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第4章
48.女神見習い、服を買う(2)
しおりを挟む屋台でスープや果物を買い、近くの雑貨屋でリディ用のコップやブランのお皿など必要そうなものを諸々購入した。
パンを買って、看板娘さんと強面お兄さんの進展具合をニマニマしながら聞き、黄金の羊亭へ戻る。
「あっ、エナお姉ちゃんおかえりー」
「ミーナちゃん」
「お父さんがもうお持ち帰り出来てるって言ってるよー」
「そっか、ありがとう」
テーブルに置かれたお持ち帰りを受け取りミーナちゃんに支払う。
「また来てねー! ばいばーい」
「うん、またね」
笑顔で手を振るミーナちゃんに後ろ髪を引かれるけど……家で待ってるリディの元へ早足に戻る。
「ただいまー」
家の扉を開けると……
うおっ……びっくりしたー。リディが扉の真ん前で膝を抱えて待っていた。
「……おかえり」
「ただいま……いつから待ってたの?」
「……ん、さっき」
いや、リディさん……後ろのブランが違うって言ってませんか?
「……ほんとはちょっと前から」
ちょっと前でもなさそうだけど、まぁいい。
「そっか……待たせてごめんね? 何もなかった?」
「……ん、大丈夫」
とりあえず中に入り……あったかいお茶でも飲もう……雑貨屋さんで買ってみたんだよね。
あ、ちなみにお湯はアルさんの造り付けの台所の魔道具? から出てくるよ。
不思議だよね……お茶は失敗せず入れられるんだから……料理と何が違うのさ(全然違う)
「はい、これリディのコップね……ブランにはこのお皿ね」
「……ありがと」
お茶を飲みつつ……んー、ギルドの方が美味しいな。
ひと息ついたところで
「今日はリディの服も買ってきたから。サイズは合うと思うんだけどちょっと着てみてくれる?」
「……ん」
ストンとしたライトブルーのワンピースと寝巻き、生成りの上着とこげ茶の7分丈のパンツはちょうどいいみたい。
黄色のワンピースは胸の下で切り替えがありスカートふんわり膨らんでいる物で可愛らしい。ほんの少しサイズが大きかったけどすぐに成長するから大丈夫。
おお、何を着ても似合う……美少女ですね……
「おー、リディ似合ってるね」
「……こんなにたくさん?」
「え、これでも厳選した方なんだけど……」
「だってエナより多いよ?」
あー、そういえばそうかな? いや、リディの前で着てないだけで女神の服とかもあるし……
「うーん……じゃあ、いつかリディが選んでくれると嬉しいな」
「……ん、いつか……」
おっ、選んでくれるって……そうなれば街に行かなくちゃいけないから嫌だって言われるかと思ったけど……嬉しいな。
「あ、そうだ」
んー、髪は触ったら嫌がりそうだから……
「リディ、手を出してくれるかな」
「……ん」
リディの右手首に奥さんにおまけしてもらった紐と幸運リボンをまとめて結ぶ。
「この紐は今日、服を買ったお店でおまけとしてもらったやつなの。ほら私とお揃い。で、こっちのは私のお下がりで悪いけど運の値がほんの少し上がるリボンなんだよ」
「……お揃い」
なんか嬉しそうかな? そうだといいな……
外套は元々少し大きめを買ったので問題なかった……フードもついてるし。
ブーツもブランの言うとおりのサイズを買ったのでピッタリだ。これで穴の開いた靴を履かずに済む……今まで気になってはいたんだけどなかなか、ね。
「そうそう……リディって帝国から来たんだよね?」
「……ん」
ブラン、そんなに警戒しなくても平気だから。
「あのね、この森や家は帝国にあるんじゃなくてリタール王国っていう帝国の隣の国にあるの」
「……帝国じゃ、ない?」
「うん。今日ギルドで聞いてきたんだけど……この国では髪や瞳の色で差別しないそうだよ……黒髪は少ないけどこの国にもいるらしいし、似たような色の人もいるんだって……」
あ、やばい……リディから瘴気が出そう……
「でもね、それでもリディが気になるなら瞳の色変えてみない?」
「……変える?」
あ、元に戻った。よかった。
「うん、変容のネックレスっていう魔道具があってね……魔力を注ぐことによって瞳の色を自由に変えられるの……魔力は私が込めるから問題ないよ」
「……変えたい」
今日、カーラさんの話を聞いてから考えたんだよ……それで変容のネックレスの存在を思い出したんだけど……それまですっかり忘れてマジックバッグの肥やしになってたよ。
街を移動する間しか使ってなかったからね……
マジックバッグから変容のネックレスを取り出し……
「瞳の色は何色がいい?」
リディはしばらく考えた後
「……ん、これと同じ色」
自身の指輪に付いている石と同じうす紫を選んだ。ブランがものすごい喜んでるけどなんでだろ……ま、いっか。
「わかった……じゃあこれかけてね」
「……ん」
リディがネックレスを付けたら、瞳がうす紫になるように魔力を込めていく……
「よし、これでいいはず……うん、リディの瞳がうす紫になってる」
「……ほんと?」
信じられないようなのでマジックバッグから手鏡を出してリディに渡す。
「ほら、変わってるでしょ?」
「……ほんとだ」
「まあ、毎朝魔力を込めないといけないけど……」
「……エナ、ありがと」
黄色のワンピースの上に、外套を着せフードをかぶせる。
「ほら髪は外套のフードで隠せば、どこにでもいる普通の子だよ」
「……街を歩いても目立たない?」
「ブランが外套の中に隠れてくれれば……」
「……ブランが?」
「あのね、街なかでは魔物はギルドで従魔登録していないといけないんだって……だから不用意にブランが外套の外に出ると危ないの」
冒険者に討伐されちゃうかもしれないから……
ブランはちょっと不満そう……でもリディの為ならそれ受け入れるだろうな。
あ、でも美少女だと目立つのか? ……フードを深くかぶれは平気だよね?
「……従魔登録したら、ブランも好きに飛び回れるの?」
「うん……でもそれにはリディが冒険者ギルドに行って登録しないといけないから……」
すごい、葛藤してるみたい……ブランはリディが心配みたいで周囲を飛び回ってる。
「リディ、焦らなくていいんだよ」
「……ん」
リディが街へ行くのもそう遠くない……はず。
瘴気が心配なら、透明にするのは魔力消費がやばいけどリディの周りに結界を張ってもいいし……
「さて、おなかも空いてきたし……ご飯にしようか」
「……エナが作るの?」
うっ、ダメージが……
リディ、安心して……買ってきたやつだから、ぐすん。
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