静かなる魔王!!

友坂 悠

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次のお仕事を。

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 でも、どうしよっか。

「うーん。戻るのはちょっと……」

「ですよねー。シズカさんが戻りたいのならしょうがないかと思っていましたけど、私個人としてはできれば炎の竜さんに戻るのは避けてもらいたかったです」

 へ?

「流石にわがままが過ぎます。大部分のポーターさんは成長すればこのギルドを背負って立つ冒険者さんになるわけですよ。ベテランさんだって今まで貢献してきた方ばかりです。そんな中ポーターを使い捨てのように扱う炎の竜さんってちょっとギルドでも問題になっているんですよ」

 えー!

「パーティーメンバーはポーターをも守る義務があるんです。なのに彼ら、そういうそぶりも見せなかったって。彼らにつけたポーター皆からそんな苦情も受けてるんですよ!」

 はうあう。

 たしかにあたし守られた事は無かったっけ。

 っていうかあたしは自分でこっそりなんとかしてたから、あの人たちそんな事気にもしなかったかも。

「はうあう。まああたしが戻りたくないのはクビになった事を恨んでるとかそういうコトだけでもないんですけど……」

 まあクビになったのは悲しかったけどさ。今にして思えばそれで良かったのかなって思わないわけでもなくって。

「ま、シズカさんには他の引き合いも来てますから。選び放題ですよ! ほら、ここなんか如何です?」

 そう言って手元の資料をペラペラめくってみせるルミーナさん。

 はう。ほんと。

 結構たくさんお仕事ありそうで嬉しい。

「出来たら専属じゃなくて単発でお願いしたいと思ってたのでこれは助かるかも」

「じゃぁこの王都行きの護衛パーティーのお仕事とかどうですかね? 拘束日数はおおよそ1週間。王都見学もできそうですよ!」

 はう。いいかも。

「じゃぁ、これ——」

 ガラン

 受付入口の扉が唐突に開いた。

 あ、他の冒険者さんかな? あたしはそう思い何気なく振り返り。




「シズカ! シズカじゃないか! 何処に行ってたんだ。探してたんだぞ!」

 そう大声で怒鳴るドワンさんと遭遇してしまった。

 はうあう。今日は会いたく無かったよ……

「はう。ドワンさん、お久しぶりです。ちょっと訳あって田舎に帰ってたんですよお」

「そうか。話は後だ。明日からまた遠征だからお前にはまたポーターとして働いてもらうぞ」

 え?

「ちょっと待ってください」

 あたしクビになったんだよね?

 もう契約してないんだよ?

「あたし、クビになったんですよね?」

「はあ? だからそれは取り消してまた仕事させてやるって言ってんだろ? ありがたいよな?」

 はぁ?

 いくらなんでも。ここまで俺様な人だとは思わなかった。

「あたし、もう次のお仕事決めたところなんです。ドワンさんのところには帰りません」

「何言ってるんだ? そんなよそのパーティーの所なんて断れよ。俺が働かせてやるって言ってんだぞ!」

 ドワンさん、そこまで言うとあたしの腕を掴んで無理やり引っ張って行こうとした。

 はう。まずい。

 振り切るのは簡単だけど、ここではまずい!

 どうしようかと躊躇してたあたしに。

「お待ちなさい、ドワン・リューデット。シズカはまだあなた達のパーティーと契約はしていません。無理矢理連れていくのはギルドとしては看過できませんよ?」

 背後からそうルミーナさんが助け舟を出してくれた。
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