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第5章

62.呪われた少女の1日 〜side リディア〜

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 「……ぅん……ブランおはよう」
 『おはよう、リディ』

 既に起きていたブランに挨拶したら服を着替えてリビングへ……

 「あ、リディ、ブランおはよう」
 「おはよう」
 『おはよう』

 エナはもう結界のチェックも終わり……朝ご飯の用意をしていたみたい。

 「はい、ご飯ねー」
 「ん、ありがと」
 『俺の分は……』
 「はいはい、ブランはこっちね」

 エナは手際よく私とブラン、エナの分をささっとテーブルに置いた。今日の朝ごはんはエナが街で買ってきたものだ。
 エナは料理をする時、聞いたことのないメロディを口ずさんでいることが多い……私は決して嫌いじゃない。
 ブランは『ありゃ、多分音程ズレてるぞ』って言ってたけど、元の歌を知らないからよくわからない。

 私も早く料理を作れるようになりたい……お母さんの日記のレシピもエナやブランと一緒に食べたい……でも、ブランが包丁が危ないとかコンロに気をつけろとか、なかなか料理に挑戦させてくれない。留守番してるときに練習してエナを驚かせたいのに……

 「あ、あとリディはポーションもちゃんと飲んでね」
 『そうだぞ』
 「ん、わかった」
 
 食べ終わると……

 「じゃ、リディこっち来てね」
 「……ん」

 毎日、エナは私の呪いを減らすために魔法をかけてくれて、さらにネックレスに魔力を込めてくれるの……これで瞳の色が変わるんだ。

 「はい、終わったよ」
 「ん、ありがと」
 「今日は街に行ってくるから留守番お願いね。家の物は好きに使っていいからね」 
 「ん、わかった」
 『リディのことは俺に任せろ!』

 エナは数日に1度、街へ行っている。
 私はブランの登録以降1度も行っていない……あの街は思っていたよりずっとよかった。誰かに難癖をつけられることもなければ、こっちを見てヒソヒソ言われることもなかった。
 エナは気づいてないみたいだけど、時々チラチラエナを見て頬を染めている人がいた。でも、私を見ても特になんの反応も示されずホッとした。
 門番さんやギルドのカーラさんも優しかったし……また、勇気を出して行ってみてもいいかもしれない。そしたらエナが喜んでくれるし。


◇ ◇ ◇


 エナを見送ったら、朝ご飯に使った食器を洗う。食器を洗うことは私にさせて欲しいってお願いした。
 それが終われば畑のお世話をする。

 あ、もうそろそろ収穫してもいいみたい。
 基本的に野菜の畑は私が収穫していいことになっていて、水やりは出来るだけ魔法でまかなってる。
 少しでも魔法の練習になればいつか役に立てるかもしれないから。
 収穫した野菜のほとんどは生で食べられるものばかりなので、収穫したらさっと水で洗って保存しておく。

 野菜はいつものスープやパンの横にこのまま並べられる。
 ブランも『エナが料理するくらいなら丸ごと出してくれた方が美味しく食べられる』と丸ごとボリボリ食べている。
 でも、不思議とこの野菜を食べるとふわっとして元気になった気がする。

 お昼はエナが置いていってくれたものを食べたり、収穫した野菜や果実を食べたりしている。
 ほんとはもう飲まなくてもいいと思うのに、エナとブランに言われるままポーションも飲み続けてる。
 コンロもスープを温めるときに使うんだけど、やっぱりブランは心配みたい。コンロを使うときは片時も離れず見守ってる。
 今のところ収穫も手作業だし、刃物は持たせてもらえない。
 でも、冒険者ならナイフの1本持っててもおかしくないと思う……エナみたいに風魔法で野菜を切り刻む練習をしたほうがいいのかな。


 薬草畑は収穫しないで水やりと雑草を抜くことになっているんだけど……雑草なのか薬草なのか区別がつかないときがあって少し困ってる……でもそういう時はブランが教えてくれるから何とかなってる。

 でも、ちょっとでも長く外にいるとブランが早く家に入れとうるさくなる。もう少し畑を見ていたかったのに……だって私がお世話したらものが美味しい野菜になるんだよ……なんか不思議。
 でも、エナから熱中症? なるものに気をつけるように言われているので家に入ったらお水をたくさん飲む……エナと約束したのでブランの言うことを聞いて家でおとなしくする。
 ブランは私が畑のお世話をしているそばで私が熱中症?にならないように風を送ってくれて……もう、涼しくなってきたから大丈夫なんだけど、ブランが嬉しそうだからそのままにしてる。

 家に入るとやることがあまりない……エナがいない時はお母さんの日記を読み返したり文字を書く練習をしたり、掃除をして過ごす。エナがいればこれにポーションの瓶詰めや魔法の練習が加わって、時々一緒に採取に出かけたりもするの。

 お風呂やトイレ、部屋の掃除をしていると役に立てている気がするので嬉しい。

 夕方にはエナが帰ってくるので、お風呂の準備。

 お風呂はすごい……エナには毎日のように一緒に入ろうと誘われるけど、恥ずかしいので時々にしてる。
 ブランは毎日入ると羽の艶がなくなるとかで頻度は低い。でも私が入っている間は脱衣所て待機して溺れてないか、のぼせてないかずっとソワソワしてるみたい。

 「ただいまー」
 「おかえり」
 「何事もなかった?」
 「ん、野菜収穫した」
 「おー、そっか。じゃあ、夕食に食べようね」
 「ん」
 『俺は何も調理していないものを希望する』

 エナが街での出来事を話してくれるのを聞きながら夕食を食べる。

 「そういえばさぁ、今日冒険者ギルド公認のポーション職人になったんだよ」
 「……ギルド公認?」
 「そう。ギルド公認っていうのはまぁ、冒険者ギルドがこの人のポーションに太鼓判を押しましたって感じかな?」
 「……エナ、すごい」
 「そのおかげで商業ギルドまで登録することになってね……あ、そうだ。リディ、ギルドに登録した時に飲んだお茶覚えてる?」
 「ん、美味しかった」
 『俺は飲んでないけどな』
 
 エナが家で入れてくれるお茶も美味しいけど、あのお茶も美味しかった。

 「でね、商業ギルドに登録したおかげでそのお茶が手に入りそうなんだよ! そしたら家でいっぱい飲めるね 」
 「ん、楽しみ」
 『今度こそ俺にも飲ませろっ』

 ブランはエナに向かってアピールしてる……伝えた方がいいかな?

 「ん? ブランも飲みたいの? しょーがないなぁ……」
 
 この幸せな生活がいつまでも続いてほしい。でも、ずっとエナに甘え続けるのは……

 「ん、今度エナが街に行く時……私も一緒に行く」
 「え、ほんとに?」
 『リディ、無理はするなよ?』

 2人とも少し心配そう……

 「ん、大丈夫。エナと買い物もしたいし、ブランの羽を持っていかないと……」

 前にエナの服を選んであげる約束したし、ブランの羽もかなり溜まってるの知ってるから……ほんとはエナが持って行ってお金にしてくれていいんだけど、それは羽の持ち主のブランが許さないと思う。

 「そっか……じゃあ、来週あたりにみんなで街に行こっか」
 『リディ、安心していいぞ。変な輩は俺が倒してやるからな』
 「ん……ありがと」


 お風呂で汗を流しサッパリして、風魔法の《そよ風ブリーズ》で髪を乾かす。
 最初はエナが自分の長い髪にしてるのを見て、ブランがやってくれてたんだけど……エナは私が髪の色を気にしてるのを知ってるから触られたら嫌かもしれないと遠慮してたみたい。
 でも……ブランが乾かしてるのをジーッと見つめてたからエナがやりたいんだってすぐにわかった。エナにする?って言った時の喜びようはすごかった。ブランが少しだけ嫌そうだったけど、今ではエナとブランがどちらがやるか喧嘩しつつ、交代で嬉しそうにしてくれる。
 ほんとは自分でしてもいいけど、2人にされてるとなんだか幸せな気分。

 お母さんの日記を枕元に置いて、ベッドに入る。
 ブランは反対側の枕元か足元で一緒に寝ている。ぽかぽかして温かい。

 「おやすみ……ブラン」
 『おやすみ、リディ』


◆ ◆ ◆

【ステータス】 

 種族:人族
 氏名:リディア
 状態:通常/忘我の呪い[9573123]
 体力:350/350 
 魔力:700/700
 運:5(ー62)
 冒険者ランク:G

スキル 
 ・火魔法レベル1 
 ・水魔法レベル3
 ・風魔法レベル2
 ・闇魔法レベル1
 ・闇属性耐性レベル1
 ・隠密レベル3
 ・気配察知レベル2
 ・状態異常耐性レベル2

 ー称号ー
 呪われた少女・新人冒険者

 ー加護ー
 献身の騎士の守護・慈悲の女神(見習い)の加護

◆ ◆ ◆

【ステータス】 

 種族:キラーバード
 氏名:ブラン/?????
 状態:通常
 体力:280/460 
 魔力:350/350
 運:28 

スキル 
 ・風魔法レベル2
 ・状態異常耐性レベル4
 ・隠密レベル5
 ・気配察知レベル3

 ー称号ー
 献身の騎士

 ー加護ー
 ????の加護・慈悲の女神(見習い)の加護

◆ ◆ ◆


 
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