ループ!! 絶望の淵の【替え玉聖女】は三度目の人生をやり直す! 〜わたくしを殺したもふもふの獣帝が今世ではなぜか溺愛してくるのですが!

友坂 悠

文字の大きさ
上 下
21 / 29

ノームの森。

しおりを挟む
 わたくしが撫でるのをやめたせいでなんだか寂しそうな表情を見せるレオン様。
 自分からわたくしの手に頭を擦り付けてくるのまでは拒否できなくて、手を引っ込めることもできずそのままベッド上でしゃがみ込んでいた。
 ゴロゴロ喉を鳴らしながら、まるで猫のような仕草を見せるレオン様にわたくしは子供の頃一時的にお世話をしていた一匹の子猫のことを思い出した。

 色合いもちょうどレオン様と一緒。
 小さくて、とても可愛らしくて。

 メルクマール聖王国の聖都、その北側に位置するノームの森は、神が降臨する場所と、一般には立ち入ることの許されない神聖な森として崇められていた。

 天を覆うほどの高い杉の木が光を遮る。
 一歩踏み入れるとそこは聖なる氣が満ちた清浄な空気がとても心地よく。
 わたくしは一人の時間、ここにくるのがとても好きで。

 神の結界があるせいで魔物も魔獣もここには立ち入ることができない。
 常にそう聞かされていたおかげか、恐怖は感じなかった。
 ただただ心地よい気配と自分の中が満たされるような清浄なマナを感じ、ゆったりと過ごすことのできるその時間が大好きだったのだ。

 わたくしは一回目の人生のそれも幼い頃から、自分の中のマナをうまく外に出すことができなかった。
 お父様や姉様に何度も聖魔法の使い方の指導を受けたけれど、うまくできたためしがなくて。

 父様や姉様に当たり前にできる力のほんの片鱗も、使うことができずにいたのだ。

 そんなわたくしでも、自分の中に清浄なマナが吸い込まれていくこの感覚はとても心地よくて、何度も何度もこのノームの森に足を訪れたものだったのだ。

 二回目の人生が炎に焼かれ終わった後、三回目の人生を迎えたわたくしは。

 今度こそ後悔のしない人生を送りたい。そう思うようになった。

 姉様の身代わりとして獣帝国に赴くのはきっと変えられない。
 その過程で死ぬことがあっても。
 でも、なんの努力もしないでただただ死を待つなんて、そんなの耐えられない。
 そう、思って。

 自分の中にマナがあるのはわかる。感じる。
 それをうまく外に出すことができさえすれば、きっと妖精たちは力を貸してくれるんじゃないだろうか。魔法だって使えるようになるんじゃないだろうか。

 聖なる力、魔法の力というのは概ね自分の中のマナを外に出し、それをこの世界に満遍なく存在する神の子、天使、妖精たちに与えることで力を貸してもらう行為だ。
 このノームの森はそんな妖精たちの棲家でもあるから、きっとわたくしの今の状況を解決するヒントも掴めるかもしれない。
 そんなわずかな希望を胸に、一人で森を訪れた三度目の人生の、それもまだ5歳の幼い子供だった頃。


 わたくしは出会ったのだ。

 金色のもふもふ。小さな子猫に。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

顔も知らない旦那さま

ゆうゆう
恋愛
領地で大災害が起きて没落寸前まで追い込まれた伯爵家は一人娘の私を大金持ちの商人に嫁がせる事で存続をはかった。 しかし、嫁いで2年旦那の顔さえ見たことがない 私の結婚相手は一体どんな人?

私の完璧な婚約者

夏八木アオ
恋愛
完璧な婚約者の隣が息苦しくて、婚約取り消しできないかなぁと思ったことが相手に伝わってしまうすれ違いラブコメです。 ※ちょっとだけ虫が出てくるので気をつけてください(Gではないです)

1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

水川サキ
恋愛
「僕には他に愛する人がいるんだ。だから、君を愛することはできない」 伯爵令嬢アリアは政略結婚で結ばれた侯爵に1年だけでいいから妻のふりをしてほしいと頼まれる。 そのあいだ、何でも好きなものを与えてくれるし、いくらでも贅沢していいと言う。 アリアは喜んでその条件を受け入れる。 たった1年だけど、美味しいものを食べて素敵なドレスや宝石を身につけて、いっぱい楽しいことしちゃおっ! などと気楽に考えていたのに、なぜか侯爵さまが夜の生活を求めてきて……。 いやいや、あなた私のこと好きじゃないですよね? ふりですよね? ふり!! なぜか侯爵さまが離してくれません。 ※設定ゆるゆるご都合主義

夫が愛人を離れに囲っているようなので、私も念願の猫様をお迎えいたします

葉柚
恋愛
ユフィリア・マーマレード伯爵令嬢は、婚約者であるルードヴィッヒ・コンフィチュール辺境伯と無事に結婚式を挙げ、コンフィチュール伯爵夫人となったはずであった。 しかし、ユフィリアの夫となったルードヴィッヒはユフィリアと結婚する前から離れの屋敷に愛人を住まわせていたことが使用人たちの口から知らされた。 ルードヴィッヒはユフィリアには目もくれず、離れの屋敷で毎日過ごすばかり。結婚したというのにユフィリアはルードヴィッヒと簡単な挨拶は交わしてもちゃんとした言葉を交わすことはなかった。 ユフィリアは決意するのであった。 ルードヴィッヒが愛人を離れに囲うなら、自分は前々からお迎えしたかった猫様を自室に迎えて愛でると。 だが、ユフィリアの決意をルードヴィッヒに伝えると思いもよらぬ事態に……。

はずれのわたしで、ごめんなさい。

ふまさ
恋愛
 姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。  婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。  こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。  そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

別れ話をしましょうか。

ふまさ
恋愛
 大好きな婚約者であるアールとのデート。けれど、デージーは楽しめない。そんな心の余裕などない。今日、アールから別れを告げられることを、知っていたから。  お芝居を見て、昼食もすませた。でも、アールはまだ別れ話を口にしない。  ──あなたは優しい。だからきっと、言えないのですね。わたしを哀しませてしまうから。わたしがあなたを愛していることを、知っているから。  でも。その優しさが、いまは辛い。  だからいっそ、わたしから告げてしまおう。 「お別れしましょう、アール様」  デージーの声は、少しだけ、震えていた。  この作品は、小説家になろう様にも掲載しています。

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの
恋愛
 幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。  誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。  数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。  お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。  片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。  お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……  っと言った感じのストーリーです。

処理中です...