異世界トリップしたら女神(見習い)でしたが一般人として自由に生きていこうと思います

瑞多美音

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第8章

109.女神見習い、仲間が増える(1)

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 瞬間移動したい衝動に駆られつつも我慢して歩いていると……血を流している子供とその側でおろおろしている母親が目に飛び込んできた。

 「ジョセフ、あれ……」
 「ああ、行くぞっ!」
 「「「「わかった!」」」」

 2人の元へ駆け寄ると

 「助けてくださいっ」
 「どうしたんですかっ?」

 子供の怪我は結構ひどく……衰弱しているみたい。

 「突然ホーンラビットがっ!狂ったように襲ってきたんです」

 ホーンラビット?そんなに好戦的じゃないはずなのに……まぁ、いい。それは後で考えよう。

 「エナ、ポーションは?」
 「ごめん……今は初級ポーションしか手元にないわ」

 こんなことなら中級ポーションたくさん持って来ればよかった……

 「いくら襲ってこない魔物が多いとはいえ血の匂いで寄ってこないとも限らないぞ」
 「とりあえず初級でもいいからっ!エナのポーションならもしかするかもしれないでしょ!」
 「わかった!」

 ストレージから初級ポーションをどんどん取り出しカーラたちに渡していく。でも、この怪我は初級じゃ治らないかもしれない……カーラたちは慣れた手つきで止血し、ポーションを飲ませたり傷にかけているが、やはりあまり効果がないみたい。

 「このあたりに教会はないよなっ?」
 「ええ……街に戻るしか」

 親子の住んでいる村には回復魔法を使える人がいないらしいし、街に戻ると言ったものの走っても結構な時間がかかる。
 薬草もないし……あっ、ポーションパウダーなら前に作ったのがあるかも……確かどっかのポケットに入れたのが……あった!
 そうですあれです……特許を取得したのに全く音沙汰がないので何度か作ったけど使い所がなく放置していたあれ。
 今、手元にある中級は薬包のみ。傷にかけたとしても一応飲んだ方が確実なんだけど、幼い子供には粉は厳しいだろうな……いや、最近ポーションに頼りきりで回復魔法使ってないからレベル的に治るか微妙なラインなんだよね。それだったら確実性のある薬包のがいいと思うんだけど……うーん……

 「あ、そうだ!ちょっと待っててー」

 とりあえず、ポーションパウダーを傷にぶっかけてそばにいたステラにあちこちのポケットから取り出した薬包をいくつか渡す。
 これで時間を稼げるはず……そして近くの草原に走る。行きがけに見かけたからいるはずっ!ていうか頼むから居てっ!

 「おい!エナっ!カーラ、俺も行く!」
 「ええ、ルカ。エナには何か考えがあるはず……気をつけて!」
 「すぐに戻ってくるからそれまでその薬包の中身、傷にかけておいて!」
 「「「わかった!!」」」


 息切れしながら目当てを探す……

 「はぁっ、はぁっ……あ、いたっ!」 
 「おい、エナ……あれって」

 ふと、元の世界でのコマーシャルを思い出したのだ。苦い粉薬をゼリーで包んで飲み込むというコマーシャルを。そう私の目当てはスライムである!

 草原にはピョンピョン飛び跳ねるスライムがあちこちに見える。スライム属性は色で判断(赤/火・青/水・緑/風・茶/地・黄色/光・紫/毒持ち)できる。
 スライムの色が混ざっている場合(赤黒い場合は何か消化中をのぞく)は、大概スライムが進化している場合が多い。2つの属性が使えるようになっているらしい。
 あ、これは行きにカーラたちに聞いたから確かだよ。とりあえず紫は避けて……でもなー、襲われてもいないのにスライム倒すのはなんとなく気が引けたので物は試しに

 「スライムさーん、ゼリー分けて!」

 と言ってみたが……無反応だった。
 そばにいたルカの呆れた顔は見なかったことにしよう。
 はぁ、時間もないし倒してスライムゼリーゲットするしかないのかぁ。と残念に思っていたら奥のほうから他のスライムよりひときわ大きな黄緑色のスライムが……ピョンピョンと近寄ってきた。

 「エナ、気をつけるんだ」
 「わかってる」

 スライムの一挙一動を見逃さないように注意深く観察していると……きゅ。手のひらほど量のスライムゼリーをこちらに差し出してくれた。

 「もらっていいの?」

 スライムは肯定するようにぷるんと揺れた。

 「わーい。ありがとう!」

 念のため、お皿に受け取ったゼリーを物が溶けたり体に害がないか女神の心眼で確認するとスライムゼリー:食用可能ってなっているので安心だ!
 万が一に備え味見してみる……おお、平気だ。さわやかな味がする。本当に美味しいゼリーだ。

 「ルカも食べてみる?」
 「いや、いいよ……」
 「そっか、じゃあ早く戻らないと」
 「あ、ああ……」

 走ってみんながいる場所まで戻り、さっそく匙にゼリーを乗せポーションパウダーを包み子供に飲ませる。

 「はい、これで包めば飲みやすいでしょ?大丈夫だよ、無害だから!」

 ((((そこじゃないだろ))))

 「ほら、早くっ」
 「エナ、本当に無害なのよね?」
 「大丈夫!私がちゃんと味見したから!」
 「そう……わかった」
 
 ……若干、子供のお母さんが引いてた気もするけどそんなの気のせいだよね?それで命が助かるなら安いものでしょ?

 ゼリーを飲み込んで飲んでしばらくすると血も止まり男の子の怪我もほとんど治ったみたいだ……よかったよかった。

 「念のため数日は安静にさせてくださいね」
 「そうですよ。いくら怪我が治っても流れた血は元に戻ったわけじゃないので……」
 「は、はい!ありがとうございました」
 「お兄ちゃん、お姉ちゃん、ありがとう」
 「おう、元気でなー」

 母親に背負われながらもこちらに手を振りつつ去っていく男の子をしり目にそわそわ……私の後ろにはさっきのスライムさん。なぜか私とルカの後を付いてきて背後でずっとピョンピョンしてたけど、こちらを襲うでもなく大人しくしていた。
 多分、襲ってきてもルカやジョセフが対応できるようにはしてたみたいだけど……
 それにしても……このスライム、言葉がわかるのかな?他の小さなスライムは反応してくれなかったけど、このスライムだけスライムゼリー渡してくれたもんね……わくわく。
 はっ!この子を連れて帰ったらスライムゼリー食べ放題かな?じゅるり……


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