33 / 120
第3章
33.女神見習い、小屋へ……
しおりを挟む次第に小屋にも愛着が湧いてきて、掃除したり修繕したら、だいぶ家らしくなってきた。
かなり快適になってきたので(最初のボロボロの小屋に比べると)休憩だけでなく初めて寝泊まりしてみようと思う。
理由としては、ようやく女神の聖域のレベルが上がり、消費魔力がわずかに減ったことでひと晩の間結界が持つようになったので、サブマスさんに渡された紙(以降 サブマスリスト)にあった花の雫を採取したいから。
「本当、あの雑貨店のおかみさんには感謝しかない。だって、この指輪無しじゃ多分まだ無理だもんね……」
あと街より森の中にあるせいか……魔の森が特別なのかはわからないけど、この小屋の方が涼しいんだよね……まぁ、ランヴィの街もリタール王国の中では涼しい方らしいけど……
今回はお試しを兼ねているので宿はそのままに、もしかしたら泊まりかもしれないので、心配しないでほしい旨を伝えてある。
瞬間移動で小屋まで移動し、《清浄》で全体を綺麗にしてから《そよ風》で小屋の中の空気を入れ替えて、そのあと女神の聖域で結界を張る。
「これで明日の朝までは持つはず……多分」
うん、すごいキラキラしてるけど……気にしない。人気もない場所だし。
魔力の節約のためにはキラキラは受け入れよう……キラキラ光る不審者よりマシだよ、うん。
少し、魔力が心細くなったのでジッと座って回復に努める。
「ご飯は買ったものがあるし、水や光は魔法で出せるでしょ……いざとなれば雑貨店で買ったランプもあるし。あとは、ベッドか……」
ボーっとすること30分くらいかな? 少し魔力が回復したので修繕スキルで家具を直してみようーー
「うん、微妙……」
足の朽ちたテーブルは全体が斜めで、物を置けば転がる。
座面の壊れた椅子は布をひけばなんとか座れるかな?
さすがにベットは修繕じゃ直らなかったし……仕方ない。
「まずは泊まるためにベッド代わりのものを作るところからかな……」
《石生成》で幅1.8メートル、奥行1メートルほどの大きな石をイメージし、部屋の隅に作っていく。
「よし、 これでテーブル兼ベッドができた……今日は野営セットの毛布にでも包まればいいや」
テーブルがわりに使えるように高さも少し出したので、魔力をだいぶ込める必要はあったけど……
修繕で直した椅子は座面に布さえひけば……若干ガタガタするけど、ポーションを作るときに使えるかな、多分。
その後は周囲をウロウロしつつ地図を埋めたり、薬草採取しつつ、明日の朝に採取したい花の位置を確認する。サブマスリストの説明も確認して蕾の花を心眼する。
-----
【アジュラムの花:蕾】
朝方にしか咲かない花で、蜜はポーションの材料になる。
-----
「うん、これで間違いないな……明日の朝に寝坊しなければ問題ない」
小屋へ戻り、しばらくの間ポーションをちまちま作って、温かいご飯を食べたら簡易シャワーで汗を流し、結界をチェックしてから毛布にくるまり早めに眠りについた。
翌朝ーー
「あー、よかったー……寝坊しなくて」
目的の花がある位置まですこし距離があるので、急いで準備して小屋の結界を張り直してから出発……
「確か……この辺に……あ、あった!」
-----
【アジュラムの花:開花】
朝方にしか咲かない花で、蜜はポーションの材料になる。
-----
サブマスリストによればかなりのお値段で売れるらしい。
「あ、蜜どうやって採取しよう……ポーションの瓶に詰めればいいかな?」
試行錯誤しながら散策し蜜を集めること約1時間……ポーション2瓶分の蜜を手に入れた。
もちろん、ひと瓶は自分用だ。
どうやら地図は埋まった部分のみ、地点を登録できるみたいなので……いくつか薬草や花の群生地を登録しておいた。
地点を登録することでイメージが確実になり、かなり正確に瞬間移動できるようになった。
そうだ、ヒュージアントの解体もしてみよう。
なんか使える素材があるかもしれないし……ヒュージアントをストレージから出して……って結構でっかいなぁ。
これ、女神の聖域なかったらかなりピンチだったかもしれない……
「えーっと、『解体』素材指定は使える部分全部!」
こんな大雑把でいけるのかな……でも細かい指定は今のレベルじゃできないみたいだし……
ヒュージアントの体が光に包まれ……なんか盾になりそうな硬い胴体部分とギザギザした大きな牙、触覚、羽、足(複数)、ヒュージアントの魔核が地面に残った。あとは光の粒子となって消えていった。
「うーん……使える部分って指定したから間違いはないんだろうけど使い道が全くわかんないな……」
これを簡単にできますよ。という解体スキルすごいね……これからも魔物はできる限り避けるつもりだけど何かあった時は重宝しそうだね。
とりあえず、解体したヒュージアントの素材もストレージに放置でいいかな……
ロクに家具もなければ大して広くもない小屋だけどそれでもひとりになれる空間があるのはいい。好き勝手にしても文句言われないし。
「なかなか悪くないんだよね……」
時々採取+その度に小屋を補修=自分のものじゃないのに何だかこのまま放置するのもなぁ……いっそこのまま住んじゃおうかな? って感じ。
まあ、プライベートな空間が欲しかっただけに多少の立地の悪さには目をつぶるとして……ミーナちゃんや宿の食事が離れがたいけれど、食事に行けば多少は……
なんだかんだ言いつつも、気持ちは固まっていた。
自己責任なら森に入ってもいいみたいだし。わくわく。
「お家ゲットだー!わーい」
といってもまだまだ本格的に住むには修繕や買い出しが必要だし、元手はタダとはいえ生活に必要なものを揃えるとなるとそれなりにお金はかかるから……宿を引き払うことで浮くお金をあてようかな
場所が場所だけに手伝いは期待できないから自分でコツコツやるしかないんだけど……アルさんとかメルさん、手伝ってくれないかなー。
アルさんやメルさんなら一発なんだろうけどそんなこと頼めないしなぁ……ていうか、いまの時期は天界だよね。
「また、地道に頑張るか……」
0
お気に入りに追加
308
あなたにおすすめの小説
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様

側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。
神様がチートをくれたんだが、いやこれは流石にチートすぎんだろ...
自称猫好き
ファンタジー
幼い頃に両親を無くし、ショックで引きこもっていた俺、井上亮太は高校生になり覚悟をきめやり直そう!!そう思った矢先足元に魔法陣が「えっ、、、なにこれ」
意識がなくなり目覚めたら神様が土下座していた「すまんのぉー、少々不具合が起きてのぉ、其方を召喚させてしもたわい」
「大丈夫ですから頭を上げて下さい」 「じゃがのぅ、其方大事な両親も本当は私のせいで死んでしもうてのぉー、本当にすまない事をした。ゆるしてはくれぬだろうがぁ」「そんなのすぎた事です。それに今更どうにもなりませんし、頭を上げて下さい」
「なんて良い子なんじゃ。其方の両親の件も合わせて何か欲しいものとかは、あるかい?」欲しいものとかねぇ~。「いえ大丈夫ですよ。これを期に今からやり直そうと思います。頑張ります!」そして召喚されたらチートのなかのチートな能力が「いや、これはおかしいだろぉよ...」
初めて書きます!作者です。自分は、語学が苦手でところどころ変になってたりするかもしれないですけどそのときは教えてくれたら嬉しいです!アドバイスもどんどん下さい。気分しだいの更新ですが優しく見守ってください。これから頑張ります!

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました
言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。
貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。
「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」
それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。
だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。
それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。
それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。
気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。
「これは……一体どういうことだ?」
「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」
いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。
――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる