禍《わざわい》の魔女とよばれた公爵令嬢〜王子様から婚約を破棄されました。ほんとは聖女のわたくしなのによろしいのでしょうか?

友坂 悠

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小動物のよう。

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「ディアって呼んでいいか? 私のことはジークと呼ぶことを許そう」

 クラウディアの手を引きながらそう嬉しそうに話す彼、ジーク殿下。

「ジーク、でんか?」

「ああ、ジークだ。はは、ディアはまるで小動物のようだな」

 びくびくしながらついていくクラウディアにそんな感想を述べる殿下。

 ってそれって反応が? 容姿が?

 まあ確かにこのオドオドびくびくしてる感じは小動物っぽいかもだけど。

 子猫、っていうより子うさぎ、かな?

 大きい音を立てるとびっくりして固まってしまいそうなそんな雰囲気はあるよね確かに。

 まあそれもクライディアの魅力になっているといえばそうだけど、もう少し積極的になっても子供らしくていいと思うんだけど。

 中庭に出るとそこには色とりどりの花が咲き乱れ、風に乗って甘い香りがゆったりと漂っていた。

 芳しいそんな空気を吸うとなんだか心の中から気持ちが良くなってくるようで。

「この庭園は特殊な魔法具によって常に季節の花々が一番綺麗に咲き乱れる環境が保たれているんだ。王宮の秘密なんだよ」

 嬉しそうなお顔でそうおはなしをしてくれる殿下に。

「ええ」とか、「すごいです」とかとにかく相槌を打つのに精一杯なクラウディア。

 辿り着いたその場所にあったのは真っ白なガーデンテーブルで、同じく真っ白なチェアが可愛らしく並んでいた。

「ここで少し休もうか」

 そううながされるまま腰掛けるあたし、クラウディア。

 さっと背後から見守りながらついてきていた侍従さんたちがあたしの目の前にお茶のカップを差し出してきて。
 その手際にちょっとびっくりしながらもなんとか「ありがとう」と声を絞り出すクラウディアだった。

 美味しいローズティは芳しく香りとっても甘くって。
 ナッツがいっぱい入ったクッキーがとても香ばしくて美味しかった。
 って、味を感じて美味しいって言ってるのはあたしだけど。
 クラウディアはそこまで感じてない様子?
 こんなに美味しいのにね?
 当たり前に感じているから?

 ああ、そうかもしれない。
 生まれた時からずっとこんな美味しいものしか食べてなかったら、それが特別美味しいものなんだとかそんなこと感じられなくなるのかも。そうも思って。

 それもちょっと悲しいな。そんなふうにも感じていた。

「この間のパーティーでは私は~」
「お父様はとってもお強いのだが~」
「王立学院への入学の折にはディアと一緒に~」
「なあ今度はぜひあちらの~」

 と、立て続けに話題をふる王子に。
 
「ええ」
 とか
「はい」
 とかやっぱりそんな受け答えしかできないでいるクラウディア。

「なあ? 私といるのはそんなに退屈か?」
 しまいにはそう殿下に言わせてしまう始末。

 その言葉を聞いた途端、固まってしまったクラウディアに変わって、

「いえ、そんなことはありません! なかなか気の利いたお返事ができずすみません。それでも、殿下のお話はとても興味深くお伺いしていましたわ」
 と、とにかくそう声を出したあたし。

 固まってパニックになっているクラウディアにはもう何がどうなっているのか理解できなかったかもで、いきなり自分がそんな言葉を綴ったことで余計にパニックになっているのが分かったけどそれでもここで何も言わないのは最悪。クラウディアが嫌われちゃうのは避けたい、そんな思いでついつい口を出してしまった。

 それでも。

「ああ、それならよかった」

 と、にっこり笑顔になってくれた殿下のお顔を見て、あたしは少し安堵したのだった。
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