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後継問題。
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「ではあの令嬢の正体は不明だと、そういうのか?」
「はい殿下。ただ、彼女を見たものの話ではサンドリヲン男爵家ゆかりの令嬢ではないかと」
「サンドリヲン男爵家といえば確か」
「先代のガイウス男爵には娘のフローリア嬢しかいなかったため、現在の男爵は士爵家四男であった婿が務めておりますが、男爵家の血を引く令嬢が一人居るはずですね」
「うむ。その娘は身体が弱いからと例外で後継に養子を認めてほしいと男爵から要望があったと聞いていたが」
「殿下の側室にと男爵の娘を差し出して参りましたが、そのものたちはどうやら後妻の連れ子のようでした」
「くだらない。私は血筋でどうこうというつもりはないが、今から側室の話などと」
「はは。殿下は潔癖でございますからなぁ。まずはお妃様をお見つけになるのが先でございますね」
その言葉に少し顔を赤らめるヴァイオレットであったが、すぐに気を取り直し侍従長ライフェンに向き直る。
「で、彼女がそのサンドリヲン男爵家の令嬢である可能性があると、ライフェンはそう思うのだな?」
「そういうことになりましょう。まずは男爵を召して問いただしてみることをお勧めいたします」
ヴァイオレットは手にしたクリスタルのヒールを大事そうに持って。
侍従長のその提案に頷いたのだった。
###########################################
その日は朝から慌ただしかった。
王城からの急なお召し。
それもあたしを名指しでお召しになられるというお触れを伝えに着た使者。
男爵家の後継問題である。とそう宣言するその使者に、お父様は頭を抱えたのちあたしに準備をするよう言った。
お義母様やお義姉様は特に呼ばれていなかったけど、自分たちもいかなければとお父様に詰め寄って。
結局全員で登城することに。
あたしといえば。
とりあえず屋根裏の衣装箱を漁りお母様の遺品の衣装のなかからなんとかまだ着られる体のドレスを見繕い。
大急ぎで埃を払い干して。
お義姉様方の着付けを手伝い髪ゆいを手伝い。
馬車の手配をして。
それでもって自分の顔をなんとか作り髪を結ってお母様のドレスに身を包んだ。
パーティー用ではないシックなデザインのものだったけど、薄いブルーのそれは先日の綺麗に装ったあたしを彷彿とさせる出来で。
なんとか男爵家の一員として恥ずかしくないくらいにはなったと思うそんな状態にはなった。
馬車の中で。
「お前は何を言われてもはいとだけ答えるのだぞ。余計なことは言わなくてもいいからな」
「あなたは貴族としての教育も教養もないのだから、ボロが出ないよう口は閉ざしていなさいね」
「灰かぶりのままだとみっともないから今日は許すけど、そんな格好させるのは今だけだからね。明日からはまた灰かぶりに戻るのよ!」
そう皆に念を押された。
あたしは自分の心を押し殺し。
ただただ時間の過ぎるのを待った。
王城でもそうしていれば、いい。
そういうことだ。と。
「はい殿下。ただ、彼女を見たものの話ではサンドリヲン男爵家ゆかりの令嬢ではないかと」
「サンドリヲン男爵家といえば確か」
「先代のガイウス男爵には娘のフローリア嬢しかいなかったため、現在の男爵は士爵家四男であった婿が務めておりますが、男爵家の血を引く令嬢が一人居るはずですね」
「うむ。その娘は身体が弱いからと例外で後継に養子を認めてほしいと男爵から要望があったと聞いていたが」
「殿下の側室にと男爵の娘を差し出して参りましたが、そのものたちはどうやら後妻の連れ子のようでした」
「くだらない。私は血筋でどうこうというつもりはないが、今から側室の話などと」
「はは。殿下は潔癖でございますからなぁ。まずはお妃様をお見つけになるのが先でございますね」
その言葉に少し顔を赤らめるヴァイオレットであったが、すぐに気を取り直し侍従長ライフェンに向き直る。
「で、彼女がそのサンドリヲン男爵家の令嬢である可能性があると、ライフェンはそう思うのだな?」
「そういうことになりましょう。まずは男爵を召して問いただしてみることをお勧めいたします」
ヴァイオレットは手にしたクリスタルのヒールを大事そうに持って。
侍従長のその提案に頷いたのだった。
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その日は朝から慌ただしかった。
王城からの急なお召し。
それもあたしを名指しでお召しになられるというお触れを伝えに着た使者。
男爵家の後継問題である。とそう宣言するその使者に、お父様は頭を抱えたのちあたしに準備をするよう言った。
お義母様やお義姉様は特に呼ばれていなかったけど、自分たちもいかなければとお父様に詰め寄って。
結局全員で登城することに。
あたしといえば。
とりあえず屋根裏の衣装箱を漁りお母様の遺品の衣装のなかからなんとかまだ着られる体のドレスを見繕い。
大急ぎで埃を払い干して。
お義姉様方の着付けを手伝い髪ゆいを手伝い。
馬車の手配をして。
それでもって自分の顔をなんとか作り髪を結ってお母様のドレスに身を包んだ。
パーティー用ではないシックなデザインのものだったけど、薄いブルーのそれは先日の綺麗に装ったあたしを彷彿とさせる出来で。
なんとか男爵家の一員として恥ずかしくないくらいにはなったと思うそんな状態にはなった。
馬車の中で。
「お前は何を言われてもはいとだけ答えるのだぞ。余計なことは言わなくてもいいからな」
「あなたは貴族としての教育も教養もないのだから、ボロが出ないよう口は閉ざしていなさいね」
「灰かぶりのままだとみっともないから今日は許すけど、そんな格好させるのは今だけだからね。明日からはまた灰かぶりに戻るのよ!」
そう皆に念を押された。
あたしは自分の心を押し殺し。
ただただ時間の過ぎるのを待った。
王城でもそうしていれば、いい。
そういうことだ。と。
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