」
「うん。わたし、神宮の門前町観るの楽しみだったの」
「あは。なんか完全に楽しんでるね。まあでもあたしも楽しいよ。こうして姫と旅ができて、こうしてお伊勢まで来れたこと」
「にいさま……。ううん、ねえさま。ありがとう……」
わたしたちの仲は急速に良くなっていた。
今まで碌に本音を話したことなんかなかったけど、この旅の間に色んな事をおはなしして。
ああ、なんとかわたしたちみんなが幸せになる方法はないのかな……。
このねえさまを、幸せにしてあげるにはどうしたらいいんだろう。
わたしは身の回りのものをまとめ、ここを出ることにした。
今回ばっかりは少納言も虎徹も頼ることは出来ない。生き倒れる事だってあり得るのだから。
そういえば。
もう随分曖昧になってきたわたしの前世の知識の中で、中世に転生して現代の知識で無双するっぽいお話とかがあった気がするけど、あれって現実にはけっこう厳しいんじゃないだろうか。
お料理くらいだったら工夫できなくもないけどな、とかも思うけど、一から材料を作る知識は流石に無い。
現代でもちゃんと知識や手に職を持った人が中世に渡れば、それは確かに活躍ができるかもしれないけど、だけどそれはそれだ。
わたしみたいになんの能力も無かったアラサー事務員が生まれ変わったところで出来ることは知れてる。
ただ、
ここから伊勢に行くくらいのことは、たぶん出来る。
お伊勢さんは何度も行った覚えがあるし、この時代でもちゃんとあるはず。
なんなら門前でおうどんでも作って振舞ってそれで暮らしていくかな。
それもいいな。
黙ってこっそり出かけてしまおう、そう思ったのだけど。
「水臭いな。姫が行くならあたしも一緒に行くよ。もともとあたしは姫が喜ぶかと思ってここに来たんだ。それにどうせあたしには姫生活なんてできっこ無いしね。それなら町娘の方がましさ」
ああ、にいさま……。
「そうですよ水臭い。あたしだって姫様の行くところなら何処だってお伴しますよ。お伊勢ですか? いいですよねー。一度行ってみたかったんです」
ああ、少納言も……。
月明かりの下。
わたしたち三人は、旅装束に着替えて吉野を出たのだった。
で、どのルートで行くか。
紀伊半島を山の中横断すれば距離は近いけどたぶん無理。
とてもじゃ無いけど山が越えられず遭難しそう。
琵琶湖のほとりを通り関ヶ原を抜け大垣桑名津のルート。
これが現実的なんだけど、冬の関ヶ原はきつい。
こちらも今から抜けるのは結構辛い、かな。
じゃぁ。
堺に出て泉佐野、和歌山廻って熊野から入るルート。
この時期ならこちらか。
沿岸部をゆっくり行くルートだから最悪食料はなんとかなりそう。
途中絹と交換で食べ物手に入れたり泊まるとこ借りたりもし易いかな。
牛車を使うにもある程度はちゃんとした道があるこちらのルートがいいか。
人数多くなったからやっぱり徒歩だけでは厳しい。
とにかく行けるところまでは牛車も使おう。
で。
あんまり大勢でがたがた用意してたら当然屋敷の人に見つかるわけで。
お祖母様には、
「にいさまが見つかるよう願掛けにお伊勢まで行ってきます」
と、書き置きして出て行った。
当然虎徹も一緒だ。
ごめんね。虎徹。
でも。
これが現実的な方法なのだろう。
わたしひとりじゃ、無事たどり着けるか怪しかったし。
「ねえ、姫。泉の君のことは良かったの?」
出発してすぐ、にいさまがそう言ってきた。
「え? どうして……」
「ああ、ごめん。少納言に聞いた。っていうかあんまり姫が泣くからさ、どうしたわけか聞いたのよ。そしたら姫には好きな人が居るって言うじゃない。ほんとうごめん。入れ替わりたく無かったよね。好きな人が居るのに男に戻れだなんて、あたしそんなつもりじゃなくってさ……」
うん……。根は良い人なんだよね。にいさま。だからみんな慕ってる。わたしも嫌いにはなれなかったし。
「ごめんなさい……」
「ああ、泣かないで。ほんと困らせたいわけじゃ無かったんだってば。ねえ。ほんと……」
わたしは牛車に揺られながら、ぼろぼろ泣いた。
ほんとごめんなさい。わたしがわがまま言わなければにいさまもねえさまに戻れたのに……。ほんと、ごめんなさい……。
☆☆☆
ちょっと予定と違ったけれど、わたしたちは無事に伊勢に到着していた。
うーん。結局これは家の権力のおかげ? なのか。
佐野までは確かに牛車に揺られてきたのだ。そこで実家の荘園の館に泊まり、そこの家令が船を手配してくれて。
紀伊半島の沿岸を船に揺られそのまま鳥羽を廻り伊勢に入ったのだった。
うーん。
ちょっとこの時代を甘くみてた。
結局権力ってこういう便利さも産んでるのね。
伊勢でも外宮のほど近くにちゃんと館があり、わたしたちは其処に落ち着いた。
まあお祖母様ににいさま探しの祈願だって書き置きしたわけだし、おもうさまにもそう連絡が行ったのだろう。
話は全部少納言に任せたけど、どこに行ってもちゃんと関白左大臣の姫として丁重に扱われた。
まあいざとなったらここで失踪してもいいんだし、ここまでくればそう簡単に連れ戻されないだろうってそういう風に甘く考えてたけど、ちょっと心配になってきた。
流石に全国にこういうネットワークがちゃんとあるんだなぁ、と、改めて摂関家の権力ってすごいなって感心して。
にいさまはわたしのお付きの下働きって設定で連れ歩いてる。
まあこの格好で三位の中将だと疑う人もいないかな。
「で、今日はどうする?」
「下宮も内宮ももう三回も参りましたし、今日は門前町を観て廻りませんか?」
「うん。わたし、神宮の門前町観るの楽しみだったの」
「あは。なんか完全に楽しんでるね。まあでもあたしも楽しいよ。こうして姫と旅ができて、こうしてお伊勢まで来れたこと」
「にいさま……。ううん、ねえさま。ありがとう……」
わたしたちの仲は急速に良くなっていた。
今まで碌に本音を話したことなんかなかったけど、この旅の間に色んな事をおはなしして。
ああ、なんとかわたしたちみんなが幸せになる方法はないのかな……。
このねえさまを、幸せにしてあげるにはどうしたらいいんだろう。
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