異世界トリップしたら女神(見習い)でしたが一般人として自由に生きていこうと思います

瑞多美音

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第5章

57.女神見習い、ギルド公認になる(2)

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 「んー……他の人と同じマークは登録できないんですよね?」
 「まぁ、そうだな」

 マークは当初はただの葉っぱにしようと思ったら既に登録済みで、次は羽にしようと思ったらそれも登録済み。
 聞いたところ鷹とかフクロウ、馬などほとんどの動物は既に登録済みであまりに似た模様も却下されるらしい。
 一瞬、キラーバードも思い浮かんだけどやっぱりそれも登録済みだったよね……
 やっぱみんな思うことは一緒なんだな……

 「全然思いつかないんですけど……」
 「やっぱり、僕の描いた似顔絵にするかい?」

 いや、それは避けたい……うーん……

 さんざん悩んだ挙句、四つ葉のクローバーに名前を入れた物にした。渡された紙に配置などを少しずつ変えたものを何度か書いてしっくりきたものを2人に見せる。

 「へぇ、こんなモチーフはじめて見たな。これなら大丈夫だろ」
 「うーん、まあ仕方ないからこれでいいんじゃない」
 「無事に決まって良かったです」
 「じゃあ、これがエナの魔道具な?今このマークを登録したからあとはエナの本人登録だな」
 「はい」
 「その魔道具が光るまで持っててくれ……光ったら登録が完了だから」
 「わかりました」

 私が支給された魔道具は大きな石のついた手のひらほどの杖だった……なんか魔法使いっぽいやつ。
 しばらく持っていると石の部分がピカーッと光った。

 「よし、これでエナ専用の魔道具になったぞ」
 「へえー」

 使い方は簡単で魔道具で瓶に触れて撫でるとマークが浮かび上がるというものだった。その度にほんのわずか自身の魔力を消費しているらしい……1度瓶を開封するとマークは消えて無くなるとのこと。
 ちなみに何を扱う職人かによって支給される魔道具は様々だとか。
 それ以外にも時には工房や道具を支給されることもあるらしい。


 「あとはねー……商業ギルドにも同時にマークを登録しておくと特許的な扱いになるから、のちにこのモチーフがその人の作った正式なものの証明として利用できるよ。それを勝手にまねて使用した場合処罰もあり得る。ただし、そのマークの使用料を払えば他の人が使うことができる。その場合はたいてい神に誓う契約書で契約を交わして悪いことはできない仕組みかな」
 「へえー」
 「つまり、できれば早めに商業ギルドに登録しろってことだな。ほら、紹介状だ。これがあればなんとかなるだろ」

 えー、これ登録しないっていう選択肢がなくなったんですけど……まぁ、いいや。

 「そうだ、念のためお願いしておきます。目立ちたくないのでこれ以上はランク上げないでくださいね」
 「お前の行動次第だと思うぞ……まぁ、公認ならほぼBランクと同等の扱いだしな」
 「えっ……聞いてないですよ」
 「あれ、エナくんに言ってなかったかな? 公認は指名依頼扱いだからほぼBランクなんだよ」
 「だから、時にはギルドから指名依頼をされることもある……もちろん拒否権はない。ま、よっぽどの理由以外で拒否したら降格もあり得るな」

 うん、マルガスさんの言葉は聞かなかったことにする。

 「まあまあ、エナくんならなんとかなるって」
 「……はぁ」
 「それと、エナくんには荷車と木箱を進呈しよう。ポーションを運ぶのが楽になるはずだよ……必要ないかもしれないけどね」
 「あー、それはありがたいです」
 「うん、だから毎回木箱にいっぱい詰めたポーションを持ってきてね……荷車は使うも使わないのもエナくん次第だけど」

 それって……木箱いっぱいの荷車が一定量納品とかいうんじゃないですよね……
 
 「エナ、安心しろ。流石に毎日とは言わねぇよ」
 「うん、そうだね。その辺もしっかり話し合わないといけないね」
 「そうですね」

 頼みますよ、マルガスさんっ。

 話し合った結果、10日に1度荷車がいっぱいになる量のポーションを持ち込むということになった。もちろん、それ以外に持ち込んでも大歓迎だって。これでもかなり譲歩した方らしい……ギルド的には5日に1度くらいが望ましいとか。

 どこから荷車を引っ張っていこう……やっぱ、街に入ってからどこかで出すしかないよね……だっていちいち門でチェックされるのは大変だし。
 街中で部屋でも借りるしかないかな……はぁ。


 「あとは……口座についてか」
 「口座ですか?」
 「うん、僕が開設しておいたやつだねー」

 え、なんのこと?

 「エナ、お前ギルドカード確認したことあるか」
 「ギルドでですよね? ないです」
 「ほら、これにカード置いてみろ」

 言われた通りプレートに先程返してもらったギルドカード置くと

-----

 氏名:エナ
 種族:人族
 【ギルド公認ポーション職人】
 冒険者ランク:C
 口座:金貨3枚、銀貨6枚
 討伐履歴:ワーム、ヒュージアント……

-----

 などなど……

 「なんか口座にお金入ってるんですけどっ」
 「そう、それロウトの特許料ね」
 「何ですか、それ……」
 「そりゃあ、エナの言ってたロウトを商品化したんだよ。ちなみにエナへの特許料は売り上げの2割でロウトを製作するのは公認瓶職人のドネル、販売は冒険者ギルドのみで独占市場……かなり儲からせてもらったぞ。今は他の街でも売り出してるしな」
 「あ、ちなみにこの口座はどこのギルドでもギルドカードがあれば受付で出し入れできるから安心してね」
 「口座なんてあったんですね……知りませんでしたよ」

 口座はギルド公認や上位ランカーなど大金を持つ可能性のある人、もしくは自身で申請し、ギルドの評価が一定以上あり借金などがなければ開くことができるんだって。
 伝説の魔道具師、カーティス・マールが最後の大仕事として仕上げたこの仕組みは弟子たちのメンテナンスによって保たれているらしい。
 自動的に口座が開かれるわけではないので知らない人も多いとか。

 「冒険者ギルドに置いてある魔道具で確認すればすぐにわかったはずだし、いつ気付くかニヤニヤして待ってたのに……なかなか気付いてくれないから自分でバラしたようだぞ」
 「どおりでさっきまでキリッとしてたサブサスさんがいつのまにかニヤニヤしてるはずですね……」

 うん、今度リディの分も開設してもらおう。でも、もう少しブランの羽を売らないと評価が足りないかな?

 
 ギルド公認はちょっとだけサブマスに振り回されそうで躊躇したけど……あれはドネルさんと幼馴染だからこそのやりとりだと聞いて安心したとともに、ドネルさんにちょっと同情した。

 「あの、ちなみに今持ってるポーションもその魔道具使えるんですか?」
 「あー、それは……エナが作ったものなら問題ないぞ」
 「じゃあ、早速ここで魔道具使って売っていってもいいですか」

 だって、そうしたら今回から手数料分買い取り価格上がるんでしょう?

 「ああ、しばらくしたらまた来るから好きに使ってくれ」

 2人が部屋を出ていった後も意気揚々と作りためておいたポーションやついでに今まで売れなかった品質:優のポーションに魔道具でマークをつけていく。おお、簡単ですね。
 ひたすら魔道具を使っていたら、いつのまにか2人が戻ってきていた。結果、かなりの量を放出した。
 特にマナポーションは結構な量があったのでマルガスさんに、呆れられたのは言うまでもない……
 ハイポーションやマナポーションの初級や中級に加え以前ギルドで買ったレシピの特殊ポーションを数本ずつ、宝珠の花で作ったポーションを1本だけ売ることにした。
 全部合わせて公認として納品する一定量の2回分あったので、これで次の納品は20日後となった……ていうか、荷車要らなくない? 
 でも……サブマスやマルガスさん、カーラさんはもうたくさん入るマジックバッグだと知ってるけど、他の冒険者に悟られるのはまずいからカモフラージュのために使うべきかな……

 「そっか、空の木箱と荷車を引いて門をくぐって、売るときに数を数えるついでに部屋で木箱に詰めればいいのか……うーん」

 どうも公認だと裏口から荷車で直接買い取りへ持ち込めるらしいのでなんとかなりそうかな?

 うん、全部で金貨2枚、銀貨9枚、小銀貨8枚、銅貨1枚になったよ……一般的な家庭がひと月銀貨15枚から20枚で生活するっていってたからこれだけでふた月分……すごいお金持ちだね。ちょっとギルド公認をなめてたかもしれない……
 ちなみに金貨2枚は口座に入れてもらいました……



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