49 / 120
第4章
49.女神見習いと少女の日記
しおりを挟むアルさんのおかげで家の中は綺麗だけど外がボロボロなので修繕してみる。
ようやくヒュージアントに壊された壁も元通り……
「ま、これで勘弁してやろう」
嘘です……これが限界です。あくまで修繕スキルだからアルさんみたいに作り変えることはできないんだよね……家の外と中のギャップは健在です。
リディはアルさんという人が家の中を綺麗にしたことは理解しているようだけど……アルさんが神様だってことは言ってない……
どうも帝国には大々的に神様が降臨することがないみたいなんだよね……降臨があったとしてもリディは知らないみたい。
私が外壁を修繕しているのを興味深そうに見つめていたリディはおもむろに家へ入っていき……以前あげた袋を手に戻ってきた。
「エナ……これも直せる?」
リディが袋から出し、手に持っていたのは1冊の本だった。
「あれ、これってリディが大事に持ってきたやつだよね?」
「……ん、お母さんの日記」
「すごい大事なものじゃん……ちょっと見てもいい?」
「……ん」
リディから日記を受け取り壊さないように慎重にチェック……
結構ボロボロだな……表紙はハゲてるし中身も所々破れたり穴が開いたり……文字も滲んでるな……
「リディ……修繕スキルを使えば少しは綺麗になるかもしれないけど、失敗したくないからもう少し修繕のスキルを上げてからでもいいかな?」
「……ん、わかった」
それからしばらくは集落跡でゲットしたものを修繕しては壊し修繕しては壊す……を繰り返した。
何も知らない人が見たら変な人だけど……リディとブランしかいないから問題なし。
その結果、レベルも上がり……はじめて修繕した頃より格段に綺麗な仕上がりになった。
……失敗しない限り何度でも修繕し直せるのはいいところだよね……どんどん綺麗になっていくんだから。
ちなみに失敗っていうのは何も起こらないだけ……壊してしまうとかそういう心配はない。
「リディ……そろそろ試してみようか?」
「……ん、お願い」
リビングの椅子に向かい合わせに座り……日記に修繕をしていく。
少しずつ、慎重に慎重を重ねて時間をかける。リディやブランもジッと見つめている。
集中すること1時間くらいかな……
「……ふぅ。これが今できる修繕の限界……」
表紙は元に戻ったものの古びたまま……中身は破れや穴はなくなったけど若干文字が滲んでる……読めなくはないけど……
「ごめん……またレベルが上がったら試してみようね」
「……ううん、読めるだけで十分」
リディは嬉しそうに(ほんの少し口角が上がってる)表紙を撫で、ゆっくりと日記を開いていく……ブランもリディの肩から興味津々の様子。開いたら壊れてしまいそうで読むのは久しぶりなんだって……
……お茶の準備でもしようかな。
しばらく日記を読み続けていたリディ……突然ポロポロ涙を流し瘴気が漂ってきた。
「リディ……大丈夫?」
「……ん、平気」
次第に落ち着き瘴気も消え去った。
「……ん」
リディが日記を私に差し出している。どういうことだろ……
「……私も読んでいいってこと?」
「……ん」
リディがコクリと頷いた。
「じゃあ……」
リディから受け取った日記をそっと開くーー
***
愛するあなたへ
いつか話せたらいいけど、それができなかった時のために記します。
かつてあなたのお父さんはとある高位貴族の令嬢に婿入りを熱望されていたのに、庶民のわたしを選んでくれたの……私たちは駆け落ち同然に街を飛び出して結婚したわ。
そして長い旅の末、辺境の小さな村にたどり着いたの……そこで畑を耕したり、お父さんは狩りにいったり、村の警備隊で訓練したり忙しい日々を過ごす中であなたの妊娠がわかったの。
わたしやお父さんは泣いて喜んだわ……決して裕福ではなかったけど幸せに暮らし、あなたの誕生を待ち望んでいたわ。
でも……お腹が目立ち始めたころ悪夢がやってきたの。どこからか出現した魔物……私たちを守るため、お父さんが足止めすることを選んだのよ。
お父さんは命をかけて私たちを守ってくれたわ……でも、村はもう暮らせるような状況じゃなかった。
辺境の村から1番近い教会へ身を寄せ過ごすうち自身が呪われているとわかったの。いつ呪われたかはわからないけど最近だろうって……
でも……この呪いは帝都の教会に莫大な費用を持っていかなければ解くことができないみたい。
そんな呪いをかけられるのは高位貴族ぐらいだと……多分、お父さんを奪った私のことが許せなかったあの方が呪いをかけたのだと思う。
そこの教会の神父さんの勧めもあって日記を書くことにしたのよ……字が下手なのは文字を勉強中だから、ごめんね?
何があってもあなたを産んで見せるわ。
男の子ならお父さんの名前を女の子ならリディア。
女の子だと疑わなかったお父さんが考えた名前よ……
リディ……たとえ会えなくてもあなたを愛しているわ
母より
***
若干滲んでる部分もあるけど大体こんな内容だった……そりゃリディ泣くわ。私もウルッときた……
他のページには毎日起きたことや、料理のレシピ……思いつく限り書き留めたみたい。
「リディ……あなたは愛されて生まれてきたんだね」
「……ん」
「だから、誰がなんと言おうとリディは望まれて生まれてきたんだよ……こんなに日記から愛を感じるもの」
「……ん」
ブランもリディに何か伝えているようだ……
「いつか、この日記にある料理を作ってね?」
「……ん、頑張る……だから、街に行く」
「……え?」
何がだからなのかなリディさん? ……街へ行くって……
「……街に行ってブランの登録する」
なんか今から行こうとしてません?
「リディ! もう日が暮れるから今日はやめとこう?」
「……でも」
決意が鈍るかもしれないって心配なのかな? ブランがぐるぐる飛び回って邪魔なんだけど。顔にブランの翼がバサバサ当たるんですよ……
「うーん……今から行くとあっちに泊まることになるけど、平気?」
「……ん、明日にする」
お泊まりは躊躇したのね……あっさり明日に変更されたよ。
そっか……じゃあリディが寝た後にでもこっそり街まで行ってカーラさんに伝言を頼もう……明日、連れていきますって。
リディは明日に備えて早めに寝るそうです……え、ご飯は? あ、食べる……あれ、お風呂は?
結局いつもと変わらない時間に就寝しましたとさ。
0
お気に入りに追加
308
あなたにおすすめの小説

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました
言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。
貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。
「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」
それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。
だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。
それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。
それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。
気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。
「これは……一体どういうことだ?」
「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」
いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。
――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる