18 / 31
手を引かれ。
しおりを挟む
手を引かれ歩いている間にディアの目が覚めたみたい。
あたしはそっと身体のコントロールを彼女に返す。
はっとビクッとして。
状況に驚きつつもそのままなんとかついていくディア。
顔がどんどん赤くなり。
熟れたトマトのように真っ赤になったその顔が熱い。
うん。がんばれ。
あたしはそう親が子供を見るようなそんな気分でディアの様子を見守っていた。
今日はどこにいくのかな?
それには少し興味があったあたし。
心の中で「どこに行くか聞こう、黙ってるとどこに連れて行かれるかわからないよ」とそう囁く。
ディアにその声が聞こえるとは思ってはいないけど、それでも少しは彼女の心をそっちに誘導できるのは今までの経験で感じていた。
真っ赤になって、それでも。
「あの、ジークさま。今日はどちらに行かれるのでしょう?」
なんとかそう言葉を紡ぎ出したディア。
うん、そうだよ。
やればできるじゃない。
あたしは心の中で彼女の魂《レイス》を撫でる。
ん?
気分の問題よ。気分のね?
「ああディア。そう聞いてくれて嬉しいよ。今日はね、君に王宮図書館を見せてあげようと思ってさ」
そう述べる殿下。
って、えー?
王宮図書館だって。
ああ、すっごく嬉しい。
そんなふうに思いっきり喜んでいるあたしと裏腹に、キョトンとしてしまっているクラウディア。
「図書館、興味ない?」
せっかくの大切な場所なのだろう。図書館っていうのはジーク殿下にとっても。きっと。
あまり良い反応が返ってこなかったことに、ちょっとしょんぼりした顔を見せる殿下。
「あ、ごめんなさい。わたくし図書館っていうのがよくわからなくて」
殿下があからさまに悲しそうな顔をしたのがクラウディアにもわかったのだろう。
彼女はそう弁解した。
ああそっか。
クラウディアは図書館がどんなところか知らないんだ。
公爵家の図書室にさえ出入りさせてもらえなかったディアは、図書館というものそのものを知らなかった。
学園に入学した後であればきっと彼女も図書館が好きになる、そんな予感はあったけど。
まだ見たこともない空間を想像することは流石に無理っていうものだ。
ふふふ。
まあしょうがないよね。
でも、王宮図書館、かぁ。
どんな場所だろう。
すっごく楽しみだ。
「そっか。それならしょうがないね。でもきっと君にも気に入ってもらえると思うよ」
しょぼんとした顔がぱあっと明るくなった。
うん。ジーク殿下は笑った顔の方が素敵だ。
しょぼんとした顔もそれはそれでなんだかいじめちゃいたくなるようなそんなお顔だけどそれでもね。
殿下は再びニコニコと上機嫌でクラウディアの手を引いて。
王宮の真っ赤なベルベットの敷き詰められた廊下を歩いて行った。
ふふ。
ちょっとスキップするような感じで、かわいいな。
あたしはほんと微笑ましい気分になって。
幸せ、だな。
そう感じていた。
あたしはそっと身体のコントロールを彼女に返す。
はっとビクッとして。
状況に驚きつつもそのままなんとかついていくディア。
顔がどんどん赤くなり。
熟れたトマトのように真っ赤になったその顔が熱い。
うん。がんばれ。
あたしはそう親が子供を見るようなそんな気分でディアの様子を見守っていた。
今日はどこにいくのかな?
それには少し興味があったあたし。
心の中で「どこに行くか聞こう、黙ってるとどこに連れて行かれるかわからないよ」とそう囁く。
ディアにその声が聞こえるとは思ってはいないけど、それでも少しは彼女の心をそっちに誘導できるのは今までの経験で感じていた。
真っ赤になって、それでも。
「あの、ジークさま。今日はどちらに行かれるのでしょう?」
なんとかそう言葉を紡ぎ出したディア。
うん、そうだよ。
やればできるじゃない。
あたしは心の中で彼女の魂《レイス》を撫でる。
ん?
気分の問題よ。気分のね?
「ああディア。そう聞いてくれて嬉しいよ。今日はね、君に王宮図書館を見せてあげようと思ってさ」
そう述べる殿下。
って、えー?
王宮図書館だって。
ああ、すっごく嬉しい。
そんなふうに思いっきり喜んでいるあたしと裏腹に、キョトンとしてしまっているクラウディア。
「図書館、興味ない?」
せっかくの大切な場所なのだろう。図書館っていうのはジーク殿下にとっても。きっと。
あまり良い反応が返ってこなかったことに、ちょっとしょんぼりした顔を見せる殿下。
「あ、ごめんなさい。わたくし図書館っていうのがよくわからなくて」
殿下があからさまに悲しそうな顔をしたのがクラウディアにもわかったのだろう。
彼女はそう弁解した。
ああそっか。
クラウディアは図書館がどんなところか知らないんだ。
公爵家の図書室にさえ出入りさせてもらえなかったディアは、図書館というものそのものを知らなかった。
学園に入学した後であればきっと彼女も図書館が好きになる、そんな予感はあったけど。
まだ見たこともない空間を想像することは流石に無理っていうものだ。
ふふふ。
まあしょうがないよね。
でも、王宮図書館、かぁ。
どんな場所だろう。
すっごく楽しみだ。
「そっか。それならしょうがないね。でもきっと君にも気に入ってもらえると思うよ」
しょぼんとした顔がぱあっと明るくなった。
うん。ジーク殿下は笑った顔の方が素敵だ。
しょぼんとした顔もそれはそれでなんだかいじめちゃいたくなるようなそんなお顔だけどそれでもね。
殿下は再びニコニコと上機嫌でクラウディアの手を引いて。
王宮の真っ赤なベルベットの敷き詰められた廊下を歩いて行った。
ふふ。
ちょっとスキップするような感じで、かわいいな。
あたしはほんと微笑ましい気分になって。
幸せ、だな。
そう感じていた。
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
【短編集】あなたが本当に知りたいことは何ですか?
ひかり芽衣
恋愛
「私を信じるなら、これを飲ませてごらん?」
それは、”一つだけ知りたい真実を知ることが出来る薬”だった……
カトリーヌの住む町には魔女がいる。人々は忌み嫌っており、森のハズレの魔女の家に人々は近づこうとしない。藁にもすがる想いの者を除いて……
果物屋の看板娘カトリーヌは、ひょんなことから魔女に小瓶を手渡され、上記セリフを言われる。
実は最近のカトリーヌは、恋煩いという名の病を罹っていた。片想いをしている幼馴染ローイの気持ちが知りたくて……
オムニバス形式というのでしょうか? 共通テーマのある短編集です。各章ごとに完結しているので、一つだけ読んでも大丈夫です。
各章毎に一気に投稿するので、毎回一応完結で投稿します。
書きたい時に書いて投稿します!
こんな薬が手に入ったなら、あなたならどうしますか?
色々なバージョンを読んでいただけたらと思います!
よろしくお願いいたします^ ^

【本篇完結】無能だと言われて婚約破棄に追放されましたが、女王陛下に見初められました!
ユウ
恋愛
ルイス・フェンネルは平凡でありながら温和で心優しい青年だった。
家族をこよなく愛し、領地の特産物でもある薬草を育てることに精を出していた。
ただ目下の悩みは婚約者のマリエルとの関係だった。
長男でありながら、婿養子に迎えられる立場故に、我儘で横暴なマリエルには困り果てていた。
「本当に無能な男、こんな男と結婚しなくてはいけないんてなんて不幸なの!」
そんな中、マリエルに婚約破棄を告げられ伯爵家から追い出されてしまうのだが――。
「誰の邪魔にならないように静かに暮らそう」
婚約破棄を甘んじて受けようとしたルイスだったが、リディア王女殿下に見初められてしまう。
しかもリディア王女殿下は、第一王位継承権を持っており、次期女王陛下となることが決まっていた。
婚約破棄をされ追放されたはずが、いきなり王配となるのだが、マリエルが王宮に乗り込んで来てしまう。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

旦那様は離縁をお望みでしょうか
村上かおり
恋愛
ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。
けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。
バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
私の初恋の男性が、婚約者に今にも捨てられてしまいそうです
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【私の好きな人が婚約者に捨てられそうなので全力で阻止させて頂きます】
入学式で困っている私を助けてくれた学生に恋をしてしまった私。けれど彼には子供の頃から決められていた婚約者がいる人だった。彼は婚約者の事を一途に思っているのに、相手の女性は別の男性に恋している。好きな人が婚約者に捨てられそうなので、全力で阻止する事を心に決めたー。
※ 他サイトでも投稿中

公爵夫人アリアの華麗なるダブルワーク〜秘密の隠し部屋からお届けいたします〜
白猫
恋愛
主人公アリアとディカルト公爵家の当主であるルドルフは、政略結婚により結ばれた典型的な貴族の夫婦だった。 がしかし、5年ぶりに戦地から戻ったルドルフは敗戦国である隣国の平民イザベラを連れ帰る。城に戻ったルドルフからは目すら合わせてもらえないまま、本邸と別邸にわかれた別居生活が始まる。愛人なのかすら教えてもらえない女性の存在、そのイザベラから無駄に意識されるうちに、アリアは面倒臭さに頭を抱えるようになる。ある日、侍女から語られたイザベラに関する「推測」をきっかけに物語は大きく動き出す。 暗闇しかないトンネルのような現状から抜け出すには、ルドルフと離婚し公爵令嬢に戻るしかないと思っていたアリアだが、その「推測」にひと握りの可能性を見出したのだ。そして公爵邸にいながら自分を磨き、リスキリングに挑戦する。とにかく今あるものを使って、できるだけ抵抗しよう!そんなアリアを待っていたのは、思わぬ新しい人生と想像を上回る幸福であった。公爵夫人の反撃と挑戦の狼煙、いまここに高く打ち上げます!
➡️登場人物、国、背景など全て架空の100%フィクションです。

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ
こな
恋愛
公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。
待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。
ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる