16 / 31
学院。
しおりを挟む
八つになった。
今年は王立学院への入学が決まっているクラウディア。
この国では8歳になった貴族の子弟は聖都にある王立学院アカメディウスに通うことが義務付けられているらしい。
そして、家柄だけではなくこの学園を卒業する15歳を持って、貴族の一員とみなされるようになるのだとか。
って不思議な話。
だって、っていうことは健康に問題があったりして学院に通えない、もしくは卒業できなかったりしたら貴族社会に受け入れられないってことでしょう?
まあ例外もある。
成人してから爵位を賜って貴族籍になったものはそれを持って貴族になるということらしいけどね?
爵位がなくともこの学院さえ卒業していれば貴族と認められるのならそれはそれで助かる人も出てくるだろうけど、逆に爵位も無し領地もなしに貴族の品位と使命を果たさなきゃならないんだったらそれも大変かもってそう思う。
少なくとも、前世の世界ではそんな話聞いたことが無かった。
あたしがカペラだった頃はそりゃあ貴族社会に詳しかったわけじゃないけどそれでもそれくらいはわかる。
エグザさまの書庫にはそんな貴族の嗜みやらなんやら風俗的な内容の本だってちゃんとあったしね?
それに。
当時は貴族っていうのはそれだけで権力者だった。
世界は小国都市国家に分裂していてそこを治めている実力者が聖王国でも爵位を受け貴族として君臨していた。
爵位とか貴族とかそんな名前は権力についてくるもので、力あるものがそれを手に入れ力ないものは踏みつけられる。それが当たり前に横行していたのが前世の世界。
なんだか今のこののほほんとした世界とは全く違って。
っていうかほんとにここはあの前世と同じ世界なんだろうかって。
そんなふうにも思ってしまう。
実はあのあと。
あたしは何度か前世を夢に見て。
エグザさまがお亡くなりになり屋敷に魔道士協会が攻めてきて。
レキシーが殺されあたしの心が血まみれになった。
そんなところまでを思い出した。
多分、あたしはあそこで命を落としたのだろう。
あたしを悲しそうな瞳で見る聖女さまのお顔が最後に目に焼き付いているけど、きっとそこまでだ。
あれからこの時代までに一体何年経っているのか歴史のお勉強がまだのあたしにはわからないけど、それでもね。きっとかなり長い時間が過ぎているんだろうな、そんな気がする。
だって、世界が変わり過ぎているもの。
まだ小さいからと図書室にも入れてもらえなかったクラウディア。
でもいよいよそれも解禁だ。
学院に通うようになればそれなりにお勉強が待っているし、クラウディアが成長すればその分御本だって読むようになるだろう。
ふふ。
あのエグザさまの書庫が懐かしい。
あのセピア色の記憶があたしにはものすごく素敵な思い出として残っている。
ふふ。
早く行きたいな。
王立学院に。
今年は王立学院への入学が決まっているクラウディア。
この国では8歳になった貴族の子弟は聖都にある王立学院アカメディウスに通うことが義務付けられているらしい。
そして、家柄だけではなくこの学園を卒業する15歳を持って、貴族の一員とみなされるようになるのだとか。
って不思議な話。
だって、っていうことは健康に問題があったりして学院に通えない、もしくは卒業できなかったりしたら貴族社会に受け入れられないってことでしょう?
まあ例外もある。
成人してから爵位を賜って貴族籍になったものはそれを持って貴族になるということらしいけどね?
爵位がなくともこの学院さえ卒業していれば貴族と認められるのならそれはそれで助かる人も出てくるだろうけど、逆に爵位も無し領地もなしに貴族の品位と使命を果たさなきゃならないんだったらそれも大変かもってそう思う。
少なくとも、前世の世界ではそんな話聞いたことが無かった。
あたしがカペラだった頃はそりゃあ貴族社会に詳しかったわけじゃないけどそれでもそれくらいはわかる。
エグザさまの書庫にはそんな貴族の嗜みやらなんやら風俗的な内容の本だってちゃんとあったしね?
それに。
当時は貴族っていうのはそれだけで権力者だった。
世界は小国都市国家に分裂していてそこを治めている実力者が聖王国でも爵位を受け貴族として君臨していた。
爵位とか貴族とかそんな名前は権力についてくるもので、力あるものがそれを手に入れ力ないものは踏みつけられる。それが当たり前に横行していたのが前世の世界。
なんだか今のこののほほんとした世界とは全く違って。
っていうかほんとにここはあの前世と同じ世界なんだろうかって。
そんなふうにも思ってしまう。
実はあのあと。
あたしは何度か前世を夢に見て。
エグザさまがお亡くなりになり屋敷に魔道士協会が攻めてきて。
レキシーが殺されあたしの心が血まみれになった。
そんなところまでを思い出した。
多分、あたしはあそこで命を落としたのだろう。
あたしを悲しそうな瞳で見る聖女さまのお顔が最後に目に焼き付いているけど、きっとそこまでだ。
あれからこの時代までに一体何年経っているのか歴史のお勉強がまだのあたしにはわからないけど、それでもね。きっとかなり長い時間が過ぎているんだろうな、そんな気がする。
だって、世界が変わり過ぎているもの。
まだ小さいからと図書室にも入れてもらえなかったクラウディア。
でもいよいよそれも解禁だ。
学院に通うようになればそれなりにお勉強が待っているし、クラウディアが成長すればその分御本だって読むようになるだろう。
ふふ。
あのエグザさまの書庫が懐かしい。
あのセピア色の記憶があたしにはものすごく素敵な思い出として残っている。
ふふ。
早く行きたいな。
王立学院に。
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
【短編集】あなたが本当に知りたいことは何ですか?
ひかり芽衣
恋愛
「私を信じるなら、これを飲ませてごらん?」
それは、”一つだけ知りたい真実を知ることが出来る薬”だった……
カトリーヌの住む町には魔女がいる。人々は忌み嫌っており、森のハズレの魔女の家に人々は近づこうとしない。藁にもすがる想いの者を除いて……
果物屋の看板娘カトリーヌは、ひょんなことから魔女に小瓶を手渡され、上記セリフを言われる。
実は最近のカトリーヌは、恋煩いという名の病を罹っていた。片想いをしている幼馴染ローイの気持ちが知りたくて……
オムニバス形式というのでしょうか? 共通テーマのある短編集です。各章ごとに完結しているので、一つだけ読んでも大丈夫です。
各章毎に一気に投稿するので、毎回一応完結で投稿します。
書きたい時に書いて投稿します!
こんな薬が手に入ったなら、あなたならどうしますか?
色々なバージョンを読んでいただけたらと思います!
よろしくお願いいたします^ ^

大嫌いな幼馴染の皇太子殿下と婚姻させられたので、白い結婚をお願いいたしました
柴野
恋愛
「これは白い結婚ということにいたしましょう」
結婚初夜、そうお願いしたジェシカに、夫となる人は眉を顰めて答えた。
「……ああ、お前の好きにしろ」
婚約者だった隣国の王弟に別れを切り出され嫁ぎ先を失った公爵令嬢ジェシカ・スタンナードは、幼馴染でありながら、たいへん仲の悪かった皇太子ヒューパートと王命で婚姻させられた。
ヒューパート皇太子には陰ながら想っていた令嬢がいたのに、彼女は第二王子の婚約者になってしまったので長年婚約者を作っていなかったという噂がある。それだというのに王命で大嫌いなジェシカを娶ることになったのだ。
いくら政略結婚とはいえ、ヒューパートに抱かれるのは嫌だ。子供ができないという理由があれば離縁できると考えたジェシカは白い結婚を望み、ヒューパートもそれを受け入れた。
そのはず、だったのだが……?
離縁を望みながらも徐々に絆されていく公爵令嬢と、実は彼女のことが大好きで仕方ないツンデレ皇太子によるじれじれラブストーリー。
※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

旦那様は離縁をお望みでしょうか
村上かおり
恋愛
ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。
けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。
バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。

謂れのない淫行で婚約破棄されたわたしは、辺境の毒侯爵に嫁ぎました
なかの豹吏
恋愛
大公侯爵家の令嬢リナーリは、近く王国の第一王子と結婚を控えていた。
しかしある日、身に覚えの無い淫行の疑いをかけられて婚約を破棄されてしまう。
それから数日が過ぎ、そんな彼女の元に舞い込んできた嫁ぎ話。それは王都で『毒侯爵』と噂される辺境伯との生活だった。
辺境伯との奇妙な生活、そして疑惑の真実とは――――。

公爵夫人アリアの華麗なるダブルワーク〜秘密の隠し部屋からお届けいたします〜
白猫
恋愛
主人公アリアとディカルト公爵家の当主であるルドルフは、政略結婚により結ばれた典型的な貴族の夫婦だった。 がしかし、5年ぶりに戦地から戻ったルドルフは敗戦国である隣国の平民イザベラを連れ帰る。城に戻ったルドルフからは目すら合わせてもらえないまま、本邸と別邸にわかれた別居生活が始まる。愛人なのかすら教えてもらえない女性の存在、そのイザベラから無駄に意識されるうちに、アリアは面倒臭さに頭を抱えるようになる。ある日、侍女から語られたイザベラに関する「推測」をきっかけに物語は大きく動き出す。 暗闇しかないトンネルのような現状から抜け出すには、ルドルフと離婚し公爵令嬢に戻るしかないと思っていたアリアだが、その「推測」にひと握りの可能性を見出したのだ。そして公爵邸にいながら自分を磨き、リスキリングに挑戦する。とにかく今あるものを使って、できるだけ抵抗しよう!そんなアリアを待っていたのは、思わぬ新しい人生と想像を上回る幸福であった。公爵夫人の反撃と挑戦の狼煙、いまここに高く打ち上げます!
➡️登場人物、国、背景など全て架空の100%フィクションです。

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ
こな
恋愛
公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。
待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。
ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる