ループ!! 絶望の淵の【替え玉聖女】は三度目の人生をやり直す! 〜わたくしを殺したもふもふの獣帝が今世ではなぜか溺愛してくるのですが!

友坂 悠

文字の大きさ
上 下
29 / 29

匂い。

しおりを挟む
 このこを癒せたのはもしかしたらわたくしのマナだったのかもしれない。
 そう思うと嬉しくて。
 自分の中からマナを出すことが出来たことにももちろん、弱っていたこの子を助けることが出来たのだと思うことが本当に嬉しかった。

「ねえ、レオ。わたくし、あなたを助ける事が出来たのかしら」

 レオの鼻先に自分の鼻を近づけ、そう聞いてみる。
 小さなその瞳が真っ直ぐにこちらを向いて、

「にゃぁ」

 と答えた。
 ちょっと赤みがかったそのトパーズ色の瞳がクルンクルンなまんまるになっている。
 そのまま、わたくしの鼻先をペロンと舐め、自分のほおををわたくしのほおに擦り付けてくるレオ。

 それはまるで、わたくしのこの思いを肯定してくれる、そんな意味の「にゃぁ」だったような気がしていた。


 ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎ ♦︎




 ペロン

 わたくしの鼻先を舐める舌。
 それは大きくてちょっとざらざらしている気がしたけれど、柔らかくて気持ちが良くて。
 全然痛いとかそんなふうには思わなくて……。


「うーん、レオ、やめて、くすぐったいわ」

 寝ぼけながらそう口走り、目の前の大きなお顔を避ける。
 って、大きなお顔?
 ええ??
 レオン、様!!

 目を開けるとそこには黄金の獅子、レオンハルト様の姿があった。

(夢、見ていたのかしら。
 また過去のあの時の事、思い出していたのね……)

 頭を振り払ってレオン様のお顔を見る。
 真っ直ぐにこちらを見るその大きなトパーズ色の瞳。
 赤みがかったその瞳。これもまた、レオと一緒、で。

「ああ、起きたのかい、アリス。かわいい寝顔は見飽きたりはしなかったけれど、それでもこうして起きてその瞳を見せてもらえると安心する。私のアリス。愛しているよ」

 そんなお声がわたくしの胸に響く。

 その大きな頭をわたくしの手に擦り付けてこようとする仕草に、なんだかレオを見ているような気持ちになってついつい手を差し出していた。
 グイグイと押し付けるように手のひらに頭が当たる。もふもふとしたその毛並みがとても柔らかく、温かい。

「君にレオと呼んでもらえる日が再びこうして来るとは思わなかった。嬉しいよ。アリス」

 そんなふうにおっしゃるレオンハルト、様。

 って、え? うそ!! どういうこと!?

 レオンハルト様!!



「レオンハルト様!!? それってどういう意味ですか!!?」

「忘れてしまっているのかと思っていた。それとも、あの時の君との邂逅は、私の勝手な夢の出来事なのかと何度も逡巡して聞くこともできずにいた。でも、君のレオと呼ぶ声を聞いて確信したよ。やっぱり間違いない。君は私のアリスだ。君のそのマナの匂い、私が忘れるわけはない。愛してる。アリス。もう離さない」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

私の完璧な婚約者

夏八木アオ
恋愛
完璧な婚約者の隣が息苦しくて、婚約取り消しできないかなぁと思ったことが相手に伝わってしまうすれ違いラブコメです。 ※ちょっとだけ虫が出てくるので気をつけてください(Gではないです)

顔も知らない旦那さま

ゆうゆう
恋愛
領地で大災害が起きて没落寸前まで追い込まれた伯爵家は一人娘の私を大金持ちの商人に嫁がせる事で存続をはかった。 しかし、嫁いで2年旦那の顔さえ見たことがない 私の結婚相手は一体どんな人?

夫が愛人を離れに囲っているようなので、私も念願の猫様をお迎えいたします

葉柚
恋愛
ユフィリア・マーマレード伯爵令嬢は、婚約者であるルードヴィッヒ・コンフィチュール辺境伯と無事に結婚式を挙げ、コンフィチュール伯爵夫人となったはずであった。 しかし、ユフィリアの夫となったルードヴィッヒはユフィリアと結婚する前から離れの屋敷に愛人を住まわせていたことが使用人たちの口から知らされた。 ルードヴィッヒはユフィリアには目もくれず、離れの屋敷で毎日過ごすばかり。結婚したというのにユフィリアはルードヴィッヒと簡単な挨拶は交わしてもちゃんとした言葉を交わすことはなかった。 ユフィリアは決意するのであった。 ルードヴィッヒが愛人を離れに囲うなら、自分は前々からお迎えしたかった猫様を自室に迎えて愛でると。 だが、ユフィリアの決意をルードヴィッヒに伝えると思いもよらぬ事態に……。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

はずれのわたしで、ごめんなさい。

ふまさ
恋愛
 姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。  婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。  こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。  そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

王宮勤めにも色々ありまして

あとさん♪
恋愛
スカーレット・フォン・ファルケは王太子の婚約者の専属護衛の近衛騎士だ。 そんな彼女の元婚約者が、園遊会で見知らぬ女性に絡んでる·····? おいおい、と思っていたら彼女の護衛対象である公爵令嬢が自らあの馬鹿野郎に近づいて····· 危険です!私の後ろに! ·····あ、あれぇ? ※シャティエル王国シリーズ2作目! ※拙作『相互理解は難しい(略)』の2人が出ます。 ※小説家になろうにも投稿しております。

だから言ったでしょう?

わらびもち
恋愛
ロザリンドの夫は職場で若い女性から手製の菓子を貰っている。 その行為がどれだけ妻を傷つけるのか、そしてどれだけ危険なのかを理解しない夫。 ロザリンドはそんな夫に失望したーーー。

処理中です...