上 下
84 / 86

マシン=マスター アフター・ワールド。

しおりを挟む
 どこまでも続く黄色い砂、ときおり見える赤茶けた岩と、茶色い、ほとんど涸れているのではと思わせる木々、それが、ボクらがここ数日見るもののすべてだった。


 大地は荒れ果て砂漠化が進み、人々はこの星で細々と暮らすのみ。


 そんな中、現在向かっているのはマハリ・アジャンが行くと言っていたオアシスだった。

 西へ西へと逝く道中、おおよそ生き物の姿も見えず、用意してきた食料ももう少しで底をつく。

 幸い、雨を降らせることによって飲み水に困ることが無かったのが救い。

 その日も。

 太陽はもう頭の上まできて焼け付くような日差し。

 ジリジリと痛いぐらいに照りつける日差しにもう塩になってしまった汗で目が霞み前を見ることも辛くなっていた。

 そのとき、

「ラギ! 緑だ! 緑がみえる!」

 ジルが叫んだ。かすれた声を、しかし喜びのためか力一杯振り絞って。

 ぼくらはは喜びのあまり駆け出していた。

 もしかしたら蜃気楼かも知れないという不安が心の隅をかすったが、それでもためらわず走った。

 マハリのキャンプ。目的地であればいいな。

 そんな風に思いながら。



 ☆☆☆


 結局ハズレだった。

 ここは人が集団で住むには少し小さすぎる。




 と、いうか、この星には人が住める場所が少なすぎる。

 パウロに帰るべきか?

 この際だ。マハリ達にパウロに住んでもらう方が良いのでは?

 そうも思うのだ。


 マザーは言った。

「過去人類は、その自我が原因で大きな過ちを犯した。今また人々は争いをやめようとはしない」

「ふたたびあのような悲劇を招くことのないよう、人は管理されなくてはならない」

「そして人々はその自我をマザーに預けることによってのみ、この地に永久に幸せな楽園を築くことができるのだ」

「すべての者が、マザーを信じ、その恩恵を受け自我を持たずマザーに管理されることによってのみ」


「我は、マザーは、人類に、真の幸福をもたらそうとしているのだ」

「その自我をなくすことによって」

「マザーのもとで、人は、飢餓も病気もなく憎しみの心も持たず、心やすらかに暮らしてゆける」

「人はみな、平等に、生きる幸せを享受して、一生を終えることができる」

「すべての、肉体的、精神的苦痛からも、解放される」

「これを、楽園と呼ばずして、何と呼べと言うのか」


 と。


 確かにそれは人類という種がこの先も存続するための解なのかもしれない。


 でも。

 ボク、は、いやだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン… 紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢 座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!! もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。 全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。 作者は極度のとうふメンタルとなっております…

転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~

丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。 一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。 それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。 ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。 ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。 もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは…… これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

《完結》転生令嬢の甘い?異世界スローライフ ~神の遣いのもふもふを添えて~

芽生 (メイ)
ファンタジー
ガタガタと揺れる馬車の中、天海ハルは目を覚ます。 案ずるメイドに頭の中の記憶を頼りに会話を続けるハルだが 思うのはただ一つ 「これが異世界転生ならば詰んでいるのでは?」 そう、ハルが転生したエレノア・コールマンは既に断罪後だったのだ。 エレノアが向かう先は正道院、膨大な魔力があるにもかかわらず 攻撃魔法は封じられたエレノアが使えるのは生活魔法のみ。 そんなエレノアだが、正道院に来てあることに気付く。 自給自足で野菜やハーブ、畑を耕し、限られた人々と接する これは異世界におけるスローライフが出来る? 希望を抱き始めたエレノアに突然現れたのはふわふわもふもふの狐。 だが、メイドが言うにはこれは神の使い、聖女の証? もふもふと共に過ごすエレノアのお菓子作りと異世界スローライフ! ※場所が正道院で女性中心のお話です ※小説家になろう! カクヨムにも掲載中

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

彼女の幸福

豆狸
恋愛
私の首は体に繋がっています。今は、まだ。

収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~

SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。 物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。 4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。 そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。 現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。 異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。 けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて…… お読みいただきありがとうございます。 のんびり不定期更新です。

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

処理中です...