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道すがら、マキナは事情を色々話してくれた。
自分の特異な魔力のことも。
そしてそのせいでマキナの家族が村八分にされていることも。
無理が祟ってか父親が倒れた後は、主にマキナが森で獲ってくる食材を糧に、母親と三人細々と暮らしているらしい。
同情?
ううん。
あたしはこの子に興味があるの。
さっき少し触れた時に感じたこの子の魂のその奥に、多分、魔王石がある。
どれくらい育っているのかはわからないけれど。
真っ赤に輝く魔王石の残滓が子のこのゲートから溢れ出ているんだと思う。
この世界は神の氣エーテルに包まれたマナの泡だ。
宇宙、空間、そんなものはそのマナの泡の表面にある。
世界はそんな泡が幾億千万も産まれては消え消えては産まれ。
そうして輪廻の輪の中に還りながら時が巡っていくの。
人の命もそう。
人の心の奥底には魂というやっぱりマナでできた泡がある。
そんな魂は大霊から別れ産まれては、そしてまた還る。
大霊の中で混ざって溶け、そしてまた新たな魂となって産まれてくるんだけれど。
たまたまそうした輪廻から外れて何度でも甦る魂が存在する。
あたしもそう。
そして、魔王もそう。
魔王の本体はあたしが封じたから輪廻転生の枠からは外れているけれど。
その残滓、魂の残滓がより集まり固まったものが魔王石となって残ってる。
この子はきっと、そんな魔王石を宿して産まれてきてしまったのかもしれない。
それは、あたしの罪だ。
だから……。
■■■
森を出てしばらくいくと集落が見えてきた。
だけれど、マキナはその集落への道では無く右手のはずれ、渓谷への道を行くと言う。
「俺の家はハズレにある。村の集落には居られなかったんだ」
そう言いながら一段険しい道をゆくマキナ。
足元は辛うじて歩くことが出来る獣道、村へゆく道は長年人の足が地面を踏み固めているのだろう足元も歩きやすくなっていたけれど、こちらは油断すると石や木の根に足をとられてしまいそうなほど。
粗末な麻のサンダルしか履いていないマリアンヌの足は傷つき、所々血が滲んでいた。
「すみません、足、大丈夫ですか?」
真っ白な柔肌が血で滲んでいるのを見て。
まるでこんなところを歩くような格好ではない彼女に、あらためて申し訳ない気がしたマキナ。
「大丈夫ですよ。それよりも急ぎましょう。お父様が心配だわ」
そう笑顔で話す彼女に改めて感謝の気持ちでいっぱいになった。
急な坂を登った先に小さな小屋があった。
そこがマキナの家なのだという。
「狭い家だけど、これだけ村から外れた場所だと村の結界も効かないし。野獣や魔物からも身を守らないといけないからね。不便な場所だけど、ここはその分安全なんだ」
背後は崖。手前もすぐ崖になっている。
崖の隙間の平地。確かにここならはいり口がこの獣道しかない分、護りやすいかもしれないけれど。でも、逆を言えば逃げ場も無いと言える。
それでも。
自分魔力、その匂いが魔物避けにもなっている。
マキナはそう自覚していた。自分が留守の間でもある程度その効果が残っていることも。
「ただいま」
扉をあけそう中に声をかけたマキナ。
「ああ、マキナ、お父さんが、お父さんが……」
いつもと違う母の取り乱しように。
「どうした!? かあさん! 何があった!?」
まさか! 父さん!
間に合ってくれ!
そう心の中で叫び奥の部屋へ飛び込んだ。
自分の特異な魔力のことも。
そしてそのせいでマキナの家族が村八分にされていることも。
無理が祟ってか父親が倒れた後は、主にマキナが森で獲ってくる食材を糧に、母親と三人細々と暮らしているらしい。
同情?
ううん。
あたしはこの子に興味があるの。
さっき少し触れた時に感じたこの子の魂のその奥に、多分、魔王石がある。
どれくらい育っているのかはわからないけれど。
真っ赤に輝く魔王石の残滓が子のこのゲートから溢れ出ているんだと思う。
この世界は神の氣エーテルに包まれたマナの泡だ。
宇宙、空間、そんなものはそのマナの泡の表面にある。
世界はそんな泡が幾億千万も産まれては消え消えては産まれ。
そうして輪廻の輪の中に還りながら時が巡っていくの。
人の命もそう。
人の心の奥底には魂というやっぱりマナでできた泡がある。
そんな魂は大霊から別れ産まれては、そしてまた還る。
大霊の中で混ざって溶け、そしてまた新たな魂となって産まれてくるんだけれど。
たまたまそうした輪廻から外れて何度でも甦る魂が存在する。
あたしもそう。
そして、魔王もそう。
魔王の本体はあたしが封じたから輪廻転生の枠からは外れているけれど。
その残滓、魂の残滓がより集まり固まったものが魔王石となって残ってる。
この子はきっと、そんな魔王石を宿して産まれてきてしまったのかもしれない。
それは、あたしの罪だ。
だから……。
■■■
森を出てしばらくいくと集落が見えてきた。
だけれど、マキナはその集落への道では無く右手のはずれ、渓谷への道を行くと言う。
「俺の家はハズレにある。村の集落には居られなかったんだ」
そう言いながら一段険しい道をゆくマキナ。
足元は辛うじて歩くことが出来る獣道、村へゆく道は長年人の足が地面を踏み固めているのだろう足元も歩きやすくなっていたけれど、こちらは油断すると石や木の根に足をとられてしまいそうなほど。
粗末な麻のサンダルしか履いていないマリアンヌの足は傷つき、所々血が滲んでいた。
「すみません、足、大丈夫ですか?」
真っ白な柔肌が血で滲んでいるのを見て。
まるでこんなところを歩くような格好ではない彼女に、あらためて申し訳ない気がしたマキナ。
「大丈夫ですよ。それよりも急ぎましょう。お父様が心配だわ」
そう笑顔で話す彼女に改めて感謝の気持ちでいっぱいになった。
急な坂を登った先に小さな小屋があった。
そこがマキナの家なのだという。
「狭い家だけど、これだけ村から外れた場所だと村の結界も効かないし。野獣や魔物からも身を守らないといけないからね。不便な場所だけど、ここはその分安全なんだ」
背後は崖。手前もすぐ崖になっている。
崖の隙間の平地。確かにここならはいり口がこの獣道しかない分、護りやすいかもしれないけれど。でも、逆を言えば逃げ場も無いと言える。
それでも。
自分魔力、その匂いが魔物避けにもなっている。
マキナはそう自覚していた。自分が留守の間でもある程度その効果が残っていることも。
「ただいま」
扉をあけそう中に声をかけたマキナ。
「ああ、マキナ、お父さんが、お父さんが……」
いつもと違う母の取り乱しように。
「どうした!? かあさん! 何があった!?」
まさか! 父さん!
間に合ってくれ!
そう心の中で叫び奥の部屋へ飛び込んだ。
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