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侍女。
しおりを挟む最初に死んだ時のことを思い出していたらそのまま寝てしまったらしい。
「最初に死んだ」っていうとすごく物騒だけれど、わたくしのこの今の人生は三回目。
同じ自分をやり直している。
どうしてこんなことになっているのかはもう一つよくわからないけれど、どうせやり直しているのなら、絶対に破滅を回避したい。
諦めるなんて、いやだ。
この今の人生は、最初の人生ともその次の人生とも違っている。
だったら、だったら、本当に今度こそ。
死の運命から逃れたい。
17歳の誕生日よりも、もっと先まで生きたい。
そう願ってやまない。
「おはようございます奥様」
わたくしの寝起きを音で察知したのか、扉の外で待機していたらしい侍女のミーアが寝室の扉を開けた。
「おはよう。ミーア。お願いがあるんだけど聞いてもらえる?」
「ええ、なんでしょう奥様」
わたくしはちょっとだけ、言葉を選んで。
「あのね、お部屋に入るときはできたらノックで知らせて欲しいの。だめかしら?」
「ノックをすれば入ってもよろしいのです? でしたらノックをいたします」
「ノックの音がしたら、わたくしにも心の準備ができますし、それに、入ってほしくない状況の時は『待って』と言うこともできますから」
「奥様付きの私はいついかなる時も奥様のおそばに控えているのがお仕事なのです。待てと言われても待つわけにもいきません」
「でも」
「でも、は、ありません。私は陛下から、奥様からかたときも離れるなと厳命を受けておりますから」
自由は、ないのね。
わたくしは結局皇帝陛下の所有物なのかもしれない。
この子に四六時中監視させているのかな。
でも。
「わかったわ。忘れてちょうだい」
「奥様?」
頭の上の耳がへにょんとたれ、しっぽも後ろにすとんと垂れて。
なんだかちょっと悲しそうにも見えるけど、しょうがない。
なんだかわたくしが意地悪したみたいに見えるのが腑に落ちないけれど。
この子に悪気があるわけじゃ、ないのよね。
「奥様。朝食の準備が整いました。さあこちらに」
朝の身支度を終えるとそう声をかけられた。
朝食の場に皇帝陛下はいらっしゃるのかしら?
窓の外は青い空が広がっていた。雲一つ視界には入らない。
もし朝食の場に皇帝陛下がいたのなら、今度こそ聞いてみたいことがある。
昨夜は何も声に出せなかったから。
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