113 / 120
第8章
113.女神見習いとポーションパウダー
しおりを挟む早速、冒険者ギルドへ納品に向かう……
「おはよーございます」
「おう、来たな?サブマスが待ってるぞ」
「あー、やっぱりそうですか。大丈夫ですよ!ちゃんと持って来ましたから!」
「そうか。もし持ってこなかったらここで作らされたかもしれないからな」
「えー……持ってきてよかった」
まずはいつものようにポーションを納品。
「ま、サブマスはもうすぐ来るだろうからポーションパウダーだっけか?それはその時でいいだろ」
「はーい……」
とりあえずお茶でも飲むか……と立ち上がった瞬間。
バーンッ!
ちっ、思わずビクッとしちゃったじゃないかー……見てあのサブマスの嬉しそうな顔。
「やぁ、エナくんやっと来てくれたんだね?待ちくたびれちゃったよー!あ、オークションのお金はまだだからねー」
「はぁ……」
カーラ達から聞いてまだ数日でしょ?やっとってなにさ……
「マルガス、ポーションの納品は終わった?」
「ええ」
「そう。なんかね?カーラくんに聞いてから、僕の奥さんにポーションパウダーについて聞いてみたんだけど守秘義務とか言って教えてくれなくてさー……しまいには怒っちゃうし。全然仕事が手につかなくってギルマスが大変だったんだよ」
「エナ……マジだぞ」
「えー……なんか責められてます?」
「ううん、責めてはないけど……」
いや、思っきし責めてますよね?そのジトーッとした目とか。サブマスよりもギルマスに迷惑をかけた気がする……正直、そっちの方が気になる。
「で、もちろん見せてくれるんだよね?」
「はい」
作っておいたポーションパウダーをサブマスとマルガスさんに渡す。
「薬包にしてあるんだな……」
「はい、持ち運ぶのに便利かと思って」
「そうだねー……で、マルガスどう?」
「ああ、エナのポーションと同様の品質と効果があるみたいだ。いや、それ以上か?」
「あー、煮詰める分微妙に効果が高まるっぽいんですよね」
「まじか……」
サブマスはおもむろにポーションパウダーをペロッと舐めた。
「うん、結構おいしいかも」
「そうなんですよー。ハイポーションは少し苦く抹茶のような味、マナポーションはさらに甘くなり、果実の甘さに近い味になったんですよね」
「……抹茶?」
あー、伝わらないか。
「苦いお茶って感じですかね?」
「そっか。マナポーションの薬包もくれるかな」
「はい」
2人が味見するのを見つつ今度こそお茶を入れることに成功した。
「うん、これならいいと思うけど」
「ん?何がですか?」
「これにも公認の印をつけることだよ」
おー、聞こうと思ってたやつ!
「ポーションパウダーはかけて包帯などで巻いておくか水で練って巻いておくとしばらく経つと効果を発揮するんですよ。即効性はポーションですけど、ポーションパウダーはじわじわと効いてくるのであらかじめ逆算して、体にかけて包帯で巻いておき、戦いの最中で魔力切れになる前に回復とかもできそうですよね?」
「エナ、お前また変なこと考えるなー」
「でも面白いこと考えたね。速効性のあるポーションと遅効性のパウダーか」
「いやー、そうすればポーションをかけたり飲む時間で命の危機を避けられるかなーって……ただの思いつきなので本当にそれがいいとは限りませんけど」
若干、マルガスさんが呆れ気味だけどスルー……
「うんうん、そうだね」
「でも、パウダーの方が作るのに時間かかるんですよ」
「そうか」
「液体と粉、それぞれにメリットデメリットがあって瓶の場合かさばるけどすぐ飲める。薬包はたくさん必要なときは小さいのでかさばらないけど慌てるとむせるので水などで流し込む必要があるってことですかね」
「確かに……」
「商業ギルドで製法の特許を取得してあるんですけど、全然売れてないんです」
「うーん。ポーションパウダー自体初めて聞いたからな……」
「そうだねー。公認の印つけて売り出したら結構すぐに広まると思うけど」
そうかー……でもなー。ポーションの方が簡単に作れるんだよなー。
「とりあえず今日持ってきた分は売ってね」
「あ、はい」
断ることはできない雰囲気ですね。ポーションパウダーの初級とマナポーションのパウダーの初級を渡す。
「これで全部ですね……あ、これに公認マークつけていいんですか」
「うん、かまわないよ」
やったー。早速マークをつけていく……数が少ないのですぐに終わった。
「今度からこっちも持ってきてくれると嬉しいな。あと、エナくんの従魔になったスライムも連れてきてほしいなー」
「はい、頑張ります……ん?ライムをですか」
「うん、エナくんの従魔見てみたいし」
「はぁ。機会があったら……」
だって、ライムが嫌って言ったら無理だし……
「ま、パウダーは無理はしない程度でいいぞ……従魔は管轄外だ」
マルガスさん面倒なことになりそうだから関わらない気ですね?
「わかりました。あ、そうだ。ギルドってジャム用の瓶とか売ってます?」
「売店で売ってることは売ってるが……どれくらいの量がいるんだ?」
「うーん……たくさん?」
「はぁ。だったら街中の雑貨屋で買った方がいいだろうな」
「そうですか。わかりました……マルガスさん、これを」
「なんだ?ポーションか?」
「はい。ギルマスに……」
マルガスさんはそれだけで察してくれた様ですんなりと受け取ってくれた。
「え、なになに?エナくん、ギルマスに賄賂はいけないなぁ」
「違いますよ。なんだかご迷惑かけたような気がするので迷惑料ですよ」
「それなら、俺も欲しいくらいだ」
「マルガスさんたら、またまたー」
あれ、なんかめっちゃ真顔なんだけど……冗談じゃなくて本気?まじかー……
「だったら、私も欲しいなー。奥さんに怒られちゃったのはエナくんにも関わりあるし」
「アー、ソウデスネ」
ポーションをマルガスさんとサブマスそれぞれに渡す。うん、マルガスさんには迷惑料として、サブマスは渡さなかったら後が怖そうだから……ね。
「じゃあ、帰りますね」
「ああ、気をつけてな」
「またね」
「はい」
なんだかとっても疲れた……冒険者ギルドを後にし、市場で果物を大量に購入。その後雑貨屋さんでジャム用の瓶をたくさん購入。サイズもいろいろあってよかった。リディが喜んでくれるといいなー。
「早く帰ってリディ成分補給しよーっと」
1
お気に入りに追加
308
あなたにおすすめの小説
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。
王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。
なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。
二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。
失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。
――そう、引き篭もるようにして……。
表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。
じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。
ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。
ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。

放置された公爵令嬢が幸せになるまで
こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる