ループ!! 絶望の淵の【替え玉聖女】は三度目の人生をやり直す! 〜わたくしを殺したもふもふの獣帝が今世ではなぜか溺愛してくるのですが!

友坂 悠

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身代わり。

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 ザワザワとした声が広がる。
 ホールには立食の用意もされているけれど、誰もそれに手をつける様子もない。
 皆、陛下のお声を待っている。
 そう見えた。

「私は彼女を后に迎える。これは決定事項だ。覆ることはない」

 押し殺したような唸りと共に、そう声を吐き出す陛下。

 グルルル。
 そんな唸り声が会場中に響く。
 ヤギの翁もカメレオンの夫人も無言で跪き首を垂れる。

「うむ。お前たちが国をあんずる気持ちもわかる。しかし、何度も言うがこれは決定事項で覆ることはない。今後このアリスティアに害なすものは皇帝への叛逆であると、そう肝に銘じるがいい」

 唸り声と共にホールの空気が震えている。

 獣帝の唸り、荒々しく震える空気に全ての獣人たちがその場で跪いた。



 ♢ ♢ ♢


 宴。

 というにはあまりにも静かすぎる。

 多くの食事の数々もほとんど手をつけられることもなく。


 皇帝に忠誠を誓うよう跪いた彼らがそれ以上の反論をすることなく、わたくしの歓迎式典という名の会が始まった。

 注がれた酒を持ち三々五々かたまり、話す言葉も小声で過ごしてる。
 まだ何か言いたいことがあるのだろうけれど、それを押し殺し時々横目でわたくしを睨みつけるのが精一杯、といったところか。

 わたくしも。
 望んでここにいるわけではない。
 そうは思うけれど肩身が狭い。

 まあ、姉様にこんな思いをさせずに済んだことだけは幸いか。

 一回目、二回目も、死んだのが姉様で無かったことだけが救いだ。
 死にたくない、こんな人生回避したい、そうは願っていた。
 だけれどそのおかげで姉様が死ぬ運命になるのであれば話は別だ。
 わたくしが姉様の代わりになった、身代わりになって良かった、そんな偽善を言うわけじゃない。
 でも。
 わたくしの代わりに姉様が死んだり悲しい思いをするのだけは耐えられない。

 だから。

 ちゃんと、この運命から逃れる方法を考えないと、いけない。
 そう思う。
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