108 / 120
第8章
108.女神見習いとカメ
しおりを挟む少し休憩を取ってからダンジョンへ
「じゃ、行くぞ。くれぐれも気をつけて安全第一な!」
「おう」
「「ええ」」
「はい!」
数時間後……
「はあ、疲れた……でもカニはゲットしたぞ……」
私ひとり疲れ切っているのをよそにカーラたちは……
「思ったより魔物が少なかったよね?最近誰かがダンジョンに潜ったのかなー」
「……それは物好きだね」
はぁ……カニ狙いでくるのは私だけじゃないのか……まぁ、全滅してはいなかったから許してやろう!
「あー、それは俺も思った。カメやカニの数もいつも以上に少ない分、不意打ちがあんまなくて助かったけど」
「そう言われれば装備の消耗も少なくて済んだな」
特にルカは盾で動きを止めたりするのでこのダンジョンでは何かしら壊れるとのことで予備の防具や武器が必須なんだって……さすがにそれは自分で背負ってたよ。いざという時私に出してもらってて命取りでしたなんてシャレにならないって。
「ふふ、そうよねー。ルカはいつもは諦めてた甲羅もゲットできたしね」
「ああ、エナのおかげだ」
ダンジョンではカメはなるべく避け、カニだけ全滅する勢いで倒したのは言うまでもないが……
いつもはカメの魔物をうまく倒せて甲羅に傷がなくても重量のせいで持ち帰るのを諦めてたらしいけど、今回は遠慮がなかった……うん、一応ショルダーの口から入れてるように見せてたんだけど……カメの甲羅入らないよね……え?なんとかしろ?はぁ……影でゴソゴソしつつストレージへ入れましたよ。
甲羅で盾とか作ったら結構いいらしい……ルカの熱量がすごかったよ。多少の傷はあっても自分で使うなら問題ないからルカは張り切ってたよね……
ユリスさんお土産にいるかな?ま、適当に持って帰ってまた分ければいっか……ってせっせとカニや避けられなかったカメの甲羅や爪を拾い集めていたら……あ、もちろん結界はしっかり張ったよ。
「なんか結構な量になってるんだけど……これでいつもより少ないとか……まじでカニ食べ放題じゃん!」
「その分、危険……」
「ああ、そうだった……私ひとりじゃ無理だわ」
「そんなことないと思うけど……」
「ええ、エナならやりかねないわね」
うん、今回私はほぼ荷物持ちだった。
一応、攻撃参加は非常事態のみでほぼしないが、荷物持ちと回復役でいいというのでお言葉に甘えさせてもらった。
ポーションの材料は分けてもらうけど、その分装備品(ダンジョンなどでは冒険者の遺体はギルドカードのみギルドに提出義務があるものの、その遺体が所持していた武器や防具、素材やお金は発見者の自由にしてよいとされる)や素材のドロップは私以外で分けることで話が付いた。
そのほかは均等に山分け、困った場合はその都度相談。まぁ、このダンジョンにはポーションの材料になりそうなものはなかったので相談して分けることになると思う。
「はぁ、エナ……もしかしてこの前みたいに手当たり次第拾ったの?」
「ん?そうだけど?カニは捨てるところないんだからね!」
「「「「はぁ……」」」」
「あ、もちろんルカの甲羅も拾ってあるよ」
「ありがとう」
「でもさー……甲羅も結構あるからちょっとお土産にもらっていいかな?もちろんルカが選んだ残りでいいから」
「ああ、それは構わないけど」
「ってか、ルカが選べるほど拾ったのか……」
「多分、ドロップしたの全部拾ったんじゃないかな?」
「まじか……」
「……カニへの執念」
「俺たちの戦闘の邪魔にならず知らぬ間にドロップ回収できるとか……そのスキル地味にすげーよな?」
「そうよね。本人は全くすごいと思ってなさそうだけど」
「……時々影でゴソゴソしてたのは知ってる」
「それは、きっとマジックバッグに入れるのを見られたくなかったんじゃない?」
「確かにあれほど量が入るのは貴重だからな……」
「「「「それにエナだし……」」」」
ユリスさん、この甲羅リディが持てるくらい軽量にしてくれたら1人でウロウロしても安心なんだけどなー……さすがにブランは無理だ甲羅につぶされる。
なんせこの甲羅ブラッドベアの攻撃を1度くらいなら耐えられるんだって。さらに上手く加工すれば強度も増すらしい……ただ職人の腕がいるらしいけど。
全体的に深緑でところどころがこげ茶のアクセントな模様ついている甲羅……この色なら地味だし嫌がらないかなーって。うん、ブラン的には鱗で派手でも防具を強化させたかったらしい……ドーラに鱗をあげて以降、時々バサバサされるんですわ。
ユリスさんならなんとかしてくれないかなー……いざとなったら甲羅を分割して腕につけるサイズにしてって頼んでみるか……それならいくつも作れるはずだし店舗におけるかも……
「エナ。なにやら考え込んでるところ悪いけど、そろそろ出発しないと今日中に戻れなくなるよ」
「あ、ごめん」
「大方、噂の相手を思ってたんじゃねーの?」
「こら、ジョセフ!そんなストレートにっ」
……噂の相手?あー、公認さんて噂してる相手ってことか。
「……エナ、全くわかってないみたいだよ?」
「そうみたいね……」
「ん?なにが?」
なぜかメンバーは呆れ顔で
「「「「なんでもない」」」」
「そう?」
「はぁ、とにかく出発するぞ」
「はーい」
はぁ……また歩きで数時間かー。まぁ、ストレージのおかげで荷物が最小限で済んでるのが幸いか……ルカみたいに予備の武器を背負ってたら今日中に帰れない自信あるわ。
「エナ……真ん中」
あ、はい……帰りもそうなのね。行きと同様にジョセフとルカが先頭、私とステラをはさみカーラが最後尾となった。
よし、帰ったらカニ料理三昧だ!頑張って歩くぞー、おー!
1
お気に入りに追加
308
あなたにおすすめの小説


神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました
土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。
神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。
追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。
居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。
小説家になろうでも公開しています。
2025年1月18日、内容を一部修正しました。
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のルナリス伯爵家にミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる