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フタツキ。
しおりを挟む 今夜は空にぽっかりと浮かぶ月が二個並んでいる。双子のようにそっくりなその月が並ぶこの時期は、フタツキと呼ばれていた。
月の光が降るそんな幻想的なこんな夜には空を見上げている人もいるかもしれないからって。
あたしはフライトの魔法陣を起動すると同時に隠蔽の魔術を行使する。
早春のまだ肌寒い季節のはずなのに周囲にふんわりと温風を撒き散らし、あたしはそんな気持ちのいい夜風にあたりながら夜空を舞った。
魔法陣ごと浮遊するフライトは、ちょうどその周囲に空気のクッションを形成する。
それがまたふわふわで気持ちがいいのだ。
ちょうどいい場所があるのよと、あたしはクラウディアに代わって窓から飛び出した。
こういうのはあたしの魔法の方が得意だからって。
まだしっかりと魔法のコントロールが出来るかどうかわからないディアに任せておくよりはいいでしょ? そう口説いて。
ふふ。
こうして空を舞うのはほんとうに気持ちが良くってあたしは好きだ。
——ほんとうですね。すごく気持ち良いです。
「でしょでしょでしょー? ディアもそう思うよね?」
——ええ。こんなの初めて。
ふふ。
「ディアにはもっと素敵な経験させてあげたいな」
——えー? どんなですか?
「ナイショ。ふふ、その時のお楽しみね」
なんだかね。あたし達ずっと一緒に育ってきたんだもの。いいかげんあたしってディアが喜びそうな事全部わかってるつもり。
——はうー。
「まあね、まかせておいて」
あたしはそれだけをディアに告げると、目的地の草原に向かって急降下する。
あそこなら、多少魔法を使っても目立たないはず。
実はこうして来るのは初めてじゃない。ディアが寝てしまったあとで結構何回かここまで来ているのだ。
やっぱりさ、お部屋で魔法を使ってお屋敷が壊れちゃってもまずいしね?
こうしてちょっとだけ人里から離れてて、それでもって林に隠れた平地の草原ならね。
多少の事なら大丈夫かな? ってそう思うわけ。
草むらの中に降り立つとフタツキが真上にあった。
煌々と降り注ぐそんな月の光には不思議な力があるのかな。
あたしはなんだか身体中から力がみなぎって来るような感じがしていた。
「聖女の力のせい、だけじゃ無いよね?」
——ですね。昔からこうして月が降るような眩い光が舞う夜は、自身の中にあるマナが膨れ上がっていくような気はしていました。
「そっか。何かそういう効果があるのかなやっぱり」
そういえば月夜に力が増す魔女の話はエグザ様の書庫にあったような気もするな。
御伽噺かって思ってたけど本当だったんだ。
——まあ元々の力が小さいうちは、こうした力の増幅にもそこまで気がつかないのかもしれませんけど。
だよね。まだ何者でもない子供だった時の前世では、こんな経験覚えがないし。
でも。
ふふ。
なんだか少し楽しい。気分が高揚しているのがわかる。
「はは。なんだかあたし、今なら何でもできる気がする」
そういうと草むらに寝転がって、空に向かって手を伸ばして。
「今ならほんと、あの月にも手が届きそうだ」
そういうとグーッと伸ばした両手で月をつかむ真似をする。
——え!?
はう!?
はっと気がついた時。
あたしは不思議な空間に漂っていた。
月の光が降るそんな幻想的なこんな夜には空を見上げている人もいるかもしれないからって。
あたしはフライトの魔法陣を起動すると同時に隠蔽の魔術を行使する。
早春のまだ肌寒い季節のはずなのに周囲にふんわりと温風を撒き散らし、あたしはそんな気持ちのいい夜風にあたりながら夜空を舞った。
魔法陣ごと浮遊するフライトは、ちょうどその周囲に空気のクッションを形成する。
それがまたふわふわで気持ちがいいのだ。
ちょうどいい場所があるのよと、あたしはクラウディアに代わって窓から飛び出した。
こういうのはあたしの魔法の方が得意だからって。
まだしっかりと魔法のコントロールが出来るかどうかわからないディアに任せておくよりはいいでしょ? そう口説いて。
ふふ。
こうして空を舞うのはほんとうに気持ちが良くってあたしは好きだ。
——ほんとうですね。すごく気持ち良いです。
「でしょでしょでしょー? ディアもそう思うよね?」
——ええ。こんなの初めて。
ふふ。
「ディアにはもっと素敵な経験させてあげたいな」
——えー? どんなですか?
「ナイショ。ふふ、その時のお楽しみね」
なんだかね。あたし達ずっと一緒に育ってきたんだもの。いいかげんあたしってディアが喜びそうな事全部わかってるつもり。
——はうー。
「まあね、まかせておいて」
あたしはそれだけをディアに告げると、目的地の草原に向かって急降下する。
あそこなら、多少魔法を使っても目立たないはず。
実はこうして来るのは初めてじゃない。ディアが寝てしまったあとで結構何回かここまで来ているのだ。
やっぱりさ、お部屋で魔法を使ってお屋敷が壊れちゃってもまずいしね?
こうしてちょっとだけ人里から離れてて、それでもって林に隠れた平地の草原ならね。
多少の事なら大丈夫かな? ってそう思うわけ。
草むらの中に降り立つとフタツキが真上にあった。
煌々と降り注ぐそんな月の光には不思議な力があるのかな。
あたしはなんだか身体中から力がみなぎって来るような感じがしていた。
「聖女の力のせい、だけじゃ無いよね?」
——ですね。昔からこうして月が降るような眩い光が舞う夜は、自身の中にあるマナが膨れ上がっていくような気はしていました。
「そっか。何かそういう効果があるのかなやっぱり」
そういえば月夜に力が増す魔女の話はエグザ様の書庫にあったような気もするな。
御伽噺かって思ってたけど本当だったんだ。
——まあ元々の力が小さいうちは、こうした力の増幅にもそこまで気がつかないのかもしれませんけど。
だよね。まだ何者でもない子供だった時の前世では、こんな経験覚えがないし。
でも。
ふふ。
なんだか少し楽しい。気分が高揚しているのがわかる。
「はは。なんだかあたし、今なら何でもできる気がする」
そういうと草むらに寝転がって、空に向かって手を伸ばして。
「今ならほんと、あの月にも手が届きそうだ」
そういうとグーッと伸ばした両手で月をつかむ真似をする。
——え!?
はう!?
はっと気がついた時。
あたしは不思議な空間に漂っていた。
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