4 / 7
クリスタルに輝く。
しおりを挟む
真っ白な世界。
明るい? ううん、これはただただ白いだけで明るい光ではない?
そんな場所にふわふわと漂っていたあたし。
「ああ、気がついたのかい?」
そう優しい声が降り注ぐ。
っと、誰?
もう周りが真っ白すぎて何もわからなくなってる。
「はは。そう怯えなくても大丈夫。あたしゃ、エレベカ。白銀の魔女さ」
はい?
エレベカってさっきのお話の?
「まあ、そうさね? あんたの魔力によって本の中から出てこれたのだもの」
じゃぁ。お話の中に出てきた魔女エレベカさんで間違いないの?
「そうだよ。魔法陣によってあの本に封じ込められてしまっていたんだけどね。やっと出られたよ。あんたには何かお礼をしなくちゃって思ってね」
お礼って。ううん、っていうかここはどこです? 真っ白で何が何だか分からなくて。
「ここは、あんたの心の中さ。ほら、あの中心にほんのり熱が見えないかい? あんたが一生懸命灰をかけて隠そうとした心の熱さね」
ああ。あれは。わかる。
真っ白な中に、真っ白な灰の山が出来ていた。
その中に埋まっていたのはあたしの感情。真っ赤に燃えそうになって、ダメだと思って一生懸命に埋めたあたしの心。
「そうしんみりしなさんな。人は誰でもちゃん感情っていうものを持っているものだよ。それは悪いことじゃない。あんたはちゃんとそれを暴走させずにコントロールできる理性の鍵を持ってるからね。感情の中には嬉しいとか悲しいとか色々あるけれど、そんな感情もあんた自身でちゃんと育ててやらないとね」
ええ、でも。
あたしには何もないんです……。
生きて行けるだけでありがたいんだって、そう思わなくちゃって。
「バカだね。まあいい。これはあんたへのお礼のご褒美だ」
魔女エレベカは魔法の呪文を唱えた。
あたしには聞き取れなかったその呪文の詠唱が終わった時。
あたしが立っていたのは屋根裏の、あの埃まるけのあの場所で。
でも。
あたしの容姿は綺麗に磨かれ化粧も施され。
あたしの瞳の色とおそろいな綺麗なブルーのドレスを身に纏って。
あたしの髪はお母様譲りの金色のふわふわの髪だったけど、それも綺麗に整えられ。
額には白銀のティアラが嵌った。
真っ白な光沢のある手袋は薔薇の刺繍が施され。
足元はクリスタルに輝くハイヒール。
驚いて何も言えないでいると空中からまたエレベカの声がした。
「ほら、右手を前に出してご覧」
言われるままに手を伸ばすあたし。
そこにはぼんやりと別の空間が広がる。
「魔法で城のパーティー会場と空間を繋げてあげたよ。さあ一歩踏み出してごらんな。自分の幸せは自分で掴み取るがいいさ」
その声に。
あたしは一歩踏み出した。
ふわんと空気が変わるのがわかる。
次元の膜のようなものを一瞬で通り抜けるとそこは煌々とシャンデリアの灯りがともる大広間だった。
「必ず深夜零時の鐘が鳴るまでに戻っておいで。そうでなけれな魔法は全て解けてしまうよ」
あの本にあったあの場面のように、そんな声が聞こえた気がした。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
明るい? ううん、これはただただ白いだけで明るい光ではない?
そんな場所にふわふわと漂っていたあたし。
「ああ、気がついたのかい?」
そう優しい声が降り注ぐ。
っと、誰?
もう周りが真っ白すぎて何もわからなくなってる。
「はは。そう怯えなくても大丈夫。あたしゃ、エレベカ。白銀の魔女さ」
はい?
エレベカってさっきのお話の?
「まあ、そうさね? あんたの魔力によって本の中から出てこれたのだもの」
じゃぁ。お話の中に出てきた魔女エレベカさんで間違いないの?
「そうだよ。魔法陣によってあの本に封じ込められてしまっていたんだけどね。やっと出られたよ。あんたには何かお礼をしなくちゃって思ってね」
お礼って。ううん、っていうかここはどこです? 真っ白で何が何だか分からなくて。
「ここは、あんたの心の中さ。ほら、あの中心にほんのり熱が見えないかい? あんたが一生懸命灰をかけて隠そうとした心の熱さね」
ああ。あれは。わかる。
真っ白な中に、真っ白な灰の山が出来ていた。
その中に埋まっていたのはあたしの感情。真っ赤に燃えそうになって、ダメだと思って一生懸命に埋めたあたしの心。
「そうしんみりしなさんな。人は誰でもちゃん感情っていうものを持っているものだよ。それは悪いことじゃない。あんたはちゃんとそれを暴走させずにコントロールできる理性の鍵を持ってるからね。感情の中には嬉しいとか悲しいとか色々あるけれど、そんな感情もあんた自身でちゃんと育ててやらないとね」
ええ、でも。
あたしには何もないんです……。
生きて行けるだけでありがたいんだって、そう思わなくちゃって。
「バカだね。まあいい。これはあんたへのお礼のご褒美だ」
魔女エレベカは魔法の呪文を唱えた。
あたしには聞き取れなかったその呪文の詠唱が終わった時。
あたしが立っていたのは屋根裏の、あの埃まるけのあの場所で。
でも。
あたしの容姿は綺麗に磨かれ化粧も施され。
あたしの瞳の色とおそろいな綺麗なブルーのドレスを身に纏って。
あたしの髪はお母様譲りの金色のふわふわの髪だったけど、それも綺麗に整えられ。
額には白銀のティアラが嵌った。
真っ白な光沢のある手袋は薔薇の刺繍が施され。
足元はクリスタルに輝くハイヒール。
驚いて何も言えないでいると空中からまたエレベカの声がした。
「ほら、右手を前に出してご覧」
言われるままに手を伸ばすあたし。
そこにはぼんやりと別の空間が広がる。
「魔法で城のパーティー会場と空間を繋げてあげたよ。さあ一歩踏み出してごらんな。自分の幸せは自分で掴み取るがいいさ」
その声に。
あたしは一歩踏み出した。
ふわんと空気が変わるのがわかる。
次元の膜のようなものを一瞬で通り抜けるとそこは煌々とシャンデリアの灯りがともる大広間だった。
「必ず深夜零時の鐘が鳴るまでに戻っておいで。そうでなけれな魔法は全て解けてしまうよ」
あの本にあったあの場面のように、そんな声が聞こえた気がした。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
2
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説

白薔薇侯爵夫人の白すぎる結婚生活
天堂 サーモン
恋愛
色彩を忌避し、白を愛する白薔薇侯爵ヴィクターと結婚した自由奔放なエレノア。
エレノアは大理石の彫刻のように美しい彼と結婚すれば薔薇色の結婚生活が送れるだろうと考えていた。しかしその期待はあっさり裏切られる。
結婚して訪れた屋敷は壁、床、天井全てが白! 挙げ句の果てには食事まで真っ白! 見るもの全てが白すぎてエレノアは思わず絶句。しかし、彼の色彩嫌いの裏に隠されたトラウマを知ったエレノアは、色彩の素晴らしさを思い出してもらうため奮闘するようになる。
果たしてエレノアは薔薇色の結婚生活を手にすることができるのか?

【完結】貧乏子爵令嬢は、王子のフェロモンに靡かない。
櫻野くるみ
恋愛
王太子フェルゼンは悩んでいた。
生まれつきのフェロモンと美しい容姿のせいで、みんな失神してしまうのだ。
このままでは結婚相手など見つかるはずもないと落ち込み、なかば諦めかけていたところ、自分のフェロモンが全く効かない令嬢に出会う。
運命の相手だと執着する王子と、社交界に興味の無い、フェロモンに鈍感な貧乏子爵令嬢の恋のお話です。
ゆるい話ですので、軽い気持ちでお読み下さいませ。

【完結】いわくつき氷の貴公子は妻を愛せない?
白雨 音
恋愛
婚約間近だった彼を親友に取られ、傷心していた男爵令嬢アリエルに、
新たな縁談が持ち上がった。
相手は伯爵子息のイレール。彼は妻から「白い結婚だった」と暴露され、
結婚を無効された事で、界隈で噂になっていた。
「結婚しても君を抱く事は無い」と宣言されるも、その距離感がアリエルには救いに思えた。
結婚式の日、招待されなかった自称魔女の大叔母が現れ、「この結婚は呪われるよ!」と言い放った。
時が経つ程に、アリエルはイレールとの関係を良いものにしようと思える様になるが、
肝心のイレールから拒否されてしまう。
気落ちするアリエルの元に、大叔母が現れ、取引を持ち掛けてきた___
異世界恋愛☆短編(全11話) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
【完】嫁き遅れの伯爵令嬢は逃げられ公爵に熱愛される
えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
リリエラは母を亡くし弟の養育や領地の執務の手伝いをしていて貴族令嬢としての適齢期をやや逃してしまっていた。ところが弟の成人と婚約を機に家を追い出されることになり、住み込みの働き口を探していたところ教会のシスターから公爵との契約婚を勧められた。
お相手は公爵家当主となったばかりで、さらに彼は婚約者に立て続けに逃げられるといういわくつきの物件だったのだ。
少し辛辣なところがあるもののお人好しでお節介なリリエラに公爵も心惹かれていて……。
22.4.7女性向けホットランキングに入っておりました。ありがとうございます 22.4.9.9位,4.10.5位,4.11.3位,4.12.2位
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

あなたを愛するつもりはない、と言われたので自由にしたら旦那様が嬉しそうです
あなはにす
恋愛
「あなたを愛するつもりはない」
伯爵令嬢のセリアは、結婚適齢期。家族から、縁談を次から次へと用意されるが、家族のメガネに合わず家族が破談にするような日々を送っている。そんな中で、ずっと続けているピアノ教室で、かつて慕ってくれていたノウェに出会う。ノウェはセリアの変化を感じ取ると、何か考えたようなそぶりをして去っていき、次の日には親から公爵位のノウェから縁談が入ったと言われる。縁談はとんとん拍子で決まるがノウェには「あなたを愛するつもりはない」と言われる。自分が認められる手段であった結婚がうまくいかない中でセリアは自由に過ごすようになっていく。ノウェはそれを喜んでいるようで……?

忘れられた薔薇が咲くとき
ゆる
恋愛
貴族として華やかな未来を約束されていた伯爵令嬢アルタリア。しかし、突然の婚約破棄と追放により、その人生は一変する。全てを失い、辺境の町で庶民として生きることを余儀なくされた彼女は、過去の屈辱と向き合いながらも、懸命に新たな生活を築いていく。
だが、平穏は長く続かない。かつて彼女を追放した第二王子や聖女が町を訪れ、過去の因縁が再び彼女を取り巻く。利用されるだけの存在から、自らの意志で運命を切り開こうとするアルタリア。彼女が選ぶ未来とは――。
これは、追放された元伯爵令嬢が自由と幸せを掴むまでの物語。


貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる