異世界トリップしたら女神(見習い)でしたが一般人として自由に生きていこうと思います

瑞多美音

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第7章

90.女神見習い、ダンジョンへ行く(6)

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 「着きました。あ、ちょっと待ってくださいねー。キュリエルいるー?」
 「いるけど、誰そいつー」

 (せせせ、精霊?)

 「うん、まぁ、事情があってねー。すぐ出るから大目に見てあげて……ユリスさんは?」
 「えー、じゃあ貸しひとつね……ユリスったらつまらないんだよ。ずーっと工房にこもりっきりでさ……いたずらしてもいいかな?」
 「はいはい……キュリエルそれはやめてあげて……ジョセフ行こう」
 「え……お、おう」

 家を出てジョセフの家に急ぐ。ちょっと道に迷いそうになったけどジョセフがしっかり案内してくれた……あれ、私わざわざ行かずともこの街に来た時点でポーション渡せばよかったのでは?
 いや、ジャックの様子も気になるしこれでいい。

 「ただいまっ! ジャックは?」

 ジャックが寝ている部屋から帰ってきたことに驚いた様子のお母さんが出てきて

 「ジョセフ、こんなに早くどうしたんだい……ジャックは……」

 明らかに沈んだ表情に背に冷たい汗が流れる。

 「ジャックは今日か明日が峠かもしれないって……」
 「まだ生きてるんだよなっ」
 「ジョセフ帰ったか……ああ、ジャックは頑張ってるぞ」
 「お邪魔しますね。ジョセフ早く飲ませてあげて」
 
 ストレージから解呪ポーションを手渡す。

 「ああっ!」
 
 ジャックがいる部屋へ跳び込み、ジョセフがポーションを飲ませようとするがなかなか飲んでくれない。
 仕方ないのでポーションを数本取り出し体にジャバジャバ振りかけてみる。
 すると、うっすらと意識を取り戻したので

 「ジョセフ、早く飲ませてあげて」
 「わ、わかった」

 すると少しずつだがしっかりと飲んでいく。

 「ふぅ……これでひと安心だね。服とか寝具とか濡らしてごめんなさい。あとこれはジョセフの装備ね」


 とんでもないとジョセフやその家族に感謝され翌日また尋ねることを約束し別れた。
 
 「今日こっちに泊まるから借りはなしね」
 「もーしょうがないやぁ」

 キュリエルも何だかんだ満足そうなのでたまにはいいかと思いつつ、緊張と体力的な疲れもあり布団に潜り込んですぐに深い眠りにつき、翌日目が覚めたのは昼前だった。

 「うわー……寝すぎた」

 朝食兼昼食をしっかり食べ、1度森の家に顔を出しすことにした。
 というのもジャックに効いたポーションがリディにも効くことを確認したかったのだ。

 「ただいまー」
 「「「おかえりー(なさい)」」」
 「あれ、なんでアルさんもメルさんもまだいるんですか?」
 「昼休憩じゃ」
 「そうそう。ちゃんと朝のうちに仕事はしてきたから安心して」

 ははーん。リディに少しでも懐いてもらおうとしてるのか。

 「そうですか、リディこれ作ったから飲んでみてほしいんだけど……」
 「……ん」

 早速昨日調合した解呪ポーションを飲んでもらう。

 「おっ、効果あるようじゃな」
 「よかった。味変じゃない?大丈夫?」
 「……ん、平気」
 「そう?よかったー。ジャックの件もあるから今日もお願いしていい?」
 「ん」
 「まかせといてよ。私がいるから平気よねー」
 「くれぐれも無理はさせないでくださいね?夜には戻ってくるからね」
 「ん、わかった」

 ブランがいれば大丈夫だと思うけど念のため2人に託してから街へ戻る。

 ジョセフの家を訪ねようとギルド付近に着くとパーティメンバーがいた。

 「エナ!」
 「あれ? もう戻ったの?いくらなんでも早くない?」
 「そうなんだけどね……やっぱり心配で夜が明けてすぐに出発したのよ」
 「そうそう。今ギルドに馬や馬車を返したところだったんだ」
 「そうなんだ」
 「今からジョセフの家行くとこだった」

 2人分の重さも減ったこともあり、行きよりも早く移動できたらしい。

 「そっか。私も今から行くところだったの」
 「じゃあ一緒に行こうか」
 「はい」

 ジャックの部屋を訪ねると無事回復し今朝もメルさんの浄化と回復魔法を受けたおかげでほとんど元どおりのようだ。
 へー……メルさんちゃんと仕事してたんだとか失礼なこと思ってしまった……ごめんなさい。

 「エナ……本当にありがとう。エナのレシピのおかげで弟の命が救われた」
 「えっと……エナさん、ありがとうございます」
 「私たちからもお礼を言わせて……本当にありがとう」
 「「ありがとう」」
 「お嬢ちゃんはいつでもどんな量でもタダで持ってていってくれよな」
 「そうだね……ジャックが元気になったんだ。それくらい安いものさ」
 「ええっ、それは悪いですから」
 「いやいや」

 少し照れくさくなり話を変えることにする。

 「あ、そうだ。ドロップ品の分配もまだだけど、どうします?」
 「「「「いらないよ、ジャックが回復しただけで充分だから」」」」
 「だめですよ、はじめに約束した通りポーションの材料以外は等分でしょ?」 

 ただでさえ魔結晶は貴重なのに……

 「わかったわ、でもエナが欲しいものがあるなら優先させる。これは譲れない」
 「えー、特にないですよ。ほとんど買い取ってもらうつもりですし……あ、でも畑にまける土は欲しいです」

 だってゴーレムからドロップした土(上質)とか撒いたら美味しい野菜とか、効果の高い薬草とかゲットできるかもしれないし……

 ((((つ、土って……))))

 なんかみんな呆れ顔なんだけど、なんで?

 「ここまで欲がないとは。しかもあの重たくかさばるだけで欲しがる人もいない土を律儀に持ち帰り、それが欲しいというなんて」
 「遠慮してるとしか思えないよ」
 「ねえ、もうこっちで勝手に分けちゃいましょ」
 「そうだな~。買取が高いものを多めにエナに渡せばいいんじゃないか?」
 「そうと決まったらカーラ、よろしく」
 「というわけでエナ、今回ドロップしたもの出してもらえるかしら。あと土はエナさんが欲しいのであれば全て受け取ってくれるとありがたいわ」
 「え、でも……」

 かなり量あるし悪いよ……

 「というより、みんな畑とか持ってないからもらっても困っちゃうの」

 あー、そうか。

 「では遠慮なくいただきます。ドロップ品……ここで出す?そこそこの量あるんだけど」

 そう、ここ未だ弟くんが寝てる部屋なのよ。いくら元気になったとはいえ万全じゃないはず……ゆっくり寝かせたほうがいいと思うし。

 「そうだった」
 「じゃ、リビングへ」

 リビングに移動しドロップ品をとりあえず魔物ごとに山を作って出していく。

 「なんか占領しちゃってすいません」
 「いやいや息子の命の恩人なんだから遠慮すんなよ」
 「そうよ、好きに使って」

 ご両親はここしばらく休んでいた屋台の仕事を再開するための買い付けに出かけてしまった。


 「極力戦闘を避けたつもりでも結構な量あるものね」
 「まぁ、ゴーレムには魔物避け効かなかったからなぁ」

 土以外を出してもかなりの量がある。ちなみに岩とか石もいらないというのでストレージの中……何かに使えるだろう、多分。

 「こんな感じですかね……」
 「カーラよろしく……」
 「結構時間かかるけど大丈夫?」
 「あ、特に用事はないので平気ですよー」
 「じゃあ、お茶でも飲んでゆっくり待っててくれ」
 「ジョセフ、私手伝う」
 「ありがと、ステラ」
 「では、俺はカーラを手伝うとするか」
 「もうっ、ルカったら張り合わなくてもいいのに…」

 な、なんか部屋中に甘い雰囲気が広がっていく……べ、別に、平気なんだから、ぐすん。

 途中、カーラが私とパーティで2つに分け始めたのをなんとか説得し5等分にしてもらった。
 結果、均等とはいえかなりの素材や魔核を手に入れることができた。
 魔結晶も結構あったから分けようとしたけどそれは約束が違うと断固受け取ってくれなかった、ぐすん。
 でも、なんと言ってもジョセフの弟の命を救えてホッとした。あー、よかった。
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