16 / 37
16 女嫌いを治すため。
しおりを挟む
ジーク様の女嫌いを治すため。
頭の中でその言葉がぐるぐると回る。
そうなのだ。侯爵様が望んでいるのはそういう事なのだ。
と、そう言葉として実感できたエーリカ。
そうだ。それが自分がここにいるための役割。
エーリカが妻として好かれるためじゃ無い。
そう、自分の心の奥に言い含める。
彼に嫌われているのはしょうがない、当たり前の事なのに。
何を期待してしまたんだろう。侯爵家の皆が良い人ばっかりなおかげでなんとなく今の生活が心地よく感じてしまい、このままずっとこんな生活が続くのだと勘違いをしてしまっていた。
そんなのは違う。
そんなのはダメ。
そんなの、今のメイド作戦がバレたらよけいに嫌われるに決まっている。
この間もそう考えたはずだったのに。と、そう自省して。
ランベルト子爵の話を聞き何故か落ち込んでしまっていた心を落ち着ける。
すっかり時間が経ってしまった。
運んでいたのが温かいスープではなしに冷製スープだったことを思い出して、安堵する。
もともと、何時にお召し上がり頂けるかわからなかったから、敢えて冷製スープにしたのだった。
冷めたスープよりも、最初から冷たい喉ごしを味わっていただけるそんな冷やしたカボチャのスープ。
お熱があるときにはきっとそちらの方が美味しくいただいてもらえる。そう思ったから。
気持ちを整えてお部屋をノックする。
「若様、朝食をおもちいたしました」
そう声をかけ、扉を開けようとしたときだった。
「ああ、エリカ。ありがとう」
お部屋の中からそんなジークの声がした。
(ジーク様が声をかけてくれた?)
(ううん、きっと身体が弱っていらっしゃるから弱気になってらっしゃるのかも)
そんなふうに、信じられない思いを隠して扉を開ける。
「おはようございます若様。今朝はカボチャの冷製スープですよ。精がつきますからいっぱい召し上がってくださいね」
明るめの声でそう云いながベッドの脇までワゴンをつける。
これならベッドに腰掛けるだけでお食事ができるから。
横になっていたジークが身体を起こすのを支えながら、ベッドに座るのを手伝って。
身体に触れた感じだとほんとう熱は下がっている様子。
枕元には水差しとお薬が置いてある。
(ランベルト子爵様はお食事の後でこれを飲ませるようと仰っていたっけ)
そう頭のすみにおいておいて、ジークの目の前、ワゴンの上に朝食を並べ整えていく。
「どうぞお召し上がりくださいませ。美味しいですよ」
そう満面の笑みで勧めると、ジーク、一瞬恥ずかしそうな表情をみせて「いただきます」と声にしスプーンを手に取った。
頭の中でその言葉がぐるぐると回る。
そうなのだ。侯爵様が望んでいるのはそういう事なのだ。
と、そう言葉として実感できたエーリカ。
そうだ。それが自分がここにいるための役割。
エーリカが妻として好かれるためじゃ無い。
そう、自分の心の奥に言い含める。
彼に嫌われているのはしょうがない、当たり前の事なのに。
何を期待してしまたんだろう。侯爵家の皆が良い人ばっかりなおかげでなんとなく今の生活が心地よく感じてしまい、このままずっとこんな生活が続くのだと勘違いをしてしまっていた。
そんなのは違う。
そんなのはダメ。
そんなの、今のメイド作戦がバレたらよけいに嫌われるに決まっている。
この間もそう考えたはずだったのに。と、そう自省して。
ランベルト子爵の話を聞き何故か落ち込んでしまっていた心を落ち着ける。
すっかり時間が経ってしまった。
運んでいたのが温かいスープではなしに冷製スープだったことを思い出して、安堵する。
もともと、何時にお召し上がり頂けるかわからなかったから、敢えて冷製スープにしたのだった。
冷めたスープよりも、最初から冷たい喉ごしを味わっていただけるそんな冷やしたカボチャのスープ。
お熱があるときにはきっとそちらの方が美味しくいただいてもらえる。そう思ったから。
気持ちを整えてお部屋をノックする。
「若様、朝食をおもちいたしました」
そう声をかけ、扉を開けようとしたときだった。
「ああ、エリカ。ありがとう」
お部屋の中からそんなジークの声がした。
(ジーク様が声をかけてくれた?)
(ううん、きっと身体が弱っていらっしゃるから弱気になってらっしゃるのかも)
そんなふうに、信じられない思いを隠して扉を開ける。
「おはようございます若様。今朝はカボチャの冷製スープですよ。精がつきますからいっぱい召し上がってくださいね」
明るめの声でそう云いながベッドの脇までワゴンをつける。
これならベッドに腰掛けるだけでお食事ができるから。
横になっていたジークが身体を起こすのを支えながら、ベッドに座るのを手伝って。
身体に触れた感じだとほんとう熱は下がっている様子。
枕元には水差しとお薬が置いてある。
(ランベルト子爵様はお食事の後でこれを飲ませるようと仰っていたっけ)
そう頭のすみにおいておいて、ジークの目の前、ワゴンの上に朝食を並べ整えていく。
「どうぞお召し上がりくださいませ。美味しいですよ」
そう満面の笑みで勧めると、ジーク、一瞬恥ずかしそうな表情をみせて「いただきます」と声にしスプーンを手に取った。
10
お気に入りに追加
662
あなたにおすすめの小説

公爵家の赤髪の美姫は隣国王子に溺愛される
佐倉ミズキ
恋愛
レスカルト公爵家の愛人だった母が亡くなり、ミアは二年前にこの家に引き取られて令嬢として過ごすことに。
異母姉、サラサには毎日のように嫌味を言われ、義母には存在などしないかのように無視され過ごしていた。
誰にも愛されず、独りぼっちだったミアは学校の敷地にある湖で過ごすことが唯一の癒しだった。
ある日、その湖に一人の男性クラウが現れる。
隣にある男子学校から生垣を抜けてきたというクラウは隣国からの留学生だった。
初めは警戒していたミアだが、いつしかクラウと意気投合する。クラウはミアの事情を知っても優しかった。ミアもそんなクラウにほのかに思いを寄せる。
しかし、クラウは国へ帰る事となり…。
「学校を卒業したら、隣国の俺を頼ってきてほしい」
「わかりました」
けれど卒業後、ミアが向かったのは……。
※ベリーズカフェにも掲載中(こちらの加筆修正版)

【完結】恋を失くした伯爵令息に、赤い糸を結んで
白雨 音
恋愛
伯爵令嬢のシュゼットは、舞踏会で初恋の人リアムと再会する。
ずっと会いたかった人…心躍らせるも、抱える秘密により、名乗り出る事は出来無かった。
程なくして、彼に美しい婚約者がいる事を知り、諦めようとするが…
思わぬ事に、彼の婚約者の座が転がり込んで来た。
喜ぶシュゼットとは反対に、彼の心は元婚約者にあった___
※視点:シュゼットのみ一人称(表記の無いものはシュゼット視点です)
異世界、架空の国(※魔法要素はありません)《完結しました》

【完結】白い結婚はあなたへの導き
白雨 音
恋愛
妹ルイーズに縁談が来たが、それは妹の望みでは無かった。
彼女は姉アリスの婚約者、フィリップと想い合っていると告白する。
何も知らずにいたアリスは酷くショックを受ける。
先方が承諾した事で、アリスの気持ちは置き去りに、婚約者を入れ換えられる事になってしまった。
悲しみに沈むアリスに、夫となる伯爵は告げた、「これは白い結婚だ」と。
運命は回り始めた、アリスが辿り着く先とは… ◇異世界:短編16話《完結しました》

【完結】伯爵の愛は狂い咲く
白雨 音
恋愛
十八歳になったアリシアは、兄の友人男爵子息のエリックに告白され、婚約した。
実家の商家を手伝い、友人にも恵まれ、アリシアの人生は充実し、順風満帆だった。
だが、町のカーニバルの夜、それを脅かす出来事が起こった。
仮面の男が「見つけた、エリーズ!」と、アリシアに熱く口付けたのだ!
そこから、アリシアの運命の歯車は狂い始めていく。
両親からエリックとの婚約を解消し、年の離れた伯爵に嫁ぐ様に勧められてしまう。
「結婚は愛した人とします!」と抗うアリシアだが、運命は彼女を嘲笑い、
その渦に巻き込んでいくのだった…
アリシアを恋人の生まれ変わりと信じる伯爵の執愛。
異世界恋愛、短編:本編(アリシア視点)前日譚(ユーグ視点)
《完結しました》

あなたが幸せになるために
月山 歩
恋愛
幼馴染の二人は、お互いに好きだが、王子と平民のため身分差により結婚できない。王子の結婚が迫ると、オーレリアは大好きな王子が、自分のために不貞を働く姿も見たくないから、最後に二人で食事を共にすると姿を消した。

【完結】地味令嬢の願いが叶う刻
白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。
幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。
家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、
いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。
ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。
庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。
レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。
だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。
喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…
異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

貴族の爵位って面倒ね。
しゃーりん
恋愛
ホリーは公爵令嬢だった母と男爵令息だった父との間に生まれた男爵令嬢。
両親はとても仲が良くて弟も可愛くて、とても幸せだった。
だけど、母の運命を変えた学園に入学する歳になって……
覚悟してたけど、男爵令嬢って私だけじゃないのにどうして?
理不尽な嫌がらせに助けてくれる人もいないの?
ホリーが嫌がらせされる原因は母の元婚約者の息子の指示で…
嫌がらせがきっかけで自国の貴族との縁が難しくなったホリーが隣国の貴族と幸せになるお話です。

忘れられた薔薇が咲くとき
ゆる
恋愛
貴族として華やかな未来を約束されていた伯爵令嬢アルタリア。しかし、突然の婚約破棄と追放により、その人生は一変する。全てを失い、辺境の町で庶民として生きることを余儀なくされた彼女は、過去の屈辱と向き合いながらも、懸命に新たな生活を築いていく。
だが、平穏は長く続かない。かつて彼女を追放した第二王子や聖女が町を訪れ、過去の因縁が再び彼女を取り巻く。利用されるだけの存在から、自らの意志で運命を切り開こうとするアルタリア。彼女が選ぶ未来とは――。
これは、追放された元伯爵令嬢が自由と幸せを掴むまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる