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【瑠璃の君】疑心暗鬼。
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秋も終盤に差し掛かった頃合い。
四の君が出産間近になり右大臣は気もそぞろに祈祷を行わせ、何故か疎遠になった瑠璃の中将への恨み言を左大臣に溢すようになった。
本来であれば自分の子が産まれるのだ、足繁く通い妻の様子を伺うのが本来の姿ではないか?
と。
たまりかねた左大臣も、
「このところ右大臣は落胆し、特に四の君が身重になってからお前の心が離れていくように見えるのを嘆いていた。どうしてそのように振る舞うのだ。人目に見苦しくないように立ち回るべきであろう」
と、そう中将に諭すように話すのだが、理由はわかるだけにそれ以上は強く言えず。
中将は中将で、そもそもこの結婚が間違いだったのだと思ってはいるものの、それを左大臣に咎めるのも気が引け、押し黙ったままであった。
やがて、四の君に可愛らしい女子が産まれ、右大臣家では祝福に包まれた。
瑠璃も世間体をはばかり顔を出さないわけにもいかず、しばらく通うのであったけれど。
そのかわいらしい綺麗な顔を見るにつけ、宰相の中将と生写しであることに心を痛めた。
自分は宰相の中将に嫉妬しているのか?
はたまた、四の君に嫉妬しているのか?
この心の痛みがどちらに起因した物なのか。
そして、この彼女、四の君が自分を内心であざわらっているのではないか。
そんな疑心暗鬼に生来の明るさを失っていったのだった。
そんな鬱な表情の瑠璃を見るにつけ。
宰相の中将はますます想いを募らせていた。
四の君の事は愛おしく思わないでもない。
自分の子が誕生したのだ。ほんとうであったら四の君共々自分の元に置きたい、そうも思う。
だけれどそれはそれ。
あれはもともと瑠璃への気持ちを押し殺すことが出来ず侵入した右大臣家での一夜の間違いだ。
自分にとって本当に大事なのは瑠璃で。
なんとしても。
なんとしても想いを遂げたい。
瑠璃を本来の姿に戻し、自分の妻に迎えるのだ。
それが自分の使命だとも、瑠璃も本当はそれを望んでいるに違いない、と。
今彼女の表情が暗いのも、すべて彼女が間違った生き方をしているからだ、と。
瑠璃を救うのだ。
彼の心はそう、固まっていた。
四の君が出産間近になり右大臣は気もそぞろに祈祷を行わせ、何故か疎遠になった瑠璃の中将への恨み言を左大臣に溢すようになった。
本来であれば自分の子が産まれるのだ、足繁く通い妻の様子を伺うのが本来の姿ではないか?
と。
たまりかねた左大臣も、
「このところ右大臣は落胆し、特に四の君が身重になってからお前の心が離れていくように見えるのを嘆いていた。どうしてそのように振る舞うのだ。人目に見苦しくないように立ち回るべきであろう」
と、そう中将に諭すように話すのだが、理由はわかるだけにそれ以上は強く言えず。
中将は中将で、そもそもこの結婚が間違いだったのだと思ってはいるものの、それを左大臣に咎めるのも気が引け、押し黙ったままであった。
やがて、四の君に可愛らしい女子が産まれ、右大臣家では祝福に包まれた。
瑠璃も世間体をはばかり顔を出さないわけにもいかず、しばらく通うのであったけれど。
そのかわいらしい綺麗な顔を見るにつけ、宰相の中将と生写しであることに心を痛めた。
自分は宰相の中将に嫉妬しているのか?
はたまた、四の君に嫉妬しているのか?
この心の痛みがどちらに起因した物なのか。
そして、この彼女、四の君が自分を内心であざわらっているのではないか。
そんな疑心暗鬼に生来の明るさを失っていったのだった。
そんな鬱な表情の瑠璃を見るにつけ。
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四の君の事は愛おしく思わないでもない。
自分の子が誕生したのだ。ほんとうであったら四の君共々自分の元に置きたい、そうも思う。
だけれどそれはそれ。
あれはもともと瑠璃への気持ちを押し殺すことが出来ず侵入した右大臣家での一夜の間違いだ。
自分にとって本当に大事なのは瑠璃で。
なんとしても。
なんとしても想いを遂げたい。
瑠璃を本来の姿に戻し、自分の妻に迎えるのだ。
それが自分の使命だとも、瑠璃も本当はそれを望んでいるに違いない、と。
今彼女の表情が暗いのも、すべて彼女が間違った生き方をしているからだ、と。
瑠璃を救うのだ。
彼の心はそう、固まっていた。
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