静かなる魔王!!

友坂 悠

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それが全て。

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 父さん、ゼノン・マックロードのマトリクスを纏ったあたし。

 シシノジョウには見せてたけど十二魔将は誰も知らない、か。
 あたしが父さんそのものの姿になれること。

 こんなことをしてもあたしではなく結局父さんの威を借りるだけなのも分かってはいるけど。でも。

 ちらっとシシノジョウを見る。うん。なんだか目がうるうるしてる。よっぽどこの姿が好きなのかな……? それはそれでちょっとふにゃぁだけど。

「ゼノン、様……」

 サノスケがそう、呟いた。

 他の皆も最初は驚いていたけどそれでもこのあたしの姿が本物に見えるのか、さっきまでとは態度、っていうかあたしを見る目が全然違う。

「ゼノン様……復活なされたのですね……」

 レオが立ち上がり、そう言った。って、ちょっと待って? 復活? みんなにはそう見えるの?

「其方らにはそう、見えるのか?」

 あたしはそう答える。

 ああ、声もちゃんと父さんの声。

「そのオーラ、見間違えることなどありません!」

 ヘイスケがそう、涙声になって叫んだ。

 ああ、どうしよう。今の姿がガワだけだなんて言いにくくなっちゃった。

 他の皆も、もう完全に父さんが蘇ったって信じてる?


「皆、落ち着け。ここに座すはゼノン様ではなくシズカ様だ。もちろんゼノン様の魔王石は今や完全にシズカ様の魂《レイス》の中にある。シズカ様がゼノン様の全てを引き継がれているのも事実だが」

「兄貴! だからゼノン様がシズカ様の身体を使って蘇ったのだろう? この身に纏うオーラ、俺にもゼノン様ご自身にしか見えん」

「まあ待て。レオや」

「うるさい! じいさんは黙ってろ!」

「いや、黙ってはいられぬよ。なあ、シズカ、様?」

 カインがあたしの方を見て。

 まあ。流石に古老は冷静だよね。



 そもそもさ、なんであたしは魔王なんてものをやってるんだろう。

 感情に呑まれ血に塗れた父と同じにはなりたくなかった、はず。

 でも、魔族同士が割れ、血で血を洗う争いが起きるのは避けたかった。
 あたしが魔王になれば丸く収まるのならそれでもいい、そう思ったんだ。けど。

 たぶん、甘かったんだな。そんなあたしの認識も覚悟も。でもってたぶん、あたしの意識なんか本当に薄っぺらい。
 きっとそんなものも見透かされていたのかもしれないけどそれでも、ね?


 だいたいが仲良しこよしで集まっているような奴ら、じゃ、ない。
 皆、野生の獣だ。
 力を示さなければ言うことを聞かないのであれば、父の威を借りてでも、それでも、いいか。


「私は父ゼノンの魔王石を完全に受け継いだ! それが全てだ!」

 あたしは皆の前でそう啖呵を切った。
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