異世界トリップしたら女神(見習い)でしたが一般人として自由に生きていこうと思います

瑞多美音

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第5章

67.女神見習い、神様と少女の出会いを見守る

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 すっかり秋も深まり、木々の葉も紅く染まり外套が手放せなくなってきた頃……

------

 【交信】
 《大地神 アルネルディ》から交信されています。

    [はい(許可)] [いいえ(拒否)]

------

 「あれ、アルさん……」

 [はい]を選択する。

 『エナちゃん、久しぶりじゃ!』
 「アルさん、お久しぶりです」
 『わし、今日降臨したんじゃ! 夕方にはそっちに行くからよろしくの。じゃあ後でな……』

 
------

  【交信】
 《大地神 アルネルディ》との交信を終了しました。

------

 「あ、返事する前に切れちゃったよ……」 

 もうアルさんの降臨時期なんだ……なんかあっという間だなぁ。つい、この前帰ったような気がしてた。
 どうしよう……とりあえずリディ達に神様についての説明とここに来ることを話さないと。

 「エナ、おはよう……」
 「あっリディ、ブランおはよう。ちょうどいいところにっ」
 「ん、なに?」 

 すぅ、はぁー……よしっ

 「あ、あのね……この国には神様が降臨するんだけどそのことは知ってるかな?」
 「……知らない」
 「そっか……人が少ない土地やそもそも神を信じない人が多いとか信仰が薄い地では神の降臨の頻度が開くらしいから、帝国ではあまり信仰されてなかったのかもね……」
 「ん、多分そう……」
 「降臨するためにはある程度の信仰が必要で、それと引き換えに降臨しているらしいんだけど……リタール王国では色々な神様がたくさんの街に降臨してるの」
 「……ん」
 
 リディはわかったようなわからないような微妙な顔だ。ブランは珍しく真剣に話を聞いている。

 「もちろんランヴィの街にも降臨するんだけどその時になったら教会へ行ってみようね」
 「ん」
 「で……本題はここからなんだけど、今日の夕方に神様がここに来ます」
 「え……」
 「その神様はリディと出会う前には降臨期間中この家に泊まってたのね……だから今回もそのつもりだと思うの」
 「……神様って家に泊まるの?」
  
 あー、まずはそこなんだ。なんで知り合いなのとかじゃなく……

 「うん、なんか教会に泊まるの飽きたんだって……」
 「そう……」
 「どうして、エナと知り合いなの?」
 「んー……まぁ、訳は色々とあるんだけど……困ってた時に助けてもらったからかなぁ」
 「そっか……わかった」
 「え、わかったの?」

 こんな説明で納得しちゃうなんて、どれだけ私を信用してくれてるのさ。

 「ん……でも、お部屋どうしよう。私、リビングで寝る?」

 おっと……ブランさんがめっちゃ睨んで
る。お前がリビングだよな?的視線だ。

 「あー……それは多分アルさんが解決してくれると思う。それがダメなら今回は教会に泊まってもらうから大丈夫だよ」
 「アルさん……?」
 「そう、神様の名前……優しい神様だから緊張しなくても大丈夫だよ。それに、リディとブランの指輪もアルさんがくれたものなんだよ」
 「ん、わかった……会った時にお礼言う」
 

◇ ◇ ◇


 夕方……
 
 「来たぞー、おーい!エナちゃーん」
 「あ、アルさん来たっ……リディ大丈夫?」
 「ん、へいき」
 「はーい!」

 外に出るとアルさんがニコニコして立っていた。まさに好々爺って感じ……
 
 「アルさん、お久しぶりです」
 「うむ」
 「えっと、リディ……こちらは大地神アルネルディ……アルさんだよ。アルさん、こちらはリディで魔物がブランです」

 珍しくブランが大人しい。やっぱ、神様相手だと大人しくなるものなのかな。

 「ふむ、怖がることはないぞ……リディちゃんの生まれた国はわしらがなかなか降臨せんからのぉ。わしのことは好きに呼ぶがよいアルちゃんでもアルおじいちゃんでも……」
 「ん……リディ、よろしくアルさん。あと、指輪ありがと」
 「うむ。役に立ったのじゃな……さて、そういうことじゃからわしの部屋を作らんといけんな」
 「あー、そうですね……」

 やっぱり泊まることに変わりはないのね。

 「ふむ。躊躇したくなる気持ちもわかるがの……エナちゃんにいいことを教えてやろう。わしもリディちゃんに浄化をかけられるんじゃぞ」
 「え、でもあれって1日に1度しか効果がないんじゃ……」

 そう言うとアルさんは意味ありげにニヤリと笑い……

 「ふぉっふぉっふぉっ……それはそうじゃが。他の者でも試してみたのかの?」
 「いえ、試してはないですけど……えっ。じゃあもしかして……」
 「ふむ、あれはひとりにつき1日1回効果があるんじゃ……つまり、わしがお泊まりすれば毎日2人分の効果が得られるんじゃぞ?」

 なんてこった……ますますアルさんを泊めないわけにいかなくなった。

 「リディ……アルさんが降臨期間中この家に泊まってもいいなら、毎日浄化してくれるみたいだけど」
 「ん……お願いします」
 「ふぉっふぉっふぉっ……よし!わし張り切っちゃうぞ!」

 その言葉通りアルさんは家をさらに改築し、部屋をひと部屋増やしそれぞれの部屋にはクローゼットまで完備された。
 おおー……少し服をかけておこうかな。雰囲気的に。

 台所がアップグレードし、火を使っても前より安全になったらしくさらには冷蔵庫と冷凍庫ができた。

 お風呂はひとまわり大きくなり、家具もわずかにアップグレードされている。
 おおー、ソファの座り心地が抜群ですね。
 
 そして、ボロかった外壁も大分改善されている……頑張って壁直した意味よ…… 
 
 「ん、すごい……」
 「あっ、そっか……リディには言ってなかったけど、こうやって改築してくれるからリディはそのまま部屋で寝ていいんだからね」
 「ん、わかった」


◇ ◇ ◇
 
 アルさんの滞在中、食事に関してはテイクアウトが増え……楽ができたことは言うまでもない。
 そして、なぜかお茶を一緒に飲むため、アルさん専用のティーカップまで持ち込まれた。
 アルさんのオススメのお茶も差し入れてもらったりしてお茶の時間が日課へと加わっていた。穏やかで優しい時間でなんだか癒されるんだよね……

 アルさんは作り置きのジャムを大層気に入ったらしく、砂糖やここらで取れない果物なんかを大量に提供してくれた。いろんな街で購入してきたらしい。
 おかげでいちごやブルーベリーなど、ジャムのレパートリーが増え、ジャム作りだけは1人でも失敗しなくなってきた。わーい。

 まあ、リディのほうが手際がいいんですけどね……ぐすん。


 他にもドーラの防具屋へブランのリュックの試作品を見に行ったら既に出来上がっていて驚いたり……うん、すごくいい出来だった。試作じゃなくて完成品だったよ。さすがプロだけあって、ブランの羽ばたきの邪魔にならないよう細部に工夫が施されていた。
 それをブランが自慢げに見せつけてきたり……それにより少しうざいが安全な金庫番が誕生した。

 薬草採取、ポーションの納品、リディと一緒に畑の世話なんかをしているうちにあっという間に賑やかで楽しい日々が過ぎ去り……アルさんの降臨期間が終わる日になっていた。

 「ふむ。残念じゃが今日で降臨期間は終わりじゃ」
 「そうですか……」
 「ん……次はいつ来る?」

 リディもすっかりアルさんに心を開いていたので寂しいようだ。

 「そうじゃな……ふた月後くらいかの」
 「ん、わかった」

 なんと、アルさんは宿代だと言ってリディのショルダーバッグをマジックバッグに作り変えたらしい。しかも、認識阻害と専用登録でリディ以外使えない上鑑定されてもマジックバッグ(小)と出るらしい。すげえ……

 さらに畑の土に加護を授けてくれた。大地神だけあってアルさんの加護をもらうと作物の収穫率や品質が上がるとか。 
 アルさんは帰る直前にドサドサッといろいろと見たことのあるものや、よくわからない素材やら石やらを大量に置き土産として置いていってくれた。
 いろいろと試してみるとよいぞと言っていたので……また今度、実験してみようと思う。

 もちろんリディとブランにも加護を授けてあるから安心していいって……

 「エナちゃん、次もよろしくのぉ……またな、リディちゃん、それにブランよ」
 「ん、またね……」 
 「ありがとうございました」
 「困ったらすぐに連絡するんじゃぞ?」
 「はい」

 アルさんは別れを惜しみつつ……天界へ戻っていった。
 
 こうして、また2人と1羽の生活に戻ったのだった……


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