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チカラの使えないあたしなんて……。

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「無事で良かった。レティーナ。森で君を発見した冒険者は最初君があまりにも綺麗な状態で横たわっていたので一瞬死んでいるのかと思ったそうだ」

 開口一番そう話しかけられたけど、もしかして、もしかして、この人ものすごく偉い人、なの?

 ——あらら。この人ったらクラウディウス様じゃない? っていうかレティーナあなた自分の国の王様の顔くらい覚えてないの?

 えー?

 って、しらない、よ。あたしそんな偉い人と会ったこと……、あ、あった、かも……。

 昔まだ聖女宮に来たばっかりの頃。

 大聖女様のこともまだそんなに凄い人だと思って無かった当時。

 なんだかあたしのこと世話してくれる優しい人、くらいの認識だった頃に、サンドラ様に連れられ王宮の大広間まで来たことがあった。

 その時に椅子に座っている王様に御目通り? をしたんだっけか。

 名前は、って聞かれてレティーナですって答えた記憶、あるよ。

 うきゅう。まさかそんな偉い人があたしの事覚えているなんて、普通思わないよね?

 ——レティーナ、さすがにそれは考えが甘いわよ。もともと魔王の器として育てられたんだったらそんな重要人物王様が無関心でいるわけ無いもの。

 そういうもの?

 ——そういうものよ。それくらい魔王に対する対策はこの国では最重要課題なのだから。

 そっか。あたしはそんな道具として大事にされてたって事だよね。やっぱり……。

 ——はう、ごめんレティーナ。そんなつもりで言ったんじゃなくて……。

 心の中で話してて勝手に落ち込んで。一人で百面相しているあたしが不思議だったのか王様、

「まあ、そんなに難しく考えるな。わたしはお前が無事だった事が嬉しいのだ。さあ、スープが来たよ」

 目の前にさっとスープのお皿が置かれた。恭しく配膳する侍従さんに会釈してあたしはそのスープと王様の顔を見比べる。

「いただこう。神よ。あなたの愛しみに感謝してこの食事をいただきます」

 そう額の前で手を合わせるクラウディウス様に続きあたしも手をあわせ、いただきますと声に出す。

 スプーンで一口くちに運ぶとその旨味がギュッと詰まったスープの味が口の中にいっぱいに広がった。

 はう。

 幸せだ。

 思わず笑みが溢れた。

「旨いか。良かった。さあどんどん次が来るよ」

 料理は次から次へと運ばれてくる。そのどれもが美味しくて心の中から温まる味だった。



 食べ終わって満足して。

 はっと気がつけば顔が緩んでいる!?

 いけないいけない! あたしはこんなところでのんびりしている時間は無いんだった。

「王様! です、よね? あたし仲間のところに帰らなきゃ。こんなところでのんびりしていられないんです!」

「その仲間とやらは何処にいるのだ?」

 はう。そうだった。カイヤもティアもまだきっと北の果て……。

「たぶん……。北の果て、ガリアのそのまた北のハズレ、です……」

「それは、遠いな……」

 うん……。遠すぎる……。どうしたらいいの?

「それにレティーナ、君は今魔力紋を測る事もできない状態だ。きっと魔法の行使もできないのだろう? そんな状態でどうするというのだ?」

「でも……。でも……」

「君の仲間にはこちらから迎えの特使を出そう。それまではここで養生するといい。君を追い出した者たちには既に暇を出した。何も心配することは無いのだよ」

 気がつくとあたしはポロポロと涙を流していた。

「だけどあたし、チカラ、使えないのに……」

 チカラの使えないあたしなんか価値なんて無いのに……。どうしてそんなに優しい言葉をかけてくれるの……?

 どうして……。
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