禍《わざわい》の魔女とよばれた公爵令嬢〜王子様から婚約を破棄されました。ほんとは聖女のわたくしなのによろしいのでしょうか?

友坂 悠

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学院。

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 八つになった。
 今年は王立学院への入学が決まっているクラウディア。
 この国では8歳になった貴族の子弟は聖都にある王立学院アカメディウスに通うことが義務付けられているらしい。
 そして、家柄だけではなくこの学園を卒業する15歳を持って、貴族の一員とみなされるようになるのだとか。
 って不思議な話。
 だって、っていうことは健康に問題があったりして学院に通えない、もしくは卒業できなかったりしたら貴族社会に受け入れられないってことでしょう?
 まあ例外もある。
 成人してから爵位を賜って貴族籍になったものはそれを持って貴族になるということらしいけどね?
 爵位がなくともこの学院さえ卒業していれば貴族と認められるのならそれはそれで助かる人も出てくるだろうけど、逆に爵位も無し領地もなしに貴族の品位と使命を果たさなきゃならないんだったらそれも大変かもってそう思う。

 少なくとも、前世の世界ではそんな話聞いたことが無かった。
 あたしがカペラだった頃はそりゃあ貴族社会に詳しかったわけじゃないけどそれでもそれくらいはわかる。
 エグザさまの書庫にはそんな貴族の嗜みやらなんやら風俗的な内容の本だってちゃんとあったしね?
 それに。

 当時は貴族っていうのはそれだけで権力者だった。

 世界は小国都市国家に分裂していてそこを治めている実力者が聖王国でも爵位を受け貴族として君臨していた。
 爵位とか貴族とかそんな名前は権力についてくるもので、力あるものがそれを手に入れ力ないものは踏みつけられる。それが当たり前に横行していたのが前世の世界。

 なんだか今のこののほほんとした世界とは全く違って。
 っていうかほんとにここはあの前世と同じ世界なんだろうかって。
 そんなふうにも思ってしまう。

 実はあのあと。
 あたしは何度か前世を夢に見て。
 エグザさまがお亡くなりになり屋敷に魔道士協会が攻めてきて。
 レキシーが殺されあたしの心が血まみれになった。
 そんなところまでを思い出した。

 多分、あたしはあそこで命を落としたのだろう。
 あたしを悲しそうな瞳で見る聖女さまのお顔が最後に目に焼き付いているけど、きっとそこまでだ。
 あれからこの時代までに一体何年経っているのか歴史のお勉強がまだのあたしにはわからないけど、それでもね。きっとかなり長い時間が過ぎているんだろうな、そんな気がする。
 だって、世界が変わり過ぎているもの。

 まだ小さいからと図書室にも入れてもらえなかったクラウディア。
 でもいよいよそれも解禁だ。
 学院に通うようになればそれなりにお勉強が待っているし、クラウディアが成長すればその分御本だって読むようになるだろう。

 ふふ。
 あのエグザさまの書庫が懐かしい。

 あのセピア色の記憶があたしにはものすごく素敵な思い出として残っている。

 ふふ。
 早く行きたいな。
 王立学院に。
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