異世界トリップしたら女神(見習い)でしたが一般人として自由に生きていこうと思います

瑞多美音

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第7章

94.女神見習い、少女の誕生日を祝う(1)

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 ある夜のこと、わたしは重大な事実を知ってしまった。

 事の次第はブランの激しい主張により発覚したのだが……その方法が問題だった。
 最初は簡単だったのにね……

 「話があるの?」

 と聞けば、右腕に乗った。

 「リディのこと?」

 と聞けば、また右腕に乗った。

 この方法はリディがいない時に使っているけど、ほとんど視線で何か訴えるのでこうやって腕に乗られるのも久しぶりだ。

 リディに通訳してもらえばいいのにと思ったけど、どうやらリディには内緒みたいだ。だって、リディが来た途端あからさまに私に視線で何も言うなと制し、飛んでいったから。

 それを何十回も続け、左腕に傷ができたのは言うまでもない。

 「リディが困っているの?」

 と聞けば、左腕に乗り

 「料理のこと?」
 
 と聞けば、左腕に。一応確認のため

 「リディには内緒なの?」

 と聞くと右腕に乗った。

 今、わかったのはリディについて内緒の話があるってことだけ……うん、全然わからない。

 ブランがだんだん痺れを切らし、左腕に乗るごとに爪が痛くなってきた。

 「はぁ……なんだろうな。リディの服がいるとか?」

 ちがった。

 「なにかリディにプレゼントしたいとか?」

 ん?惜しい系?

 「んー、プレゼントはしたいけど他にもやりたいことがある?」

 おっ、あってるみたい。

 「んー、記念日?って言ってもリディと出会ってまだ記念になるような日にはなってないし……」

 あれ?右腕に乗ってるな……

 「記念日かぁ……定番は誕生日とか、結婚記念日とかだけど……え?誕生日なの?」

 度重なるブランの主張を噛み砕き、時に顔にバサバサと翼を当てられた爪がでギュっとされた末、ようやく知ったその事実……

 「まさか、リディの誕生日だなんてっ」

 ブランが右腕を強く掴んだ。

 「え、まじかー。いつ?明日?」
 
 違うみたい。

 「まさか、今日じゃないよね?」

 違うかー。

 「明後日とか?」

 おおー、まじで明後日なんだ?

 「もっと早く教えてよー……あいたた!あ、そうかダンジョンに行ってたんだった」

 え、これダンジョン長引いてたらなにも知らないまま、誕生日すぎるとこだったじゃん!

 「あー、リディも遠慮して言えなかったのか……ねぇ、ブラン。アルさんやメルさんにも教えて誕生日パーティしよっか?」

 おおっ!ブランが私の周りをぐるぐると飛び回った。賛成ってことだね。

 アルさんとメルさんもギリギリ滞在してるので、誕生日パーティーを企画することにした。
 うわー、メルさん帰るギリギリだったね。
 メルさんはいつも範囲魔法とかで済ませちゃうからアルさんと比べても滞在期間が短いらしい。
 傷を回復した後、リディに見つからないようアルさんとメルさんを探す……って言ってもふたりで酒盛りしてたからすぐに見つかったんだけどね……

 「て、ことなんですけど、協力してもらえますか?」
 「うむ、もちろんじゃ!」
 「任せて!でも、よかったー。帰る前で!」
 「ですねー。それで少し聞きたいんですけど……」
 「うむ、なんじゃ?」
 「この世界ケーキってあります?私のとこでは誕生日にケーキでお祝いするのが一般的だったんですけど……」
 「うむ……ケーキか。確か王都のどこかの店にあったような。わしに任せておくれ」
 「えー、アルがケーキ準備するならワタシは美味しい食事を差し入れるわ!」
 「わー!嬉しいです。お願いしますね。あと、このことはサプライズでお祝いしたいので、リディには……」
 「「わかったぞ(わ)」」

 こうして、リディに内緒のサプライズパーティの準備がはじまったのだ。

 「んー、プレゼント……どうしよう……あっ!ユリスさんに頼んで短剣とかプレゼントしようかな?ダンジョンでたくさん素材も持ち帰ったし……で、あの宝石とか埋め込んだらいいかも」

 ん?なにさ、ブラン……

 「ブランも1枚噛みたいとか?」

 おー、右腕に乗りましたね……そしておもむろに緑色の宝石を差し出した。

 「ん?これを短剣につけて、私とブランからのプレゼントってことにすればいいのね?」

 ブランは満足気に私の周りを1周した。

 「リディはもう寝たかな?」

 そっと、部屋を覗くとぐっすり眠っているようだ。

 「ブラン、今からユリスさんとこいってくるからリディのことお願いね」


 さっそく街の家へ瞬間移動……

 「あれー、エナ。今日も泊まりに来たの?」
 「ううん、ユリスさんに用事があってきたんだけど……」
 「んー、ユリスならまだ工房にこもってるかなー」
 「そっか……行ってみるね」
 「僕も行こーっと」

 庭に出て、まだ明かりのついているユリスさんの工房を訪ねる……

 「ユリスさん、いますかー?」
 「え、あっ、はい!」
 「すいません……こんな夜遅くに……」
 「いえ……何かご用ですか?」

 少し困惑気味だけど、工房に入れてくれた。
 
 「それがですねー……リディの誕生日が明後日ということが発覚しまして……」
 「そうなんですか!?」
 「できればユリスさんにプレゼントの製作をお願いできないかと……時間があまりないので夜遅くにお邪魔した次第です」
 「喜んで、と言いたいところなんですが……材料が足りません」
 「あ、ダンジョンでたくさん素材とか金属とか持って帰ってきたので好きに使ってください」

 いくつか素材や金属を見せると作れそうだと言う事なのでデザインの相談だ。

 「できれば短剣に宝石を埋め込んで欲しいんですけど……できますか?」
 「はい、大丈夫です」
 「んー……ブランの刻印とかも出来ます?」
 「はい」
 「えー、ずるいな。僕の刻印も入れてよー」
 
 いや、キュリエルなんもしてないじゃん。でも、怒らせるとやばいから……

 「じゃあ、持ち手の表にブランの刻印と緑の宝石を。裏にキュリエルっぽい刻印と黄色の宝石でお願いします」
 「わかりました。期限は明日の夜までってところですかね?」 
 「そうですねー……できそうですか?」
 「ええ、夜を徹して作業すればなんとか……」
 「あ、そうだ。代金は?」
 「まだ、返済も終わってないので……欲を言えばもう少し素材を分けてもらいたいです」 
 「そんな事でしたら、どうぞどうぞ」
 「ねえ、そのパーティ僕たちも行っていい?」
 「うん、いいよー」
 「ユリスもね」
 「あ、はい」
 「そうだ、料理は他の人が待ってきてくれるので大丈夫です」
 「わかりました」
 「じゃあ、パーティ前に迎えにきますので、短剣もその時に」
 「はい」

 まぁ、これで瞬間移動がバレちゃうけど……ユリスさんなら信用できるし問題があってもキュリエルがなんとかしてくれそうだし大丈夫だ。
 あ、あとでアルさんとメルさんに人数が増えるので料理とケーキの量の追加をお願いしないと……

 「リディ、喜んでくれるといいけど……」

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