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神嫌いの神様
4話
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そこに彼がいるというのに着替えるのは些か気が引ける。
これも、私が着付けができない役立たずだからいけないんだ。
「どう、着れた? 」
「え? もうちょっと待っててください」
躊躇っている暇は無かったらしい。実際に見たほうが早いこととは何だろう。璃三郎さんが使えるという異能を披露してくれるのだろうか。こんなに容易く心を開いてしまってはいるけど、人は見かけによらない。彼にだって、胡散臭い背景があるかもしれない。
これで合ってるのかな……。
「着れたと思います」
「じゃあ、入るよ」
私に着せてくれるであろう、山吹色の着物を腕に乗せて部屋に入ってきた。右耳だけのピアスは今でも揺れている。深緑の着物の色に、その紅い石が映えている。最も美しく見えるようにカットされたそれは、多方向からの光を反射している。
「さてさて、じゃあ、少し胸を張って、腕を体から離してね」
あっという間に着付けられていく。気恥ずかしい思いをする時間も無いくらいにてきぱきとしている。
「すごい……」
「ありがとう。俺、洋服も好きだけど、和服も好きなんだ」
下から上目遣いで微笑まれて、破壊力は抜群である。
うわぁ……罪作りな人だなぁ。
「よし、ちょっと失礼しますよ」
腰回りを締められていく。自分の腹部辺りに顔が近づいては離れていくのは、さすがに絶句するしかない。
着付けに集中してくれていて良かった。絶対、今の私の顔、真っ赤だ。
「はい! 完成」
部屋の隅に置かれている姿見の方へ、肩を押されて、向き直させられる。
「どうかな」
「素敵なお着物……」
「これが似合うのは媛ちゃんの良さだと思うよ」
鏡越しに会話をする。顔の造りが反転していると言うのに、璃三郎さんの顔はさっきまでと変わらない。
歪みとかなくて、左右対称なんだ。
「話が途中になっちゃったけど、これから来客を迎えるんだ」
「来客? 」
「そう、自身の行先を見据える為に、俺の異能を必要としているんだ」
占いみたい……でも、異能を使う? その占いができること自体が異能なのかしら。
「お披露目も兼ねて、媛ちゃんには横に居てほしい。来客のことを相談者って呼んでいるんだけど、相談者さんは信心深い人が多いから、自分が信じていないからって嫌な顔はしないこと。それは約束できるよね」
「勿論です」
居候させてくれって押しかけて来たわけなのだから、家主の言うことは絶対だ。私を家から追い出してまであの人たちが心酔したものは何か。この目でしかと見届けてやる。
これも、私が着付けができない役立たずだからいけないんだ。
「どう、着れた? 」
「え? もうちょっと待っててください」
躊躇っている暇は無かったらしい。実際に見たほうが早いこととは何だろう。璃三郎さんが使えるという異能を披露してくれるのだろうか。こんなに容易く心を開いてしまってはいるけど、人は見かけによらない。彼にだって、胡散臭い背景があるかもしれない。
これで合ってるのかな……。
「着れたと思います」
「じゃあ、入るよ」
私に着せてくれるであろう、山吹色の着物を腕に乗せて部屋に入ってきた。右耳だけのピアスは今でも揺れている。深緑の着物の色に、その紅い石が映えている。最も美しく見えるようにカットされたそれは、多方向からの光を反射している。
「さてさて、じゃあ、少し胸を張って、腕を体から離してね」
あっという間に着付けられていく。気恥ずかしい思いをする時間も無いくらいにてきぱきとしている。
「すごい……」
「ありがとう。俺、洋服も好きだけど、和服も好きなんだ」
下から上目遣いで微笑まれて、破壊力は抜群である。
うわぁ……罪作りな人だなぁ。
「よし、ちょっと失礼しますよ」
腰回りを締められていく。自分の腹部辺りに顔が近づいては離れていくのは、さすがに絶句するしかない。
着付けに集中してくれていて良かった。絶対、今の私の顔、真っ赤だ。
「はい! 完成」
部屋の隅に置かれている姿見の方へ、肩を押されて、向き直させられる。
「どうかな」
「素敵なお着物……」
「これが似合うのは媛ちゃんの良さだと思うよ」
鏡越しに会話をする。顔の造りが反転していると言うのに、璃三郎さんの顔はさっきまでと変わらない。
歪みとかなくて、左右対称なんだ。
「話が途中になっちゃったけど、これから来客を迎えるんだ」
「来客? 」
「そう、自身の行先を見据える為に、俺の異能を必要としているんだ」
占いみたい……でも、異能を使う? その占いができること自体が異能なのかしら。
「お披露目も兼ねて、媛ちゃんには横に居てほしい。来客のことを相談者って呼んでいるんだけど、相談者さんは信心深い人が多いから、自分が信じていないからって嫌な顔はしないこと。それは約束できるよね」
「勿論です」
居候させてくれって押しかけて来たわけなのだから、家主の言うことは絶対だ。私を家から追い出してまであの人たちが心酔したものは何か。この目でしかと見届けてやる。
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