14 / 29
身代わり。
しおりを挟む
ザワザワとした声が広がる。
ホールには立食の用意もされているけれど、誰もそれに手をつける様子もない。
皆、陛下のお声を待っている。
そう見えた。
「私は彼女を后に迎える。これは決定事項だ。覆ることはない」
押し殺したような唸りと共に、そう声を吐き出す陛下。
グルルル。
そんな唸り声が会場中に響く。
ヤギの翁もカメレオンの夫人も無言で跪き首を垂れる。
「うむ。お前たちが国をあんずる気持ちもわかる。しかし、何度も言うがこれは決定事項で覆ることはない。今後このアリスティアに害なすものは皇帝への叛逆であると、そう肝に銘じるがいい」
唸り声と共にホールの空気が震えている。
獣帝の唸り、荒々しく震える空気に全ての獣人たちがその場で跪いた。
♢ ♢ ♢
宴。
というにはあまりにも静かすぎる。
多くの食事の数々もほとんど手をつけられることもなく。
皇帝に忠誠を誓うよう跪いた彼らがそれ以上の反論をすることなく、わたくしの歓迎式典という名の会が始まった。
注がれた酒を持ち三々五々かたまり、話す言葉も小声で過ごしてる。
まだ何か言いたいことがあるのだろうけれど、それを押し殺し時々横目でわたくしを睨みつけるのが精一杯、といったところか。
わたくしも。
望んでここにいるわけではない。
そうは思うけれど肩身が狭い。
まあ、姉様にこんな思いをさせずに済んだことだけは幸いか。
一回目、二回目も、死んだのが姉様で無かったことだけが救いだ。
死にたくない、こんな人生回避したい、そうは願っていた。
だけれどそのおかげで姉様が死ぬ運命になるのであれば話は別だ。
わたくしが姉様の代わりになった、身代わりになって良かった、そんな偽善を言うわけじゃない。
でも。
わたくしの代わりに姉様が死んだり悲しい思いをするのだけは耐えられない。
だから。
ちゃんと、この運命から逃れる方法を考えないと、いけない。
そう思う。
ホールには立食の用意もされているけれど、誰もそれに手をつける様子もない。
皆、陛下のお声を待っている。
そう見えた。
「私は彼女を后に迎える。これは決定事項だ。覆ることはない」
押し殺したような唸りと共に、そう声を吐き出す陛下。
グルルル。
そんな唸り声が会場中に響く。
ヤギの翁もカメレオンの夫人も無言で跪き首を垂れる。
「うむ。お前たちが国をあんずる気持ちもわかる。しかし、何度も言うがこれは決定事項で覆ることはない。今後このアリスティアに害なすものは皇帝への叛逆であると、そう肝に銘じるがいい」
唸り声と共にホールの空気が震えている。
獣帝の唸り、荒々しく震える空気に全ての獣人たちがその場で跪いた。
♢ ♢ ♢
宴。
というにはあまりにも静かすぎる。
多くの食事の数々もほとんど手をつけられることもなく。
皇帝に忠誠を誓うよう跪いた彼らがそれ以上の反論をすることなく、わたくしの歓迎式典という名の会が始まった。
注がれた酒を持ち三々五々かたまり、話す言葉も小声で過ごしてる。
まだ何か言いたいことがあるのだろうけれど、それを押し殺し時々横目でわたくしを睨みつけるのが精一杯、といったところか。
わたくしも。
望んでここにいるわけではない。
そうは思うけれど肩身が狭い。
まあ、姉様にこんな思いをさせずに済んだことだけは幸いか。
一回目、二回目も、死んだのが姉様で無かったことだけが救いだ。
死にたくない、こんな人生回避したい、そうは願っていた。
だけれどそのおかげで姉様が死ぬ運命になるのであれば話は別だ。
わたくしが姉様の代わりになった、身代わりになって良かった、そんな偽善を言うわけじゃない。
でも。
わたくしの代わりに姉様が死んだり悲しい思いをするのだけは耐えられない。
だから。
ちゃんと、この運命から逃れる方法を考えないと、いけない。
そう思う。
1
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

顔も知らない旦那さま
ゆうゆう
恋愛
領地で大災害が起きて没落寸前まで追い込まれた伯爵家は一人娘の私を大金持ちの商人に嫁がせる事で存続をはかった。
しかし、嫁いで2年旦那の顔さえ見たことがない
私の結婚相手は一体どんな人?

私の完璧な婚約者
夏八木アオ
恋愛
完璧な婚約者の隣が息苦しくて、婚約取り消しできないかなぁと思ったことが相手に伝わってしまうすれ違いラブコメです。
※ちょっとだけ虫が出てくるので気をつけてください(Gではないです)


夫が愛人を離れに囲っているようなので、私も念願の猫様をお迎えいたします
葉柚
恋愛
ユフィリア・マーマレード伯爵令嬢は、婚約者であるルードヴィッヒ・コンフィチュール辺境伯と無事に結婚式を挙げ、コンフィチュール伯爵夫人となったはずであった。
しかし、ユフィリアの夫となったルードヴィッヒはユフィリアと結婚する前から離れの屋敷に愛人を住まわせていたことが使用人たちの口から知らされた。
ルードヴィッヒはユフィリアには目もくれず、離れの屋敷で毎日過ごすばかり。結婚したというのにユフィリアはルードヴィッヒと簡単な挨拶は交わしてもちゃんとした言葉を交わすことはなかった。
ユフィリアは決意するのであった。
ルードヴィッヒが愛人を離れに囲うなら、自分は前々からお迎えしたかった猫様を自室に迎えて愛でると。
だが、ユフィリアの決意をルードヴィッヒに伝えると思いもよらぬ事態に……。

はずれのわたしで、ごめんなさい。
ふまさ
恋愛
姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。
婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。
こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。
そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

別れ話をしましょうか。
ふまさ
恋愛
大好きな婚約者であるアールとのデート。けれど、デージーは楽しめない。そんな心の余裕などない。今日、アールから別れを告げられることを、知っていたから。
お芝居を見て、昼食もすませた。でも、アールはまだ別れ話を口にしない。
──あなたは優しい。だからきっと、言えないのですね。わたしを哀しませてしまうから。わたしがあなたを愛していることを、知っているから。
でも。その優しさが、いまは辛い。
だからいっそ、わたしから告げてしまおう。
「お別れしましょう、アール様」
デージーの声は、少しだけ、震えていた。
この作品は、小説家になろう様にも掲載しています。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる