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恋愛なんてお伽噺だと思っていた。

国王と王妃である父母も、政略結婚であるらしかった。

この地、ビュッセオは自然は豊かだが、王都セントリアに比べると、可哀想なものらしい。

私はと言うと、22歳にもなるのに、社交界デビューもせずにいた。薄々気づいてはいた。国王と王妃は、すっかり平和ボケをしているのだ。鶏の鳴き声で起き、小鳥のさえずりを聴きながらお茶をし、お喋りに疲れたら眠るような毎日を送っているのだから。そんなだから、一人娘の婚姻のことなど忘れてしまっていたのだ、そう何年も。

もう一回言わせていただこう。
恋愛なんて茶番なのだ。

あらら、そこまでは言ってなかったかしら。

今さら、せめてあと5年早ければ、なんて言っても遅すぎる。

この私、ベアトリスはすっかり僻地の女らしい逞しさを備えて、畑を耕しているのに。

身分違いの幼馴染たちの結婚だって、何度祝ってきたか分からない。その都度、自分のことのように思えて、嬉し涙を流してきた。

領地の発展について関心のない両親もとい国王夫妻の肉親として、領民に見捨てられないように、精一杯貢献してきた。

いいえ、それが領主の務めなのです。

今さら、国王と王妃は婚姻を急げと嘆くけれど、領民の皆々は「ベアトリスらしく生きなさい」と励ましてくれる。

それは令嬢らしくなく、可憐さも狡猾さも色気も無い私が、社交の場で見初められるわけがないことを理解しているからだ。

なんと賢い、我が領民なのだろう。

きっとこの地をべてきた領主一族の血が絶えてしまったとしても、大丈夫だろう。

だから、慌てふためく二人に向かってこう言うの。


「小さい家だし、ついえたっていいわ」
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