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逃げ出す勇気。
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二回目の人生でわたくしを殺したのはレイテ国の人達だ。祠まで案内してくれたのも、逃げ出そうとしたわたくしを捕らえて櫓に上げたのも。
ワーグマン子爵はその場にいたかどうかはもう記憶にないけど、彼の指図であるのだろうというのは疑いようがなかった。
そういう意味でも、今回こうして普通に帝国まで来れたのは奇跡に等しいとさえ思っている。
前回と、今回。
一体何が違うんだろう。
違うこと、なんて、今回が前回前々回よりも一週間早い、それだけなのに。
ピカピカスベスベに磨かれたわたくしは、そのままお顔にたっぷりとお化粧を施され、赤い薔薇のドレスに身を包んだ。
そしてドレスに合わせた綺麗な赤い靴に足を通して廊下にでた。廊下に敷き詰められた真っ赤な絨毯の中に溶けてしまいそうになる感覚を味わいながら、わたくしはミーアのエスコートでゆっくりと歩いていく。
この宮殿の廊下は人の基準から考えるとかなり広く、天井も高くとってある。
きっと、獣族の中には体の大きい人がいるんだろうなぁと漠然と考えるけど、ここまで出会った方たちは皆なんとか人のサイズに収まっていたような気がするなぁと、そんな疑問も浮かぶ。
ふっと、最初に見た獣帝、皇帝陛下の巨大な姿がフラッシュバックした。
(ああ……)
そうか、彼らは人型になっている時は一般的な人のサイズになっているだけなのか。
そう思い立った。
考えてみればそれが自然だ。
猫獣人にしても、ねずみ獣人にしても、大きいサイズの獣人にしても、一緒に生活するのなら同じ家具を共有した方が暮らしやすいのだろう。
その基準が人類の残した家具のサイズにマッチするとしても、なんらおかしい話ではないのかもしれないな。そんなふうに納得して。
これから向かうのはこの宮殿で一番大きい大ホールとのことだった。
わたくしの歓迎会、だって話だったけれど。
もう、どんな顔をしていいのかわからなくなっていた。
わたくしは所詮替え玉なのに。
身代わりの偽物なのに。
どんどん気分が落ちていく。
多分、今のわたくしはすごく情けない表情をしているんだろうな。
せっかくのお化粧も台無しになるくらい……。
胸が苦しくなる。
このままどこかに逃げ出したくて。
でも、歩くのは止められなかった。
何もかも捨てて逃げ出す勇気も今のわたくしにはもう無かったから。
ワーグマン子爵はその場にいたかどうかはもう記憶にないけど、彼の指図であるのだろうというのは疑いようがなかった。
そういう意味でも、今回こうして普通に帝国まで来れたのは奇跡に等しいとさえ思っている。
前回と、今回。
一体何が違うんだろう。
違うこと、なんて、今回が前回前々回よりも一週間早い、それだけなのに。
ピカピカスベスベに磨かれたわたくしは、そのままお顔にたっぷりとお化粧を施され、赤い薔薇のドレスに身を包んだ。
そしてドレスに合わせた綺麗な赤い靴に足を通して廊下にでた。廊下に敷き詰められた真っ赤な絨毯の中に溶けてしまいそうになる感覚を味わいながら、わたくしはミーアのエスコートでゆっくりと歩いていく。
この宮殿の廊下は人の基準から考えるとかなり広く、天井も高くとってある。
きっと、獣族の中には体の大きい人がいるんだろうなぁと漠然と考えるけど、ここまで出会った方たちは皆なんとか人のサイズに収まっていたような気がするなぁと、そんな疑問も浮かぶ。
ふっと、最初に見た獣帝、皇帝陛下の巨大な姿がフラッシュバックした。
(ああ……)
そうか、彼らは人型になっている時は一般的な人のサイズになっているだけなのか。
そう思い立った。
考えてみればそれが自然だ。
猫獣人にしても、ねずみ獣人にしても、大きいサイズの獣人にしても、一緒に生活するのなら同じ家具を共有した方が暮らしやすいのだろう。
その基準が人類の残した家具のサイズにマッチするとしても、なんらおかしい話ではないのかもしれないな。そんなふうに納得して。
これから向かうのはこの宮殿で一番大きい大ホールとのことだった。
わたくしの歓迎会、だって話だったけれど。
もう、どんな顔をしていいのかわからなくなっていた。
わたくしは所詮替え玉なのに。
身代わりの偽物なのに。
どんどん気分が落ちていく。
多分、今のわたくしはすごく情けない表情をしているんだろうな。
せっかくのお化粧も台無しになるくらい……。
胸が苦しくなる。
このままどこかに逃げ出したくて。
でも、歩くのは止められなかった。
何もかも捨てて逃げ出す勇気も今のわたくしにはもう無かったから。
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