異世界トリップしたら女神(見習い)でしたが一般人として自由に生きていこうと思います

瑞多美音

文字の大きさ
上 下
64 / 120
第5章

64.女神見習い、少女と買い物を楽しむ(1)

しおりを挟む

 朝起きてから日課の結界チェックをして、昨日逆さにして冷やしておいたジャムを朝食に食べる準備をする。
 
 「おはよう。今日の朝はじゃがいもと玉ねぎのコンソメスープとパンと昨日作ったジャムだよ」
 「おはよう……」

 ささっと、朝食の用意を済ませてテーブルに用意する。リディはカラトリーの準備をしている……ブランはすでに席についていた、はぁ。

 「「いただきます」」

 モグモグ……

 「うまー」
 「ん、美味しい」
 「ねー、上手くできてよかったね」
 「ん……ブランも気に入ったって」
 「そうだろうね……」

 なんか、ブランの食べっぷりがやばい……放っておいたらひと瓶まるごとひとりで食べちゃいそう。
 やっぱり、リディの手作りってことも大きいのかな。私の手作りのコンソメスープにはがっつかないし……これでも最初の頃に比べたら上手くできた方なんだけどなぁ。

 「でも、そんなに食べて太ったら飛べなく……あ、なんでもないです」
 「……エナ、どうしたの?」
 「ううん、なんでも……ないよ」

 ブランの殺気が……ぶるっ。

 とかいう自分も調子に乗って、ジャム全種類試したらお腹パンパン……ふぅ。
 いやー、今まで作ったものの中で1、2を争う美味しさだったもので……つい。

 パイ用とおすそ分け用のジャムをストレージに入れて出かける準備を進める……リディに浄化をかけて、変容のネックレスに魔力を込め後片付けを済ます。

 リディはストンとしたライトブルーのワンピースにブーツ、フード付きの外套、首元には変容のネックレス、手にはブランとお揃いの指輪……うん、可愛い。
 私ですか? いつもと同じ冒険者の服にしようと思ったけど、市民の服にしましたよー。なんたって、今日はお出かけメインだからね……あ、どうでもいい? そうですか。

 リディと手を繋ぎ、少し重たくなった気がするブランを肩に乗せ……いつものように瞬間移動する。
 あ、そうそう瞬間移動する場所だけど……万が一に備えて前の場所は使わず、もう少し距離のあるところに洞穴?昔の貯蔵庫みたいなところがあったから、そこに瞬間移動するようにしてる。助けた人にバッタリ会うのは避けたいし……

 森を出て、草原を歩く
 ………テクテクテク……
 いつも冒険者の服に慣れてるからスカートが……バッサバッサと靡いてる。うん、ちょっとうっとおしいな……

 「地味に遠いよね……門まで」
 「……ん」
 「いーなー……ブランなんか飛んだらすぐだもんね」
 「ん……」

 いやいや、ブランさん? さすがにリディを抱えて飛ぶのは無理だと思うよ……サイズ的に。あ、諦めた。ものすごく悔しがっている……

 「ま、まぁ……のんびり行けばいいよね」
 「ん、そうだね」

 そうしてしばらく歩けば……見慣れた門が近づいてきた。こっちの門はほとんど冒険者しか使わないから、門番さんも顔を覚えてくれてるんだよね……まぁ、門番さんからしたら数日に1回くるこの冒険者はいったいどこに住んでるんだ?って思われそうだけど……細かいことは気にしない気にしない。そういうのは聞かれた時に考えよう、うん。

 おなじみの強面門番さんもブランを見て最初は警戒していたけど、リディのギルドカードを確認した後は興味深々のようだ。

 「おお、珍しいなあ。この街じゃ従魔自体滅多に見ないってのに……キラーバードかぁ」
 「そうですか……」
 「ああ……昔は俺も弟と羽を拾いに行ったもんだよ」 
 「へぇ……」

 キラーバードをこんな間近で観察できる機会はないと他の門番さんや関係ない住人まで集まってきてしまった。
 リディが少し落ち着かないようで、ブランもピリピリしてきたので早々に抜け出し、ギルドへ向かうことに。
 もちろん念には念を入れ、いつでも張れるよう結界の準備もした……あとは見境なくブランにちょっかいをかけてくる人がいなければ大丈夫、多分。

 「そろそろ行きますね」
 「おう、引き止めて悪かったな」
 「いえ」
 「ん、へいき……」

 ギルドへ向かう道中も従魔のブランが珍しいのかそこそこの視線を浴びてしまった。
 早足でギルドへ入るとマルガスがまだだろう?と視線で訴えてきたので、手早くリディの依頼をお願いに来たと伝えるとカーラさん対応してくれた。

 「おはようございます。エナさん、リディさん」
 「カーラさん、おはようございます」
 「……おはようございます」

 ギルドでもブランに視線が集中し、若干の居心地の悪さを感じつつ……受付でリディが依頼を受けるのを見守る。

 「この、キラーバードの羽の納品……」
 「はい、ではギルドカードをお預かりしますね」
 「ん……」 
 「すぐに出せるようでしたら、このままここで買い取らせていただきますが」
 「ん、お願いします」

 その間、ブランはリディの肩の上で大人しくしてるんだけど……リディ以外への殺気がすごいよね……冒険者ですら若干引いてるし。まぁ、リディを守りたいがためなんだろうけどさ……私にまで殺気を送ってくるってどういうことよ? 
 あ、もしかしてリディが私の服の裾を掴んでるのが気に入らないとか? しょーがないよねー……ブランは服着てないもん。役得、役得。

 カウンターで大量にあったブランの羽を納品したら、今回もかなりの収入になったみたい。具体的には月に2回ギルドへ納品したら一般家庭が少し節約すれば暮らせるくらいの額……リディひとりなら月1回で十分賄えるかな。うん、私が新人冒険者だった頃の比じゃないね……
 

 「前回の羽も人気ですぐに売れてしまったらしいですよ。また、お願いしますね」
 「ん、ブランがいいって言ったら……」
 「ブランさん、お願いできますか?」

 ブランはカーラさんの周りを1周した。周囲の冒険者が一瞬にして戦闘態勢に入ったのを感じ慌てて

 「あ、これ……わかったって返事だと思います」
 「ん、当たってる」
 「それは、よかったです」

 その瞬間ギルドがどよめいた……とか、どよめかなかったとか……

 「ん、エナこれ……」

 今回もリディがお金を手渡してきたので半分だけ受け取った。
 だって……「いらないよ。リディの好きにしていいんだよ」って言っても頑なに渡してくるんだもの……もちろんこれはリディ貯金行きですよ。

 「そうだ、リディの口座っていつになったら作れますかね」
 「うーん……エナさんが後見人なら作れるかもしれませんね……」
 「ちょっとサブマスに相談してみますね。今日は出てていないんですよ」
 「じゃあ、それでお願いします。あ、ちなみに今日って親父さん忙しいですかね」
 「いえ……女神様の降臨の時期でもありませんし、エナさんのお持ち帰りなら大丈夫だと思いますよ」
 「よかったです。このあと行ってみます」
 「ええ、お気をつけて」

 ギルドを出て、『黄金の羊亭』へ向かう……やっぱり視線は感じるけど、それほどでもないかなぁ。


 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った

五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」 8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。

なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。 二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。 失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。 ――そう、引き篭もるようにして……。 表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。 じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。 ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。 ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。

私は女神じゃありません!!〜この世界の美的感覚はおかしい〜

朝比奈
恋愛
年齢=彼氏いない歴な平凡かつ地味顔な私はある日突然美的感覚がおかしい異世界にトリップしてしまったようでして・・・。 (この世界で私はめっちゃ美人ってどゆこと??) これは主人公が美的感覚が違う世界で醜い男(私にとってイケメン)に恋に落ちる物語。 所々、意味が違うのに使っちゃってる言葉とかあれば教えて下さると幸いです。 暇つぶしにでも呼んでくれると嬉しいです。 ※休載中 (4月5日前後から投稿再開予定です)

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

処理中です...