異世界トリップしたら女神(見習い)でしたが一般人として自由に生きていこうと思います

瑞多美音

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第4章

45.女神見習い、呪われた少女と出会う 〜side リディア〜(2)

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 カチャカチャと音が聞こえ、慌てて起きる……あれ、ここは?
 あ、ブランもいた。よかった…… 昨日のエナの家かな……外はボロボロなのに違う場所みたい。
 様子を伺いながら部屋から出ると台所に立つエナが見えた。透けるような白い肌、グレーの瞳、柔らかそうな金髪が動きに合わせ揺れている。
 いいな……綺麗な金髪もグレーの瞳も私とは大違い。
 
 「あ、ごめんね……起こしちゃった?」
 「……ううん、眠り浅い……から」 

 いつもよりたくさん寝てた……

 「そっか……とりあえず朝ごはん食べてから話そうね」
 「でも……」

 ブランに促されるように席に着いたら目の前にスープとパン、オレンジが置かれた。
 ……こんなにたくさん食べてもいいのかな? 教会での1日分以上だけど……教会ではカビの生えたパン1個とか腐りかけの野菜とかだった。多分、商品にできないなら痩せようが汚かろうが、どうでもよかったんだと思う。

 「それで……呪いのことなんだけど……」

 あ、やっぱり追い出されるんだ……これはせめてもの慈悲でくれた最後のご飯なんだ。

 「……すぐ出てくから」
 「いや、そうじゃなくて……リディアは呪いについてどのくらい知ってるのかな?」
 「……教会ではどうにもならない呪いってこととアレが出ると周りの人の具合が悪くなること」
 「そっか……あのね、その呪いは忘我の呪いっていうみたいで、昨日リディアが寝てる時に魔法をかけてみたのね……そしたら数値がちょっと減ったみたいなの」
 「……減った?」

 呪いって減るものなの……

 「ああ、ごめん。私ステータスも確認できるんだよね」

 よくわからない……

 「……ん」
 「でも1日に1度しか効果がないみたいで、ちょっと確認させてほしいんだけど」
 「……ん、わかった」

 エナが魔法を使うと体が白い光に包まれた……すごい。
 
 「うん、やっぱり効果があるね」
 「ほんと?……わたしふつうに暮らせるようになるの?」
 「うん……時間はかかるけどいつかは……だからしばらくここで暮らしたらいいよ……でもね、もしここで暮らすならこれを付けてもらわないといけないの」

 なんだろう……綺麗な指輪。

 「ブランと意思疎通ができるようになる指輪なんだけど、つけることによって主従関係とみなされるの……これがあれば街でブランといても平気なんだって」
 「ブランと……」

 ブランの様子を見て……今まで支えてくれたブランの言っていることが少しでもわかるなら……それに指輪をつけるだけでここに置いてもらえるなら……

 「……ん、わかった。よろしくお願いします」

 ブランは首にはめたけどお揃いの指輪をつけたら、すぐにブランの言ってることがわかるようになった……すごい。ブラン男の子だったんだね……

 「うん、よろしく。リディア」
 「……リディでいい」

 エナにはわからないだろうけど、ブランもリディって呼んでるから、エナにもそうしてほしいな……

 「わかった。リディとブランはさっきの部屋を使ってね?」
 「……いいの?」
 「もちろん!」

 ブランが遠慮するなって言ってる。こういう時はお礼を言えばいいらしい。
 えっと……

 「ありがとう」
 「いーえ……そういえばリディは何歳なのかな?」

 お母さんの日記だと……

 「……ん、多分12歳」
 「え……そう、わかった。これからたくさんご飯食べるんだよ」
 「……? うん……」

 今日もう1日分以上食べたのに……
 
 「うん、落ち着いてくれたなら……まず、お風呂入ろうか……ブランもね?」
 「お風呂?」
 「そう、お風呂っていうのはあったかいお湯に入って汗や汚れを落とすことのできる小さな部屋かな」
 「……すごい」

 お風呂……すごい。あったかくて気持ちいい……エナがゴシゴシしてくれるのも何回かするうち泡が立って気持ちよかった。
 エナは「今度からはすぐ泡が立つよ」って言ってたけどなんでだろう?
 ブランも気持ちいいって……頑なに首輪を外すことを嫌がってエナが洗うの大変そうだったけど……

 あと、お風呂で用を足そうとしたら慌てて連れてかれたトイレ? あれもすごい……今度からは間違えない……多分。
 
 「おおー、見違えたね……服は、どうしようか……ごめん、今これしかないから動きにくいかもしれないけど」
 「……いい、ありがと」

 こんな綺麗な服、久しぶり……もらった袋には唯一の私物の日記をいれる。

 「えーと、一応この家の場所から……魔の森の奥深くにあります。台所はほぼポーション作りにしか使ってないからリディが使いたいときに使ってね……あ、でも火には要注意だよ?」

 ブランは俺に任せろって言ってる。

 「……ん」
 「お風呂やトイレの使い方は教えたし……アルさんのおかげで部屋にランプもあるし……あと家と畑の周囲に結界があって魔物とかは入れないようになってます」
 「……ん……ブランは?」

 ブランも多分魔物だけど……

 「あー、害意のあるもの限定だからブランは除外かな? リディはこの森を生き抜いてきたから大丈夫だと思うけど、結界の外は危険な魔物もいるから気をつけてほしい……何かあったら結界の中に急いで戻ること。多少の攻撃には耐えられるからね」
 「……ん」

 エナの言うことは守らなくちゃ。なるべく結界の外に出ないようにしよう……

 「リディには畑の水やりをお願いしたいの……井戸はないから台所から持っていくか魔法で出すことになるけど平気?」
 「……ん、がんばる」

 だってこんなに優しい人の役に立てるんだもん。畑のお世話と水やりがんばる。ブランも手伝ってくれるって。

 「あと、数日に1回……街に買い出しやポーションを売りに行ってるの……その時に服も買ってこようと思うけど……いつか一緒に行こうね」

 街……あの街に行くのかな……嫌だな。

 「……でも、この髪と瞳だとみんなに嫌われちゃう。それにアレも出ちゃうから……」
 
 あ、また出ちゃう……

 「うん、今すぐじゃないから……焦らずゆっくりでいいからね」
 「……ん……」

 亡くなった神父さん以外で私のことを蔑むような眼をしなかった初めての人。
 ブランと私を受け入れてくれた優しい人。

 この出会いが私の運命を大きく変えることになるなんて想像もしていなかった。

 こうして新たな生活が始まった。
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