しんとりかえばや。

友坂 悠

文字の大きさ
上 下
7 / 32

【瑠璃の君】半身。

しおりを挟む
 ☆瑠璃の君 十四歳。

 昨日は久々に瑠璃姫の顔を見に行った。
 御簾の向こうで扇で隠してたからはっきり見えなかったけど、時々こちらを覗き見る時にちらっと見えた姫の顔はやっぱりかわいかった。
 あたしの半身、理想のあたし。
 でもまだちょっと身体が弱いのが不安。
 もうちょっと元気になってくれると良いのにな、って、そう思う。

 に、しても。

 とうをよっつも過ぎたこのところ、周りの大人の態度が少し変わってきたような気がしてる。
 もともとあたしのことを男だと思っている親戚は、早く元服させて宮中に、とせっつき、
 もともとちゃんと真実を知っている女房たちは次々と里帰りし居なくなった。

 おもうさまから緘口令が敷かれたらしく、新しい女房はみな東の瑠璃が姫、西のあたしが若君だと信じてる。

 昔からあたし付きの楓だけなんとか残ってくれたのが救い。
 もし彼女まで居なくなってたらと思うとゾッとする。男の真似なんてそうそう続けられるものじゃないし。

 装束さえ脱がなければわからないんだけどな。
 そんな事も考えるけど。
 それでも気が抜けない。

 それこそ月の障の時は楓以外誰も近づけられないのに。

 ☆☆☆

 結局周りの圧力に負けたおもうさまはあたしに元服、姫に裳着を強行し。
 晴れて殿上人となったあたしは宮中に出仕することとなった。

 五位の少将。瑠璃の少将と、そう呼ばれる事となったのだ。


 でもなにあれ。
 男ってほんとヤダ。
 女と寝ることしか考えてないんじゃ無い?
 しかもそれを雅だと遊びだとそんなことばかり。

 ああやだやだ。あたしは絶対そんな事はしないぞと、そう心に決めたのだった。


 もともと外を駆け回りたかっただけのあたし。
 自分で自分の人生を生きたいとは思ってたけど、結局成り行きでこんなことになってしまって流石のあたしも今は少し後悔している。

 あれだけ祈ったのに姫は女の子になれなかったしあたしも女のままだ。

 このままあたしが実は女だなんてバレるとたぶん姫にも迷惑がかかる。だから。

 うん。

 頑張って、大人しくして、なんとかやり過ごそう。

 何事もそつなくこなし、目立たず、それが目標だ。



 そうしてしばらく経った頃、帝が体調を崩して東宮に位を譲ることとなり、朱雀院に移る事となった。
 上皇様は御息女の一ノ宮をどうやらあたしに娶らせたいと後見させたいと思し召していたっぽいんだけど、流石にむりでしょ?
 そっけない素知らぬ振りをしてやり過ごしていたんだけど、そうこうするうちに今度はおもうさまのご兄弟の右大臣さまの所の四の君との縁談が持ち上がった。

 こんなあたしでも男女の違いも結婚してする事も一応わかってる。
 そんなふつうの結婚なんてできやしないのに。

 なんと、おもうさまが右大臣様に押し切られてしまい。

 あたしは結婚する事となってしまった。もう、どうなってもしらないよ?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

幸せな帝国生活 ~「失敗作」と呼ばれていた王女、人質として差し出された帝国で「最重要人物」に指定される~

絢乃
恋愛
魔力が低いと蔑まれ「失敗作」扱いだった王女ソフィアは、人質として宗主国の帝国に送られる。 しかし、実は彼女の持つ魔力には魔物を追い払う特殊な属性が備わっていた。 そのことに気づいた帝国の皇太子アルトは、ソフィアに力を貸してほしいと頼む。 ソフィアは承諾し、二人は帝国の各地を回る旅に出る――。 もう失敗作とは言わせない! 落ちこぼれ扱いされていた王女の幸せな帝国生活が幕を開ける。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

愛しき冷血宰相へ別れの挨拶を

川上桃園
恋愛
「どうかもう私のことはお忘れください。閣下の幸せを、遠くから見守っております」  とある国で、宰相閣下が結婚するという新聞記事が出た。  これを見た地方官吏のコーデリアは突如、王都へ旅立った。亡き兄の友人であり、年上の想い人でもある「彼」に別れを告げるために。  だが目当ての宰相邸では使用人に追い返されて途方に暮れる。そこに出くわしたのは、彼と結婚するという噂の美しき令嬢の姿だった――。  これは、冷血宰相と呼ばれた彼の結婚を巡る、恋のから騒ぎ。最後はハッピーエンドで終わるめでたしめでたしのお話です。 第22回書き出し祭り参加作品 2025.1.26 女性向けホトラン1位ありがとうございます

つないだ糸は切らないで

gacchi
恋愛
オトニエル王国の侯爵家に生まれたアンリエットは、八歳の時に視察に行く両親について隣国の辺境伯領地に訪れたが、そこで両親は何者かに襲われ殺されてしまう。一人になったアンリエットを辺境伯二男シルヴァンは王都まで送り届け、いつまでも家族だと約束をして別れる。その十年後、アンリエットは新しく養父となった叔父には冷たくされ、王太子の婚約者として心身ともに疲れ切っていた。ついには義妹と婚約者の交換をちらつかされ何もかもが嫌になったアンリエットは、平民の冒険者になってシルヴァンに会いに行く。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた8歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと時分の正体が明らかに。 普通に恋愛して幸せな毎日を送りたい!

王太子妃、毒薬を飲まされ意識不明中です。

ゼライス黒糖
恋愛
王太子妃のヘレンは気がつくと幽体離脱して幽霊になっていた。そして自分が毒殺されかけたことがわかった。犯人探しを始めたヘレン。主犯はすぐにわかったが実行犯がわからない。メイドのマリーに憑依して犯人探しを続けて行く。 事件解決後も物語は続いて行きローズの息子セオドアの結婚、マリーの結婚、そしてヘレンの再婚へと物語は続いて行きます。

処理中です...