117 / 120
第9章
117.女神見習い、アラクネの糸を活用する
しおりを挟む「いやー、疲れたけど楽しかったね」
「ん、魔結晶もたくさん」
「だね……明日早速ポーション作るね」
「ん」
ブランさんの今すぐ作れっていう視線は当然スルーですよ!
ライムが布を気に入ったらしいのでハンカチサイズのものを渡す……うん、ライム道案内で活躍したからね。
『ありがとです!』
「いーえ」
ライムは満足そうに畑の方へ飛んでいった。あ、スライムゼリーもゲットしたからリディとブランと分けて食べたよ。
翌日……
リディ特製の朝食を済ませたあと、ポーションを作ったのでいくつか飲んでもらう。
「そういえばエナ……布?どれくらいもらったの?」
「うーん……結構たくさんかなぁ」
テーブルの上に出していくと……
「ん、すごいね」
「ねー……触り心地もいいし、目も細かくてベットとかにシーツみたいに敷いてもいいかも」
「ん……でもそれには小さいよ?」
「そうなんだよね……」
そう、1番大きなものでもバスタオルくらい。しかも1つだけしかない。
「パッチワークとかできれば色々大きさかえて使えるんだけどねー」
「……エナ、パッチワークって何?」
「あー……小さな布同士を縫い合わせて模様を作ったりできることかな?」
なんか説明足りてない気もするけど……そんな感じだったと思うんだよね。
「へー」
「リディ、やってみたい?」
「ん、ちょっと興味ある」
リディ、鱗の時も器用に作ってたしやりたいならやらせてあげたいけど……うーん。ユリスさんが工房から出てきたら糸も巣からとったそのままのやつがあるから針とか作ってもらえばできるのかなー?
「へー、だったらすぐにユリスに作ってもらえばいいじゃん」
「うわっ!キュリエルいつの間にっ!珍しいね、どうしたの?」
ひとりで来たのかな?
「うん、さっきから。リディたちは気づいてたよ」
「あ、そう」
「うん。ユリスが昨日の帰ってからずっと工房にこもりっきりでさー……僕のご飯が無いんだよねー。だからご飯食べにきたんだー」
「ん、わかった」
「そうなんだ……」
って、あれ?キュリエルって別にご飯食べなくても問題ないよね?私が家を買う前は何年も食べてなかったわけだし……
「リディ。できればユリスの分も用意してほしいなー?その時に針とか頼んでみれば?」
「ん」
「でもさ……邪魔じゃないかな?」
「んー……かもね?でも、ほっとくと何日も食べなさそうだし」
キュリエルって意外とユリスさんのこと大事に思ってるんだ……
キュリエルと早めの昼食を食べ、ユリスさんにご飯を届けつつお願いに行くのだった。
ま、忙しそうなら雑貨屋さんで買えばいいし……ちなみにお昼ご飯はサンドイッチでしたー。ユリスさんが簡単に食べられるようにリディなりに考えた結果らしい。うん、ブランが嫉妬しそうだね……
リディお手製のジャムが入ったやつすごく美味しかった……ほとんどブランとキュリエルに食べられてしまったけども。
恐る恐るお願いした結果、ミスリルでいいならと快諾してくれた。なぜミスリルかといえば今はこれで何か作りたいかららしい。うん、もうほとんど使い切っちゃって小さければたくさん作れるからって理由もあるみたい。
結局、ものの数時間でミスリル製の針とまち針、裁ち切りばさみと糸切りばさみを作ってくれた。うん、ものすごく切れ味がいいからリディが使う前からブランがハラハラしてる……
「じゃ、早速やってみようか」
「ん」
「リディは縫い物はじめて?」
「ん」
「まず、道具の説明からするね。えっと針は布を縫う為に使います。まち針は布を縫う時にずれないよう固定する為に使うかな。ほらまち針はお尻が平たく潰されてるでしょ?ってきれいなお花になってる!」
ユリスさんに作ってもらったまち針を見せつつ説明してたのに今気づいたよ。こういうところにまで気を配れるなんてやっぱ腕のいい職人さんなんだろうなー……便利に使いすぎてすいません。
本当はここまで教えなくてもいいかもしれないけどリディも楽しそうだからま、いっか。
「ん」
「こうなってれば固定してても、知らないうちに針が抜けて行方不明にならないよね」
「ん、ほんとだ」
「裁ち切りばさみは布を切る時に、糸切りばさみは糸を切る時に使うよ。分けてあるのは確か……切れ味が悪くなるからだったっけ?」
ん?ちがったかな?
「ん」
「あと、これ重要!使う前に針とまち針の数を確認しておくこと。使い終わったらちゃんと全部あるかチェックしてね!落としたりして知らないうちに怪我したら大変だから」
その時はポーションぶっかけるけどね……
「ん、わかった!」
リディは早速、針とまち針の数を確認している。
「ん……針は3本、まち針は10本」
「じゃ、はじめるけどいいかな?」
「ん!」
「まず、針の穴に糸を通します」
こうやって……えいっ……あれおかしいな……えいっ
「ん、できた」
「早っ!ちょ、ちょっと待ってね」
やばい、私元の世界でも糸通すの苦手なの忘れてた……糸通しが恋しい……
「ん、貸して」
「あ、ありがと」
リディさん、一発で糸を通してくれました。そして、玉止めやなみ縫いを教えるとあっという間に習得した。
ひとまずハンカチを作ってみたんだけど……っていうかハンカチサイズの布の端を縫っただけなんだけどね。
リディのは歪みも少ないきれいなハンカチ。私のはただの布(血液付き)だった。これ女神の心眼で出たからね。
だって指にめっちゃ刺さったし。ちょっと心が折れた。偉そうに教えておいて出来上がってみれば……ねえ?
血染めのハンカチなんて誰も使いたがらないだろうし。向いてないみたいだからやめようかな……ぐすん。
「リディ、楽しい?」
「ん、面白い」
「じゃ、布と糸はルールの書かれた下にあるチェストの引き出しに入れておくから好きな時に使ってね」
「ん、針もそこに入れる」
「わかった……くれぐれも気をつけてね」
「ん」
まぁ、ブランがしっかり見張ってくれるはずだから大丈夫だとは思うけどさ……
1
お気に入りに追加
308
あなたにおすすめの小説
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました
言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。
貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。
「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」
それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。
だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。
それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。
それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。
気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。
「これは……一体どういうことだ?」
「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」
いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。
――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる