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舞い込んできた契約外の業務

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 肩凝りの緩和の為にストレッチをしようとすると、嫌でも目に入る書類の山、山、山。こんなに紙を積み上げるなんて正気の沙汰ではない。

「今日こそは定時に上がらせてもらおう」

 アロマオイルを使ったリラクゼーションマッサージのお店を予約しているのだ。先週も業務が片付かなくて当日キャンセルをする羽目はめになってしまった。さすがにそろそろペナルティーが付く頃だろう。出入り禁止になってしまったら、私は肩凝りと腰痛が原因で死んでしまう。

「良かったぁ! サトリさんまだいた。私

 何やら嫌な予感がする。バインダーを抱えて走ってくる主任のエチカさんが、嬉しそうに話しかけてくる時は残業になってしまうことが多い。

「あのね! サトリさん!」

「聞きません! 私、パートなので!」

「そこをなんとか! きちんと分単位で残業代もらえるように言っておくから!」

「今日はマリマージュの予約を入れているんです。さすがにそろそろメンテナンスしないと、体がバッキバキなんです」

「仕方ない! 必殺のコネを使いますか」

 主任の手がおもむろにプライベート用のスマートフォンを取り出したのを見届けていたけれど、これは非常に不利な展開である。

「よしっ! マリマージュのエミカの時間外予約が取れました!」

 勝手に予約時間を変更しやがりましたね。

「妹さんにご迷惑じゃないですか?」

 驚いたような真顔から、サイレントのまま満面の笑顔、からの全くもって平気だよと言いたいのか、サムズアップの仕草をされた。しかし、前向きに考えれば指定した時間には帰らせてもらえるということだ。

「さてと、始めていくかぁ。一応六時にしておいたから、そうね、移動時間も考えて五時半にはここを出られるように頑張りましょ」

「あれ? 元々、六時に予約してたんですが」

「うふふ、明日の朝の六時よ。今日は寝かさないわ」

 色香を感じるウインクをされた。女性同士であっても私は綺麗なお姉さんに弱いのである。たとえ、それが一昔前の手管てくだであっても。




「レンタル法要応援人……?」

 一秒でも無駄な時間を遣いたくないとばかりに、端的が過ぎる説明を受けた。

「サトリさんも慣れてきたと思うから知ってると思うけれど、孤独死の案件が増えているでしょ?」

 そうだった。ここは普通の庶務課ではなかった。
 亡くなったばかりの人はあの世に行くまでにやや時間がかかる。行き先を決める為に、生前せいぜんの行いを聞き取り、裁判にかけられるからだ。ここでは、その煩雑はんざつな手続きの一切合切いっさいがっさいを行っている。つまり、あの世のお役所なのだ。
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