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第7章
95.女神見習い、少女の誕生日を祝う(2)
しおりを挟む当日ーー
「おはよー」
「ん、おはよ」
サプライズがバレないよういつも通りに結界のチェックを済ませ、朝ごはんの準備……といってもストレージから出せば出来たてほやほやだから私はお皿に移すだけの簡単な作業だけどねー。
リディが起きてきたら呪いを減らすために浄化をかけて、さらにネックレスに魔力を込める。
「そういえばメルさんがもうすぐ帰っちゃうんだって……」
「……そう」
「だから、今日の晩ごはんはアルさんとメルさんが美味しいご飯を持ってきてくれるって。今日は朝早くからお仕事に行っちゃった」
多分、仕事を早く終わらせてリディのご飯とかケーキとかプレゼントを用意するつもりなんだろう。
「ん、わかった」
「あ、そうだこれからはポーションはこっちの解呪ポーション飲んでね?棚にいくつか置いておくから……」
「ん」
よし、これでリディが料理しなくて済む……解呪ポーション1本で呪いの数値500も減るんだからたくさん飲ませたい気もするけど、数に限りがあるからなぁ……悩みどころだわ。ってことは、これからもあのダンジョンに行かなければいけないということか……ダンジョン内は流石に瞬間移動できないけどそのそばまでなら地図も登録したからいけるはず……うーん、その時はカーラさんたちを巻き込むって手もあるな。
いつも通り、畑の世話やポーションを作り過ごす……
夕方にブランやアルさん、メルさんにお願いして、リディの気をそらしてもらう……その間にテーブルセッティングを済ませユリスさんとキュリエルを迎えに行く。
「キュリエルー、ユリスさん!行けますかー?」
「僕は行けるよー」
「はい、大丈夫です……その前に短剣のチェックをお願いします」
ユリスさんから受け取った短剣は見事な出来だった。
「うわー、すごいです!さすがですね!」
「ありがとうございます。それでこれは私から……」
ユリスさんは短剣にぴったりあう鞘を作ってくれたらしい。
「いいですねー!」
「あ、僕はこの短剣と鞘に加護を付けといたよー」
「そうなの?ありがと。じゃあ早速行こうか……ユリスさん、あんまり驚かないでくださいね」
「……?は、はい」
案の定、驚いてたけど……キュリエルがフォローしてくれた。珍しい……あ、もしかしてキュリエルも神様に会うから緊張してるのかな?ていうか、ユリスさん……アルさんとメルさんのこと神様だって気づいてないな……まぁ、いっか。
メンバーも揃ったことだし、いよいよ誕生日パーティーだ。
ブランに連れられリビングにリディが来た!
「せーの」
「「「「「リディ!お誕生日おめでとう!!」」」」」
「……知ってたの?」
「そうだよー。ブランが教えてくれたの」
「ありがと」
「ご飯はワタシが用意したのよ」
「うむ、ケーキはわしからじゃ」
「ん、ありがと」
美味しいご飯を食べた後は
「そうだ、これ……リディにプレゼントだよ」
「……短剣?」
もう見習いも卒業の歳になったし……少し心配だけど、ナイフ以外にちゃんとした武器を持ってもいいかなって……なにか形に残るものをあげたかったっていうのも大きいけど。
「うん、短剣は私とブランから。鞘はユリスさんから」
「僕は加護を付けたから!」
「きれい……ありがと」
「じゃ、わしの番じゃな……じゃじゃーん」
「ん、ローブ?……アルさんありがと」
「うむ、ちゃんとフードが付いておるものにしたからの……わしも加護を付けてあるからな」
「ん」
「ワタシはね……じゃーん!!」
メルさん、じゃーんと言いつつ次々と出している……うん、洋服一式かな?しかも高価そうなドレスだ。でもドレス自体はシンプルで、メルさんがそばに出したリボンや飾りを変えることで楽しめる仕様らしい。
「ん、ありがと」
「もちろん加護は付けてあるわ!サイズも自動調整されるから長く使えるわ!」
「おお、そうじゃ。わしのも自動調節されるから安心せい」
「……ん」
自動調節なんて、初めて聞いたわ……さすが神様。
「そうだ、ケーキ食べよう」
「ケーキってすごく貴重なのでは?」
「うむ、わしが準備したからそんなに貴重じゃないぞ」
いや、神様が準備したケーキは十分貴重だと思う。
「まあまあ……早く食べましょうよ?」
「ん……」
リディさん、私だって切り分けるぐらい……わかったよ
「ユリスさん……切り分けてもらっていいですか?」
「はい!」
おおー、ほんの少しリディに大きくした以外ほぼ均等に切り分けた。なにそのスキル……すげぇ。
「ん、甘くて美味しい」
「そうだね。美味しい」
元の世界と比べるとやはり、違うけど……美味しい。甘いものジャムパイ以来かも……
「そうかの?それはよかった」
「んー、さいっこう。アル、やるじゃない」
「メルのご飯もなかなかじゃったぞ」
ふたりはユリスさんを巻き込んで酒盛りをはじめた。うん、ユリスさんお酒強いらしいし、神様と酒盛りなんてそうあることじゃないからほっといてもいいか。
飲みっぷりが気に入られて加護が授けられるのまであと、数時間……
まあ、あそこはほっといて……
「リディ、どうした?」
「……エナの誕生日は?」
「ん?そういえばとっくに20歳になってたな」
あれ、お酒も解禁していい年だなぁ……でも、お酒より美味しいご飯に心惹かれるんだけど。
「そうなんだ……いつ?」
「7月20日だよ」
「ん、今度は祝うね」
「ありがとう」
そういえば、13歳になったからギルドの後見人も必要なくなるな。
「リディも13歳だから、冒険者ギルドの見習いも終わりだねー」
「ん」
「見習い終わったらリディ、どんどんランクアップしそう……」
「……そんなことないよ?」
「今度、ギルドで見習い登録解除してもらわないと……」
「ん、わかった」
こうして、リディの誕生日パーティーは大成功に終わったのだった。
◇ ◇ ◇
そういえばアルさんやメルさんが何故か自分の木像を作って庭に飾っていた……これをどうしろと?
丸太からこれを作ったのかぁ……なんかふたりでわいわい作ってて楽しそうだとは思ったけど、これを作れるなんてすごいなぁ……とりあえず心眼
-----
〈大地神アルネルディの木像〉
大地神アルネルディ自らが作り上げた木像。半径100メートル以内の土地に加護がつく。
〈愛の女神メルディーナの木像〉
愛の女神メルディーナ自らが作り上げた木像。半径100メートル以内にいる人物の人間関係が上手くいきやすくなる。
〈ベンチ的な何か〉
丸太を加工したベンチ?やや傾いているが座れないことはない。
-----
おお、並びにあったからつい……何かって……ベンチだから!
「それにしてもこんな効果のあるものを作ってくれたなんて……」
「ん、どうしたの?」
「いや、アルさんとメルさんが木像作ってたみたいで」
「……そう」
「ご利益ありそうなんだわ」
「ん、これでアルさんとメルさんが帰っても寂しくないね」
「そうだね」
後日、さらに他の神様の木像が増えていて驚いたのはまた別のお話。
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