レンタル法要応援人 〜死後のお裁きも四十九日〜

朔々

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命懸けの自宅警備

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「面白いネタを見つけたなぁと思って、初七日まで毎日毎日、三途の川ツアーに参加したんです」

 『今からでも遅くない!終活ノート作成講座』にでも参加した方が良かったかな、と言い出し始める。なんともまあ、とんちきなものをやっているものだと呆れてしまう。

「生きていた頃は漫画家をしていたんです。幼い頃は週刊少年誌で連載を持つことが夢だったんですけど……。仕事依頼が増えるようにと始めたイラスト付きエッセイがネットで意外に評判が良くて」

 無理してもできないことを追いかけるより、楽にできて他人ひとから喜ばれることをすることで、不思議と気持ちが落ち着いたと言う。

「それこそ王道の少年漫画みたいな熱い友情とかバトルとか描いてみたかったんですけど、才能が無いと言うか、実は性分にあってなくて。ほのぼのしてて、くすって笑えるようなことを想像するのが好きでした」

 彼女の顔は、夢を語る、希望に満ち溢れた人のそれになっている。

「三途の川って見たことありますか? 素晴らしいんですよ。てっきり裁判結果の、なんで言うんだろう、刑罰って言ったらおかしいから……」

「僕たちはお裁きって言ってますよ」

「そう、お裁きによって、激流なのか、急流なのか、緩流なのかって、決まってくるので。三段階に分ける為に人工的に造ってあるのかなって最初は思いました」

「違うんですね」

 また割って入ってしまった。ササヤマさんが入室して初めて私の方を見た。屈託の無い笑顔であったから、腱鞘炎になる未来必至でペンを握って猛スピードで動く右手が認められたのだろう。
 
「案内係の人と仲良くなって、三途の川にまつわる話をたくさん聞き出すことができました。ネタ集めの為のインタビューみたいで、まるでまだ生きているかのようで。次回作は、三途の川の成り立ちと変遷で行こうかなとか構想を練っているんです」

 披露する先はもう無いんですけどね、と哀しい笑顔を見せた。

「そこに川があったから渡るようになったのかな、とか。場所によって流れが変わるから裁くことにしたのかな、とか。柄にもなく哲学的なことを考えたりしました。こんな気分になることを『アンデッドブルー』と勝手に名付けたりもして」

 確かに、死んだはずなのに不可解なことに付き合わされて、終わったことに対して、裁きを下される。思い出したくはないことも聞き取られ、心まで奪われるようだ。記憶を失った私より、元居た場所に戻る方法を断たれた人の方が辛いはずだ。
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