異世界トリップしたら女神(見習い)でしたが一般人として自由に生きていこうと思います

瑞多美音

文字の大きさ
上 下
70 / 120
第6章

70.呪われた少女と美味しい魔物(1)

しおりを挟む

 キュリエルと別れ、森の家の庭に瞬間移動し、リディたちが待つ家へ入る。

 「ただいまー」
 「ん、おかえり」
 「今日は変わったことはなかった?」
 「ん、野菜収穫した」
 「そっか……私はあったんだよね」
 「ん……なに?」

 とりあえず、ソファに座りつつ

 「あのね、街のなかにある家を買いました」
 「……家」
 「うん、色々あったんだけど……その家には精霊がいてね。お願いされて根負けしちゃった」
 「……ん、エナはそっちに住むの?」
 「ううん、そうじゃないよ……まぁ、時々は泊まるかもしれないけど、この家に住むよ」
 「ん、よかった」
 「うん。それに街なかに家ができたら直接瞬間移動できるようになったから便利だよー」
 「ん」
 「今度、精霊……キュリエルって言うんだけど……紹介するね」
 「ん、わかった」

 ミートパイの美味しさに目覚めてから、親父さんによく頼むようになったパイやスープなど夕飯の用意をしつつ

 「あ、そうだ。今日カーラさんがそろそろ羽をお願いしますって言ってたよ」
 「ん、でもあんまり溜まってない」

 こらこら、ブラン……抜かなくていいから。ハゲちゃうから。

 「そうかー」
 「でも、今日仕留めた魔物持っていく。でも大きいから……どうしよう……」
 「ん? 変わったことはなかったんじゃないの?」
 「ん……今日野菜収穫してたらエナの結界のすぐ外に弱ってる魔物がいたからブランと一緒に仕留めた。今、家の裏に置いてある……重たかった」
 「そ、そう……」

 あれ、これってまたマルガスさんに呆れられるやつかな?

 「ちなみに、なんの魔物かな?」
 「よくわかんない……でっかい熊」 


 ま、まさかのブラッドベアですかね!?じゅるり……

 「ねぇ、ちなみに解体とかはした?」
 「ううん……そのまま」
 「よし、ご飯食べたら見に行ってもいい?」
 「ん」

 はやる気持ちを抑え、美味しいご飯を満喫……もぐもぐ、うまー。

 リディにランプを渡し、《ライト》をつける。魔物が置いてあると言う場所へ行くと結界ギリギリの場所に引きずり込まれていた。こりゃあ、運ぶのすごく大変だったはず……

 早速、『女神の心眼』で確かめる。

-----

〈ブラッドベアの亡骸〉
 鋭い牙と爪を持ち好戦的で危険な魔物。
 素材は防具や武器になったり魔法の触媒や魔道具に使用されることもあるため、高価買い取りされている。
 肉は食用可能で大変美味しい。

-----


 「おおー、やっぱりブラッドベアだっ!」

 うん、なわばり争いにでも負けたのかな……毛皮に鋭い爪痕がいつくか残っている……これだけ傷があれば買い取り下がるかもなぁ。
 眉間に突き刺されたような痕があるので、リディが気をそらしブランが特攻したんだろう……うん、すごいね。


 「あのね、リディ。このお肉『黄金の羊亭』に持って行くと……ものすっごく美味しくなるんだ……だからお肉をわたしに買い取らせてくれないかな?」
 「ん、エナにあげる……」
 「それはダメだよ。ふたりで頑張ったんでしょう?」

 ほら、ブランもそう言ってるじゃない。

 「ん、わかった。小銀貨1枚でいいよ」
 「いやいや、それでも安すぎだから……」

 結局リディがそれ以上受け取ってくれなかったので、ブランと相談してリディ貯金に銀貨1枚入れておくことにする。

 「じゃあ、さっそく解体してもいい?」
 「ん、お願い」

 解体するとあっという間に魔核、牙、爪やお肉に分けられた。

 「すごい」
 「ん? これ、解体スキルのおかげなんだよね」
 「へえ……」
 「じゃあお肉はわたしがもらうとして、素材はリディの好きにしてね。売ってもいいし、持っててもいいよ」
 「ん、エナならどうする?」
 「んー……私は前の時は魔核だけ残してあとは売っちゃったけど、リディが魔核がいるかどうかだよね」
 「……ん、魔核以外を売ることにする」
 「そっか……」

 でもなぁ、リディまだ見習いだから討伐依頼は受けられないんだよな……素材買い取りだけでもかなりの額にはなると思うけど……よし、マルガスさん達に相談だな。

 「じゃあ、素材はリディのバッグに入るかな?」
 「ん、大丈夫」
 「あれ、リディのバッグって時間経過するっけ?」
 「ん、わかんない……」

 早めに売ったほうがいいかな……うーん。

 「じゃあ、さっきのスープ入れて冷めるかどうか確かめてみよう」
 「ん」


 結果……時間経過しませんでした。アルさんの張り切りすぎっ……いや、ありがたいけどね。

 「リディ、このバッグのことは無闇に人に教えちゃダメだよ。子供だからって狙われたりしたら困るからね」
 「ん、わかった……でも、ブランが守ってくれるって」

 うん、まぁそれはそうだろうけど……

 「じゃあ、次に私がポーション納品するときにでも一緒に行こうか?」
 「ん……ブランもそれまでに羽溜めとくって」
 「そう……」

 ブラン、もしハゲができていても見ないふりするね……

◇ ◇ ◇


 人に見られる心配なく、瞬間移動が使えるなんて今までの苦労が何だったのかなってほど、楽。
 街の家には噂のせいで人はほとんど近寄ってこないし、もし何かあっても精霊のキュリエルが追い払ってくれるし……

 「だれ?」

 えー、こちら現場のエナです。現在、精霊と少女の初対面中……あ、ふざけるのはここまでにして

 「おはよう、キュリエル。彼女はリディ、あとこっちはブランね。前に話した森の家に一緒に住んでる子だよ」
 「ふーん」
 「それであの子はキュリエル。精霊でこの家を守ってるんだって」
 「ん」

 キュリエルは追い出したりせず、ふたりは見つめ合っている。

 「ん、よろしく」
 「まあ、いいか。よろしくー」

 ふぅ……何事も起こらずよかった。ブランのリュックを見つめたキュリエル……

 「ねぇー、僕もあんなの欲しいなぁ」

 そう言われた途端、ブランが前に出てキュリエルに自慢げに見せつけている。

 「えー……かなり体の細かなサイズとか必要だし、職人さんに姿を見せないとダメだよ?」
 「連れてきてくれたら見せるよ、ね? お願い?」

 いや、ドーラさんなら喜んでついてくると思うけどね……

 「はぁ……わかったよ。とりあえず今日の用事が済んでから時間があれば……ね」
 「うん、よろしくー」

 精霊よ、軽いな……本当にほしいのか?

 「じゃ、リディ行こっか」
 「ん」
 「あ、でも今日は荷車に入れていこうと思うんだけど……リディの素材も積む?」
 「……なんで?」
 「いやー、あんまりたくさんバッグから出したらすぐにマジックバッグだってわかっちゃうかも……」
 「ん、じゃあお願い」
 
 荷車を持ってポーションの納品へ行く……今までは適当にごまかしてたけど、たまには使わないと怪しまれちゃうからね。
 街の家からならそこまで遠くないし、アピールにはちょうどいいだろう。
 でも……荷車にポーションやブラッドベアの素材を乗せ換えたり重たい荷車を引っ張ったりとやってみたら結構大変。
 実際、積んでみたらほとんどブラッドベアでいっぱいで、ほぼポーションはストレージの中だけど。
 まあ、草原からひたすら歩くのに比べたら幾分も楽なんだけどね……ぜいたくな悩みか。

 もちろんブラッドベアの素材も積んで、外から見えないようカバーもかけた。

 「じゃ、キュリエル。行ってきます」
 「……行ってきます」
 「はーい、いってらっしゃーい」

 どうか、マルガスさんに呆れられませんように……

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました

言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。 貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。 「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」 それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。 だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。 それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。 それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。 気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。 「これは……一体どういうことだ?」 「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」 いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。 ――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った

五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」 8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...